『ナラタージュ』10月7日(土)全国ロードショー
(C)2017「ナラタージュ」製作委員会

坂口健太郎がこわい…注目のイケメン俳優が狂気で魅せる―映画『ナラタージュ』

コラム

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文=新田理恵/Avanti Press

映画『ナラタージュ』(10月7日公開)の坂口健太郎がこわい。もちろん、坂口がこの映画で演じている嫉妬心に絡めとられた男の役が、である。「注目の若手俳優」とまとめられる顔ぶれの中でも、ポテンシャルの高さでは傑出しているのではないかと密かに感じてはいたが、この作品で確信した。坂口健太郎は化ける。しかも、イケメンなのに、そこはかとなく気持ち悪い男に化けると、恐ろしくはまる。

二枚目がひと癖ある役を演じるケースは、決して珍しくない。記憶に新しいところでは、ドラマ「あなたのことはそれほど」(TBS)で不倫する妻に異常な執着をみせる夫を怪演した東出昌大や、さらにエキセントリックなところへいくと、映画で猟奇殺人犯を演じた『ミュージアム』の妻夫木聡や『劇場版 MOZU』の松坂桃李などの例がある。俳優にとってひと癖ある役どころはイメージを多面的にしたり、演技の幅を広げられるチャンス。演技力の評価にもつながる。

まとう空気で幅広い役柄を演じ分け

『ナラタージュ』10月7日(土)全国ロードショー
(C)2017「ナラタージュ」製作委員会

坂口は、いわゆる「若手イケメン俳優」枠のなかでも、「塩顔男子」ともてはやされるだけあって、アクが強いほうではない。それゆえ、作品によってまったく別人に見えることがある。

そんな彼の稀有な点は、外見を大きくいじらずに、まとう空気を変えられることだ。その特性を存分に発揮していたのは、ドラマ出演が続いた2016年前半。青春群像劇「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ)のちょっとつかみどころがない若者からの「とと姉ちゃん」(NHK)の植物オタクの帝大生、さらに同時期に放送されていた「重版出来!」(TBS)の弱腰営業マンと変幻自在で、「あれ、よく見たら同じ俳優さん?」と驚いた視聴者も多かった様子。さすがにオタクの帝大生役はメガネと学生服が効いていたが、逆に言うと“それだけ”であのキャラの立ったキモカワ系の青年になりきれたのはすごい。さらに、同年9月に放送されたドラマ「模倣犯」(テレビ東京)では、まるっとそのままな坂口健太郎の姿で、常軌を逸した愉快犯・ピース役をナチュラルに(って、それがこわいのだが)演じてみせた。

「気持ち悪さ」をリアルにかもし出せる稀有な存在感

『ナラタージュ』10月7日(土)全国ロードショー
(C)2017「ナラタージュ」製作委員会

『ナラタージュ』もしかり。有村架純演じるヒロイン・泉と高校時代の教師・葉山(松本潤)の禁断の恋を描く本作で、坂口は泉と付き合う大学生の小野を演じている。最初はごく普通の好青年として登場するが、泉の心の中に居座り続ける葉山への嫉妬心に苛まれ、次第に別の顔を見せていく。

携帯の履歴を見せろと要求するのは序の口で、相手の気持ちを無視した言葉や態度でジリジリ泉を締め上げていく。あからさまに暴力を振るったりはしないが、焦燥に駆られた目でじっとり泉を見据える姿がこわい。「あれ、もしかしてこの人ちょっとヤバいんじゃないの……?」という“普通”と“狂気”のグラデーションを、曖昧に、でもリアルに演じていく。

人懐こそうな笑顔の後ろで、実は周りを俯瞰で見てる?

映画『君と100回目の恋』Blu-ray & DVD 好評発売中 Sony Music Records
(C)2017「君と100回目の恋」製作委員会

ドラマや映画の番宣などに登場する素顔の坂口健太郎は、エクボがくっきり表れるビッグスマイルが印象的な、いかにもまわりに可愛がられそうな愛嬌のあるタイプだ。学校一のモテ男を演じた映画『ヒロイン失格』や初主演映画『君と100回目の恋』は、そんな人懐こそうな“陽”のイメージを最大限活かした作品だったが、メディアの取材ではときどき、自分は「人との間に壁をつくるタイプ」だと語っている。実は一歩引いた視点で自分や役の置かれた状況を、冷静に推しはかる能力に長けているのかもしれない。人気俳優をつかまえて「気持ち悪い」を連呼して恐縮だが、気持ち悪い役がリアルなのも、ほどよく、やり過ぎないからだ。

初舞台の「かもめ」や、笑福亭鶴瓶がゲストとぶっつけ本番で演じる即興舞台「スジナシ」で見せた柔軟な芝居からも、物語を捉える力、物語を生きられる力が垣間見えた。読書家、映画好きとしても知られる坂口の素養も関係しているのだろう。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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