無職でミュージシャンの恋人を支えるため、キャバクラで働く献身的な女性かと思えば、再会したかつての恋人との関係にのめり込んでいく別の一面も見せる……。臼田あさ美が演じる2人の男の間で揺れる主人公ツチダの恋愛模様を描くのが、11月11日(土)から全国公開される『南瓜とマヨネーズ』です。

臼田の過去の出演作を見てみると、ツチダに似たどこか“陰”のある女性を配役されていることが多いようです。なぜ、臼田には陰のある役が多いのか? これまでに臼田が演じた人物の魅力とともに、各ヒロインとツチダの共通点を振り返り、今作における臼田の演技を占いたいと思います。

自由奔放な小悪魔女子。でも実は…

『色即ぜねれいしょん』(2009年)で臼田は、童貞高校生の主人公が一目惚れしてしまう、憧れの年上の女子大生オリーブを演じています。

フェリーの上で2人が出会うシーンから、童貞目線でみたら非常に大人っぽく色気のある雰囲気を発するオリーブ。ビーチに出ればビキニ姿を見せつけ、思春期真っ只中な主人公・乾純とその仲間たちの妄想を爆発させるなど、若い彼らを翻弄します。オリーブは自由奔放な小悪魔女子ですが、実は心の奥では誰かにとって1番の女性になることを強く求めています。そんな、彼女の一面を見ることができるのが、乾純をラブホテルに誘うシーンです。

乾純は自由奔放で何物にも縛られないオリーブに一目ぼれし、彼女のための曲を作ると約束するほど、その想いを深めていました。しかし、実は少し前にオリーブは失恋しており、その想いを引きずっていることを知った乾純は、自らが思い描いていたオリーブ像と、実際の彼女の間に齟齬があることに気づきます。そのため、乾純はオリーブに対して素っ気ない態度をとるようになるのです。

そんな、乾純の様子にオリーブもまた気付いていました。乾純をラブホテルに誘うとき、オリーブは好きな女性について尋ねます。そのとき、乾純の頭の中に浮かんでいたのは、初恋の女性の姿でした。それに気づいたオリーブは「私のことは好きでも1番ではないでしょう?」と図星をつき、彼のもとを去っていくのです。気持ちが離れていると知りながらも、乾純をラブホテルに誘おうとしたオリーブ。その行動は、すでに終わっているかもしれない恋にしがみつき、誰かの1番でいようとするツチダに通じる部分かもしれません。

ハードSMの相手役に!? 恋人のために身体を売られてしまう

『東京プレイボーイクラブ』(2012年)で臼田が演じたのが、バイトをクビになり、倦怠期を迎えながらも恋人との同棲を続けているエリ子です。

劇中では太宰治の『人間失格』を読むなど、文学に触れることで、少しでも自分を知的に見せようとするエリ子。彼女は、いい加減で別の女性を妊娠させるなど、とんでもないゲス男の彼氏とダラダラと関係を続けている日々に疑問を持っています。しかし、現状の閉塞感からなかなか抜け出せず、周りに流され生きているといった役どころです。やがて、エリ子は彼が起こしたトラブルのため、ハードなSM趣味をもつ男の相手役にされてしまいます。

うだつのあがらない恋人と同棲するという点は、ツチダとエリ子の共通項。ツチダは恋人を金銭的に支えるために、他の男性と身体の関係を伴う愛人契約を結びますが、そんな風に男のためにに自分の身をささげてしまう姿もどこか通じるものを感じます。 余談ですが『南瓜とマヨネーズ』と『東京プレイボーイクラブ』において、臼田が演じる女性がお金のために自らの身体を差し出すエピソードには、どちらも光石研が演じる男性が関わっています。

昔と今、二人の恋人の間で揺れる恋心

突然の事故で夫を失ったヒロイン・栞を臼田が演じたのが、『桜並木の満開の下に』(2013年)です。

小さな町工場で働く栞は、男性と結婚し、幸せな夫婦生活を送っていました。しかし、仕事上の事故により夫を失ってしまいます。事故の原因を作ったのが、亡き夫が目をかけていた後輩の男性・工。事故の後、工は加害者としての十字架を背負って生きていくことになります。

栞は事故について謝罪する工に対して、「消えて欲しい」と言い捨てたり、「あなたは夫の代わりにはなれない」とキツイ言葉で突き放したりします。しかし、経営が悪化していく工場を立て直すために必死に働く工の姿を見て、栞は少しずつ彼に対する心の溝を埋めていき、いつしか恋心を抱くようになるのです。

2人の関係が近づいていく過程で、栞は亡き夫と加害者である工の間で心を揺れ動かされます。一度は工を受け入れるものの、被害者の妻と加害者という関係に耐え切れず、別れを切り出す栞。そのうえで、過去の夫の言葉に背中を押され、工のもとに再び向かうのですが、そのシーンで臼田が見せる、栞の繊細な感情を表現する演技には胸を打たれるものがあります。

(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会/11月11日(土)全国ロードショー

『南瓜とマヨネーズ』は脆くこわれやすい日常が、あたりまえに続いていくことの大切さを説き、1990年代のユースカルチャーのバイブル的存在となった同名マンガが原作です。うだつの上がらないミュージシャンの恋人・せいいち役を太賀が、忘れられない昔の恋人・ハギオ役をオダギリジョーが演じます。

天真爛漫な小悪魔から複雑な感情を抱える未亡人まで、その心の裏側を巧みに演じてきた臼田あさ美。彼女が演じるツチダは、現在と過去の恋愛にどのような答えを見出すのでしょうか?

(文/Jun Fukunaga@H14)