『エイリアン』(1979年)のリドリー・スコット監督が、ハリソン・フォードを主演に迎えたSF映画史上に残る傑作『ブレードランナー』(1982年)。35年ぶりとなる新作『ブレードランナー2049』が10月27日に日本へ上陸します。

「新作を観る前に、前作をチェックしておこう!」というビギナーも多いはず! ところがSFコーナーに足を運ぶと『ブレードランナー オリジナル版』、『ディレクターズカット版』、『ファイナルカット版』……!? 「一体どのバージョンを観ればいいんだ!」という問題を解消すべく、解説したいと思います。

監督のこだわりゆえ!? 5つものバージョンが存在する『ブレードランナー』

『ブレードランナー』の舞台は、惑星移住が可能となった2019年の地球。謀反を起こした人造人間=レプリカントと、レプリカントを追う専任捜査官=ブレードランナーのデッカード(ハリソン・フォード)との戦いが描かれます。現在までに5つものバージョンが作られたこの作品、難解なストーリーに隠された真の意味を探ろうとするコアなファンが多く、公開から35年経った今でもカルト的な人気を誇っています。

バージョンとしては、1982年の時点で、劇場公開前の試写用にリドリー・スコット監督が作った『ワークプリント版』、アメリカ国内で公開された『オリジナル版』と、アメリカ国外用に編集された『インターナショナル劇場版』の3種類が存在しています。さらに10年後の1992年に『ディレクターズカット版』、2007年には5つ目のバージョンとなる『ファイナルカット版』が公開されました。

なぜ20年以上にも渡って5つものバージョンが作られたのか? それは1982年に劇場公開された作品が、監督の意図したものではなかったことが最大の要因と言われています。劇場公開前に映画会社が試写を行ったところ、参加者から「映画に出てくる用語が難しい」や「結末が暗すぎる」という意見が寄せられ、これらの意見から映画会社側が、編集に修正を加えた『オリジナル版』が劇場公開されたのです。

より一般向けに作品を改変されたリドリー・スコット監督。映画がカルト的な人気を高めていく中で、ファンからも「監督が編集したバージョンを観たい」という後押しの声が上がり、監督と映画会社は協議に入ります。最終的に映画の編集権が映画会社から監督へ譲渡され、1992年に『ディレクターズカット版』が、2007年にはさらに映像に修正を加えた『ファイナルカット版』が作られたのです。

バージョンによってエンディングが変わる?そのテイストの違いとは?

1982年に劇場公開された『オリジナル版』と『インターナショナル劇場版』には、難解なストーリーや用語を補足するように、随所に主人公・デッカードのモノローグが差し込まれています。またデッカードと美しい女性レプリカントのレイチェルが大自然を車で疾走し、逃避行へ旅立つというエンディングは、観るものにハッピーエンドを想起させました。

一方、1992年の『ディレクターズカット版』とそれをベースにした『ファイナルカット版』では、このラストシーンやデッカードのモノローグをズバッとカット。これにより先が分からないという不安が煽られ、ハッピーエンドから一転、どこか悲壮感漂う描き方へと様変わりしました。

デッカードはレプリカントなのか?

このラストシーンのテイストの変化以上に、重要な違いを生んだ改変があります。その改変により「デッカードはレプリカントなのか?」という作品の根底を揺るがすような解釈が生まれました。それは、『ディレクターズカット版』から挿入されたデッカードが見る“ユニコーンの夢”です。

この夢は、観るものにある一つの疑問を与え、そして“デッカード=レプリカント”という、今でも論争が巻き起こるほど重要な解釈を生みました。

リドリー・スコットが製作総指揮を務めた35年ぶりのシリーズ最新作『ブレードランナー2049』では、デッカードが「何を隠している?」と問われ、顔をうつ向かせるシーンや“知る覚悟はあるか”という意味深なキャッチコピーも。はたして“デッカード=レプリカント”説は明らかになるのか? 最新作をより楽しむために、ぜひとも前作をチェックしておくべきでしょう!

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)

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