『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)で華々しい映画デビューを飾り、演技派女優として数々の役柄を演じてきた蒼井優。近年はその童顔フェイスからは想像がつかないような、やさぐれ&エロさ満載のアラサー女性を演じているんです。

最低最悪!共感度ゼロのイヤな女を熱演

(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

蒼井の妖艶な演技を堪能できるのが“イヤミスの旗手”として知られる沼田まほかるの同名小説を映画化した『彼女がその名を知らない鳥たち』(10月28日公開)です。本作で蒼井は、男と暮らしながらも過去の恋愛を引きずっている無気力な女・十和子に扮しています。

同居している15歳年上の陣治(阿部サダヲ)の少ない稼ぎを頼りに、働きもせずにダラシない毎日を繰り返す彼女。不潔で下品だけど一途な陣治を心底嫌悪し、居酒屋で水をぶちまけるなど、すべての人間の嫌なところを煮詰めたような最低最悪な性格の持ち主です。見ているこっちも思わず顔を背けたくなるほどの嫌な女を、蒼井は持ち前の演技力で違和感なく演じきっています。

不倫、指舐め、濃厚キス…2人のイケメン俳優との妖艶ラブシーン

(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

そんな十和子はある日、妻子持ちの男・水島(松坂桃李)と出会います。程なくして2人は不倫関係となり情事に溺れていくことに……。水島が十和子の口元に親指を運ぶと、十和子はどこか儚げな表情でその指をゆっくり、しっとりと舐めていきます。そしてその指を水島がおもむろに自分の口に。2人のこのやりとりは凡百のラブシーンがヌルく思えるほどの妖艶さを孕んでいます。

また本作には、十和子の忘れられない男として、竹野内豊演じる黒崎が登場します。8年前に別れた黒崎を回想する十和子。ベットの上で彼の肩に手をまわしながら、夢中になって本能的に唇を貪るその姿は蒼井のイメージを覆すような激しさがあります。十和子の妖艶な姿に虜になってしまうのではないでしょうか。

近年の蒼井優の活躍を振り返ってみると…

(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

どこか、やさぐれた色気を醸し出して、新境地を開拓しているように見える蒼井優。しかし、振り返ってみると、意外にも近年は陰と色気を両立させたキャラクターを多く演じているんです。

『岸辺の旅』(2015年)では、浅野忠信演じる主人公の不倫相手を演じて、短いシーンながら存在感を示すと、さらに翌年公開の『オーバー・フェンス』(2016年)では函館で暮らす性にダラシないキャバ嬢に。『アズミハルコは行方不明』(2016年)では、地方都市で暮らす夢も希望もない独身OLを演じ、その閉塞感溢れるやつれた演技で女優としてのレベルの高さを見せつけました。

岩井俊二監督の秘蔵っ子として清楚なイメージが強かった蒼井優。映画をはじめ、テレビドラマや舞台などでさまざまな役柄に扮する中で、その高い演技力で女優としての可能性を広げてきました。屈折したアラサー女子という新たな扉を開いた彼女。今後はもっと思いもよらない姿を見せてくれるのでしょうか。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)