圧倒的な演技力で、私たちに驚きと感動を届けてくれる役者たち。彼らは毎回さまざまな役を演じていますが、とりわけ技量が試されるのが“一人多役”です。血の繋がった親子役や兄弟役を演じるために1人が2役を演じている作品は多く見られますが、中にはそれ以上の数の役を演じているものもあるのです。

そこで今回は、1人の俳優が3役以上を演じている作品をピックアップしてご紹介。複雑な役どころを演じ分けるためのテクニックにも注目しました。

家族ほとんどエディ・マーフィー!『ナッティ・プロフェッサー2』(2000年)

一人多役の映画と言えば、まず挙げられるのが『ナッティ・プロフェッサー』シリーズ。1作目の『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』(1996年)でクランプ一家をはじめとする7役を演じたエディ・マーフィーは、続編となる『ナッティ・プロフェッサー2 クランプ家の面々』(2000年)で、それを上回る9役に挑みました。

エディは主役のシャーマン教授のほか、その家族、教授を悩ませる別人格など個性の強い老若男女を演じ、一作を通してほぼ出ずっぱりの状態です。
またエディは、姿勢や声の高さなどを変えることで登場人物を演じ分けながらも、ふとした笑顔に彼の面影を残すことで、別人でありながらどこか似ている“家族”を成立させています。

本作の撮影時、メイクは1日3〜5時間ほどかかっていたそう。1人で複数の役をこなすには、演技力はもちろん、通常の何倍もかかる準備にも辛抱強く耐えるプロ意識が必要となるようです。

特殊メイクなし!天才的な演技力で5役を担う『愛が微笑む時』(1994年)

特殊メイクや衣装に頼らず、役者の演技だけで1人5役を担っている作品もあります。
『愛が微笑む時』(1994年)は、今年公開された『スパイダーマン:ホームカミング』にも出演しているロバート・ダウニー・Jr.が主演。当時20代後半だったロバートは、4人の霊たちに自らの身体を貸すことで、彼らの成仏の手助けをする青年・トーマスを演じています。

霊はトーマスに乗り移って行動するため、外見はずっと同じスーツ姿の青年のまま。4人の霊は、気の弱い紳士や泥棒男、若い女性、子を持つ母と、性別や年齢、性格もバラバラですが、ロバートはこれらを微細な表情や仕草で演じ分けました。
特に女性を演じる際は、瞬きを小刻みにし、指の動きをしなやかにすることで色気を醸し出したり、胸を張って肩から歩くことで凛とした淑女らしさを出したりと、本当の女性と見紛うほどの演技を見せています。

また、トーマスから霊の人格に切り替わる瞬間もポイントです。人前で歌うことを夢見る紳士の霊が乗り移る際には、瞬時に発声が変わり、最後には圧巻の歌声で国歌を歌いきりました。本作は彼の天才的な演技力があったからこそ、成立したと言っても過言ではないでしょう。

トム・ハンクスは6役!『クラウド アトラス』(2013年)

人間の魂が6つの時代でそれぞれの人生を生きる姿を描く、壮大なSF映画『クラウド アトラス』(2013年)。主演のトム・ハンクスは、強欲な医者や安ホテルの支配人、原子力発電所の研究者、暴力的な作家など6人の男を演じています。

各役に3日ほどかけてメイクテストや衣装合わせをしたとあって、スキンヘッドで口髭を生やしていたり、金髪の七三分けになっていたりと、6役すべて容姿がバラバラ。外見の完成度の高さに加え、金の亡者の時は穏やかな口調に反して目が笑っていなかったり、短期で暴力的な男の時は常に口元がへの字だったり、一方で後悔に苛まれる男の時には揺れる瞳に不安を宿したりと、トムはそれぞれの気性に合わせて繊細に演じ分けました。本人は「キャリアを劇団でスタートさせているから、常に違う役を演じるのは得意」とベテランの余裕を見せています。

また本作は、ハル・ベリーとぺ・ドゥナが白人女性を演じたり、ヒューゴ・ウィーヴィングが女性を演じたりと、トム以外の出演者も人種や性別を超えた多役に挑戦しています。あまりの変貌ぶりに、クレジットを確認するまで誰かわからないという配役も少なくありません。

まさかの123人で1役!『ビューティー・インサイド』(2016年)

ここまで1人の役者が複数の役を演じる作品を紹介してきましたが、中には逆の試みをしている斬新な作品もあります。韓国映画の『ビューティー・インサイド』(2016年)は、目覚める度に姿が変わってしまう29歳のキム・ウジンという青年が主人公。作中では、特異体質なウジンの役を合計123人の俳優たちが演じています。

数十人の韓国人青年をはじめ、老人や幼い子ども、女性、さらには西洋人までいます。国境や性別まで超えて変わってしまうウジン役として、日本からは上野樹里が参加。恋人が彼を受け入れることになる大切な日の“ウジン”を担い、優しい眼差しで彼女を見つめ心を通わせました。

突飛な設定のように思えますが、ウジンの孤独や彼女に対する想いだけは一貫しているため、まったく異なる外見になってしまっても、表情や仕草を見ているうちに同じ人物に見えてくるという不思議な魅力を放っています。

1人で7姉妹全員を演じる『セブン・シスターズ』(2017年)

(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016

厳格な一人っ子政策が敷かれた近未来を舞台にした『セブン・シスターズ』。2人目以降の子どもは親から引き離され冷凍保存されてしまう超管理社会において、共通の人格を演じることで生き延びてきた7姉妹が、命の危機に立ち向かう姿を描いたSFスリラーです。

(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016

主演を務めるのは、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009年)や『プロメテウス』(2012年)で知られるノオミ・ラパス。真面目な優等生や自由奔放なヒッピー、パーティーガール、天才エンジニアなど、本来はバラバラな姉妹たちの個性と葛藤を、メイクや衣装、仕草を使い分けることで演じきりました。

(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016

また、姉妹の中でもっとも戦いが好きな武闘派・ウェンズデーを演じる際には、派手なアクションも披露。演技力に加え、持ち前の身体能力の高さも見せることで人格に幅を持たせています。

ノオミ・ラパスの女優力の高さがうかがえる本作。先駆けて公開されたフランスではすでに大ヒットを記録しているとあって期待は高まる一方です。ぜひ劇場でご覧ください。
『セブン・シスターズ』は、10月21日(土)より新宿シネマカリテほか、全国順次公開です。

(鈴木春菜@YOSCA)