文・写真=平辻哲也/Avanti Press

河瀨直美監督、塚本晋也監督、山下敦弘監督ら国際的評価の高い映画に数多く出演する俳優のマネージメント会社「ディケイド」が設立25周年を記念し、所属俳優“総出演”で製作した映画『AMY SAIDエイミー・セッド』が公開中だ。映画にこだわり続ける主演俳優の三浦誠己、佐伯真吾社長に、映画への思いや今後について聞いた。

映画『AMY SAIDエイミー・セッド』主演の三浦誠己
(C)2017「AMY SAID」製作委員会

自社の俳優総出演で「25周年記念映画」を製作

ディケイドは1991年設立。当時モデルとして活動していた村上淳らのマネージメントから始め、長男の村上虹郎、河瀨監督の『火垂』(2001年)の主演・中村優子、諏訪敦彦監督の『M/OTHER』(1999年)、河瀨監督『殯の森』(2007年)、中野量太監督の『チチを撮りに』(2013年)の渡辺真起子、大森立嗣監督の『さよなら渓谷』(2013年)の大西信満ら映画を中心に活躍する俳優と、シンガーソングライターの大橋トリオらが所属している。俳優事務所は数多くあるが、ほぼ自社の俳優だけで、映画らしい映画を作れる会社はほとんどないだろう。

映画『AMY SAIDエイミー・セッド』より村上淳(左)と飯田芳
(C)2017「AMY SAID」製作委員会

映画『AMY SAIDエイミー・セッド』より村上虹郎
(C)2017「AMY SAID」製作委員会

『AMY SAIDエイミー・セッド』は大学時代、映画研究会だった同級生8人が20年ぶりに、あるバーに集まる一夜の物語。映研のマドンナだったエミ(柿木アミナ)の謎の自殺をめぐって、それぞれが知らなかった過去が明らかになる…。安藤政信主演『かわいいひと』、田口トモロヲ主演『MASK DE 41』の映画監督作もあるCMディレクター、村本大志氏がメガホンをとった。

ムラジュンに刺激を受け、吉本芸人から俳優事務所へ

主演の三浦は吉本興業の養成所「吉本総合芸能学院」(通称NSC)13期生で、ブラックマヨネーズ、徳井義実(チュートリアル)、次長課長、野性爆弾らが同期。お笑いコンビ「トライアンフ」解散後に俳優転身を決意。村上淳の仕事ぶりに刺激を受け、05年にディケイド入りを希望した。三浦は「芸能人が活動のツールとして、『俳優』を選んでいるという人も多いですけども、ムラジュンさんはそうではない。本当に映画の中で生きて、没頭していらっしゃると思いました」と振り返る。以来、映画にこだわり仕事を続けてきた。

ディケイドによる映画製作は、設立20年の2012年に公開した村上淳、三浦共演の『Playback』に続き2作目だ。佐伯社長は「作れば、次に繋がるかなと思ったのが『Playback』。そんな中で気づいたこと、勉強になることがありました。25年という大義名分もあったので、もう一回やりたいと思ったんです。25年間、映画の現場に育てられたという気持ちもあるので、恩返しという意味もあります」と話す。

映画『AMY SAIDエイミー・セッド』
(C)2017「AMY SAID」製作委員会

同じ事務所だからこそ醸し出せる“同級生”感

昨今、大手映画会社が少女コミック原作の映画を数多く作る中、『エイミー〜』は映画愛にあふれた“大人の映画”だ。佐伯社長は「時代とは逆行しているとは思っています。一般の女性に受けるかなと言えば、受けないかな。虹郎主演の方が、今はわかりやすいかもしれないけど、そこは大手の人たちにお願いしたい。予算だって違いますし、同じ道は歩めない。ただ、熱量は高いですよ」と力を込める。

旧知の村本監督と相談する中、同級生という設定を提案。監督自身が日本大学映画学部出身ということもあり、脚本化にはさほど時間はかからなかった。7割ほど書き上がった段階で、三浦を主役に想定し、各キャストを当て書き。メインの8人の同級生役は、石橋けいと若手の数名以外はオール・ディケイド俳優というキャスティングになった。長年、同じ事務所に所属する俳優だけに、同級生という設定にも説得力があるのだ。三浦は「その辺は見えていたのかなぁ? 僕は僕なりの演じるプランを立てて、ほかの人はそれぞれのやり方で臨んでいた。僕は想像できなかったので、佐伯さんや監督が想像していたのなら、それはすごい、と」と驚く。

映画『AMY SAIDエイミー・セッド』より中村優子と渋川清彦
(C)2017「AMY SAID」製作委員会

撮影は1週間。うち5日間は、吉祥寺にあるジャズバー「サムタイム」で閉店後の深夜に行った。「超眠かったですよ。撮影の時間はないことは分かっていたので、本読みは5、6回やりましたね。こんなに本読みとリハーサルをした現場はないです。そこで芝居は出来上がっていたので、後は現場に入って、アクションをするだけ。控室では他愛のない会話をしていました。初日から、飛ばすと後半しんどいと分かっていたので、大人な感じで(笑)。若かったら、終わってから飲みに行くか、となるのでしょうけども……」

いつか“ディケイド3部作”を製作してDVDボックスに!?

同じ事務所の俳優陣との共演については、こう話す。「準備の段階から違いました。ほかの現場だと、3回目の本読みから、『断ってくれよ』と言いたいところなんですけれども、逃げられない(笑)。ナアナアな雰囲気になるのは、イヤだなと思ったんですけれども、違う事務所の石橋けいさんが入ってくれたおかげで、そうはならなかった。宣伝も目一杯やらせていただいているのも、すべてのイニシアチブが事務所にあるから」

主演・三浦誠己 撮影=平辻哲也

25年間、映画にこだわり続けた「ディケイド」。今後も映画製作を続けるのか? 佐伯社長は「ディケイド3部作にして、DVDにしてみたいという気持ちはあります。映画の一部分は担っているけども、企画から宣伝までやる機会はありません。ただ、みんながみんなこれにかかりきりだと稼げないですけども。自分たちが作る時は小さいものしかできないですが、『この企画は三浦くんでイケるな』と思った時に、出資に回ったりというような映画作りはしたい」。出演映画『関ヶ原』が公開中で、主演・菅田将暉の先輩芸人役で出演した映画『火花』(11月公開)も控える三浦も、「銀幕に愛される俳優でありたい。でも、これは貫き通せるのかな、やりきれるかなとも…。これは課題でもありますね」と話していた。