文=中山治美/Avanti Press

テレビから動画配信の時代へ――。

AbemaTVで配信された「72時間ホンネテレビ」(11月2日~5日)を視聴しながら、その“時代の変わり目”を目撃したような感覚を味わった。単に、国民的アイドルの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人が、インターネットの世界に降臨したというだけではない。地上波のテレビ番組がデジタル放送となり、dボタンで視聴者も番組参加可能となったにも関わらず、どの番組も今一つその効力を生かしきれずにいた。そんな中、「72時間ホンネテレビ」は、コメント機能やTwitterなどのSNSを通じて、出演者と視聴者が一体となって番組を盛り上げていく楽しさを万人に知らしめたのだ。

SNSが改めて教えてくれた配信視聴の面白さ

出演者によるセルフィ「72時間ホンネテレビ」より(C)AbemaTV

筆者自身、同番組にハマったのは Twitterの投稿がきっかけだった。

草なぎがマクドナルドでアルバイト体験する企画の時、瞬時に「浜松では?」との投稿があった。そこから「今日、森くんが浜松でレースだよね?」の情報が入り、「まさか?」とじわじわ話題が広がっていたところに、本当に3人は浜松オートで試合中の森且行選手の元へ。彼らの21年ぶりの共演は大きな話題を呼んだが、その期待を高まらせたのは間違いなくSNSの力だった。

森且行選手と再会する3人!「72時間ホンネテレビ」より(C)AbemaTV

結果的に累計視聴者回数は7400万回を叩き出し、「#森くん」という言葉はTwitterの世界トレンドワード1位を記録した。生放送中にトレンドワードを生み出せるのか? が番組のテーマでもあったため、表面的にはトップアイドルが生配信しながら行動した場合、どれだけ世の中を動かせるか? の壮大な検証番組のようにも見えたのではないか。だが番組で彼らが改めて証明したのは、バラエティも出来るアイドルとして、その道を開拓してきた“実力”と“矜持”だろう。

やっぱり楽しい!潤沢な制作費で作られたバラエティ

アイドルの王道・運動会に、プロレス、本物の米大統領来日中に香取扮するカトルド・トランプを観光名所の浅草寺に放つという、一歩間違えれば国際問題にもなりかねない危険スレスレのコントまで、彼らは体を張り続けた。

浅草寺に現れたカトルド・トランプ!「72時間ホンネテレビ」より(C)AbemaTV

失礼ながら動画配信の番組といえば、ゆるい番組構成というイメージがあった。だがバラエティに富んだ内容と緩急練られた構成の「72時間ホンネテレビ」は、どの瞬間を取っても、本当に72時間、視聴者を飽きさせまいとするエンタテイメント業界の第一線を走り続けてきたプロの仕事があった。

地上波テレビの制作費が減少していると言われる今、贅沢な制作費の使い方に、テレビ業界関係者は羨望すら抱いたのではないだろうか。

その間に繰り広げられたトークでは、3人それぞれがSMAP解散時の心境や、年末に焼肉店に集まった事の真相を明かした。

芸能人が事件や不祥事を起こした際、囲み取材を受けたり、ワイドショーや雑誌に独占取材をさせて釈明をするのが慣例になりつつあるが、これをきっかけに、動画配信を活用するという新たな動きが生まれるかもしれない。

視聴者に伝わった人々への感謝

そう。何が胸を打ったかというと、この番組の根底にあるのが、一連の解散騒動の最中、ファンに暗い表情を見せて、自分たちの気持ちを明かすことができなかったことへの悔恨と、それでも支えてくれた人たちへの感謝だと感じられたことだ。ラストの72曲ぶっ通しライブはボロボロで、声も出ていなかったが、歌に込めた彼らのメッセージは間違いなく多くの人の胸に響いただろう。まさにそれは、彼らのファンクラブ「新しい地図」で発信した次の言葉通り。

72曲を歌いとおした3人 「72時間ホンネテレビ」より(C)AbemaTV

自由と平和を愛し、
武器は、アイデアと愛嬌。
バカにされたっていい。
心を込めて、打つ。

SNSという新たなツールを武器に持った彼らが、どのような活動をしていくのか。日本のエンタテインメント業界の革命児が、その道を切り開いていくことを期待したい。

*草なぎ剛のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀