『八日目の蝉』『紙の月』などで知られる直木賞作家・角田光代のベストセラー小説を映画化した『月と雷』が、10月7日より公開される。本作は、普通の人間関係を築けない大人たちの人間模様を繊細に描く人間ドラマ。子どもの頃に母親が家出し、普通の家庭を知らずに育ったヒロイン・泰子を初音映莉子、亡き父の愛人である直子の息子・智(さとる)を高良健吾が熱演している。映画『横道世之介』(2013年)で、第56回ブルーリボン賞主演男優賞を獲得し、日本を代表する若手演技派俳優の地位を確立した高良健吾が、本作への思いを語ってくれた。

役作りとしてまず行ったのは、智を好きになること

Q:脚本を初めて読んだときの印象を教えてください。

智の視線を意識して読みました。読んでいくうちに、智の言動を不思議に感じることも多かったのですが、素直で可愛い奴という印象を抱きました。傷ついた人たち、何か消化しきれないものを抱えた人たちの物語というところにも共感出来ました。

Q:高良さんはご自身と役の共通点を見つけながら、役作りをするタイプですか?

役との共通点を見つけることは、最初に行うことではありません。共感出来ないから演技が出来ないということは絶対ないです。ただ、その役について理解したい、その役のことを自分が一番知っていたい、好きでいたいと思っています。

Q:今回、役作りとして行ったことは?

智を好きになることです。僕が一番智を好きで、一番の味方でありたいと思いました。

Q:智を演じる上で難しかったところは?

人との距離感ですね。特に、泰子や母親に対しての距離の縮め方、距離の置き方を常に意識しました。その感覚は自分で見つけ、スクリーンを通して観客に伝えていかねばならない。難しかったですね。

Q:本作は普通の人間関係を築けない大人たちを描いています。高良さんご自身も人間関係に不器用なところはありますか?

そういったところは誰でもあると思います。人見知りという言葉では説明出来ない何かが。出会った日や状況でも異なりますし。得意、不得意の二択しかないとすれば、僕は得意ではないですね。

共演者と演技を競う感覚はない

Q:本作は、高良さんをはじめ、体当たりの熱演を披露した初音さん、汚しメイクまで施して荒んだ雰囲気を出した草刈民代さんなど、演技派俳優たちの競演も見どころとなっています。俳優として共演者の演技に刺激を受けたことは?

僕は芝居で勝負するという気持ちがなくて。自分がするべきことを精一杯行った結果、そう見えるのかもしれませんが、僕に演技を競う感覚はないんです。俳優として、共演者から刺激は受けます。お芝居を観るのは好きですし、僕らはスクリーン以外の部分も観ることが出来る。とても贅沢なことだと思っています。本作では、初音さんが泰子を演じる上での覚悟、草刈さんの体の使い方や表現の仕方に刺激を受けました。

Q:具体的には草刈さんのどのようなところに刺激を受けましたか?

僕たちは心だけでは芝居出来ません。体はとても大事です。草刈さんは長年、バレエを通して体と会話してきた方ということもあって、体を使った演技が上手だなと思いました。

Q:最後に、本作を楽しみにしているファンの方々へ、この映画の魅力を教えてください。

僕が映画を観るとき、共感出来る、出来ないというところは関係なく、登場人物の物語の進め方、物語の切り取り方、時間の進め方を観ています。僕は自分が同じ世界へ行ける、一緒に旅が出来る映画が好きなのですが、本作も安藤監督が素晴らしいかじ取りを行って、そういう映画に仕上がっています。そこが一番の魅力だと思います。普通の人間関係を築けない大人たちの中で、何かがほぐれていく瞬間がある。僕はそこに感動しました。ぜひ観ていただきたいです。

映画『月と雷』
10月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
配給:スールキートス
公式サイト:http://tsukitokaminari.com/
(C) 2012 角田光代/中央公論新社 (C) 2017「月と雷」製作委員会

取材・文/田嶋真理 写真/横村 彰