実は素朴なものがお好み!? 天皇陛下の“お食事事情”とその料理番ってどんなもの?

コラム

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素材を活かした薄味で、旬の食材をまるごと味わう

秋山は、「天皇陛下はどんなお食事を召し上がっておられるのか」と周囲から尋ねられるたびに「語ってはならぬことだ」と守秘を通していたそうですが、「天皇は“金の箸”をお使いになられる」「一粒ずつ選りすぐった米を召し上がる」といった事実とは異なる噂が世間で囁かれるようになったため、真相を語ることを決意したといいます。

現代にも受け継がれている陛下および皇族方のお食事は、一般的に想像される贅を尽くした豪勢なものとは異なり、実に控え目。「地元で収穫された旬の食材を口にするのが身体によい」という考えを大切になさり、季節の趣を感じる献立や伝統食をゆっくりと味わいながら召し上がるそうです。秋山はかつて東北地方を訪ね歩き、その土地に古くから伝わる伝統料理を調査したことがありましたが、これは昭和天皇の「埋もれゆく郷土料理を記録するように」との意思を受けた旅でした。
また、「一物全体(食材を丸ごと使用する)」という理念に基づき、皮つきの野菜や葉つきの根菜をお口になさることも少なくないとか。素材本来の味を損なわないよう、味付けは基本的に薄味を推奨なさるそうです。

元料理番の証言から知る昭和天皇の素朴な食卓

谷部金次郎の著書『昭和天皇と鯛茶漬』によると、昭和天皇は麦飯、さんまの塩焼き、きゅうりの奈良漬けなど、決して贅沢ではない素朴な家庭料理を召し上がっていたそうです。ご朝食の献立は決まって、オートミールかコーンフレーク、温めた野菜、小さなおかずを1品という庶民的なものでした。戦時中の元旦には、戦地の兵士たちを思いやり、両陛下そろって粗末な戦地食を進んで召し上がったという話も聞かれました。

陛下のお好みは、芋、カボチャ、イワシ、アジ、しば漬けなど、街角のスーパーマーケットでも見かけるようなごくありふれた食品。麺類もお好きで月末日は決まって蕎麦を召し上がり、ときにはラーメンを召し上がることもあったとか。 

愛用のお箸は、柳箸と呼ばれる上質な割り箸のようなものでした。これを最低でも2、3度は再利用なさったといいます。“金の箸”どころか高級な塗り物の箸すらも用いず、割り箸を繰り返し使い込むという慎ましやかな点に、陛下のお心を垣間見ることができます。また、陛下が数回使用なさったお箸は、そのあと厨房で菜箸として再々利用されるというから驚きです。

(C)2017 映画「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」製作委員会
(C)2014 田中経一/幻冬舎

秋山徳蔵や谷部金次郎といった実在の料理番たちのスピリットは、映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』(2017年)に登場する主要キャラクターのひとりで、元・天皇陛下の料理番である山形直太朗の中にも見ることができます。山形はとにかくまっすぐで清らかな心をもった誠実な人物。周囲の圧力に屈することなく、陛下の命や仲間の運命を守り抜こうと奮闘します。

そして山形の“麒麟の舌”と“平和を希求する和の精神”が生み出すレシピもまた、本作の大きな注目どころのひとつ。料理は作り手の心を映す鏡であるといえますが、物語の中で山形が開発する献立、腕を振るう料理の一品一品に彼の忠義や愛が感じられて、目頭が熱くなります。

『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』は、2017年11月3日(金・祝)、全国ロードショー。

(桃源ももこ@YOSCA)

参考資料
秋山徳蔵『味 - 天皇の料理番が語る昭和 』(中公文庫、2015年)
谷部金次郎『昭和天皇と鰻茶漬 陛下一代の料理番』(河出書房新社、2015年)
谷部金次郎『昭和天皇の料理番-日本人の食の原点』(谷部金次郎。講談社、2004年)
渡辺誠『昭和天皇のお食事』(文藝春秋、2009年)

記事制作 : YOSCA

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