(C)2017 映画「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」製作委員会 (C)2014 田中経一/幻冬舎

二宮×綾野、西島×宮﨑…『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』は“芝居のマリアージュ”が堪能出来る!?

コラム

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『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』(大ヒット上映中)は、1930年代に満洲国で「大日本帝国食菜全席」なる前代未聞のレシピ作りに挑んだ山形直太朗と、21世紀初頭に彼の消息とそのレシピを追う佐々木充の物語だ。

70年もの時間を隔てた、天才料理人ふたりの魂の交歓を描く本作は、ふたつの時代を行ったり来たりしながら展開する。この破格の構成を成立させているのが、俳優陣の血の通った演技の数々。ここでは、作品の中核を担う二組のキャストについてふれてみよう。

二宮と綾野が見せる、美味しい一皿の料理のような演技

まず、主人公の佐々木充を演じるのは二宮和也だ。完璧主義者でプライドが高く、どこか他人の志を上から目線で見ているかのような「絶対味覚」の持ち主を、二宮はシャープな身のこなしの中にほんのちょっぴりの人間味を加えることで「見事な料理」として体現している。

充には他人を寄せつけないところがあり、孤独におそれを抱いていないようにも映るが、そんな彼にも親友と呼べるような存在がひとりだけいる。それは、かつて孤児院で一緒に育ち、数年前までレストランを経営していた充の片腕だった柳沢健(綾野剛)である。

充が多額の借金を抱え、店をたたまざるをえなくなった後も、柳沢は充を気にかけている。充も、柳沢と一緒にいるときだけは、普段は見せない「余白」が生まれている。おそらくリラックスとは無縁に生きている充が、基本的なキャラはキープしたまま、気を許している風情がたまらなくいい。

友だちに対して気を許しているというより、友だちと共にいる時間と場所に対して気を許している。それは、2人を包み込む空間、料理に置き換えるなら「一枚の皿」のようなものとも言えるだろう。

温かい料理は、きちんと温められた皿で供されることで、食べ手にさらに豊かな食体験を与えることになる。一途に、無垢に、終始変わらぬ笑みをたたえながら、充を見つめ、充に言葉を投げかける柳沢を、綾野は邪心なき真っ白さでかたちにしている。どっしりと、揺らぐことのない、白の皿。どんな料理がきても受けとめる度量がそこにある。

二宮と綾野のパートナーシップは、本作での芝居の上だけで醸成されたものではない。『GANTZ PERFECT ANSWER』(2011年)で共演して以来、プライベートで親交を温めてきた「現実の絆」があるからこそ、充と柳沢もあのようなかたちに着地したのであろう。精緻な芝居を積み重ねる二宮と、ニコニコしながらそこにいる綾野の幸福な出逢いが、美味しい一皿の料理をいただいたときのような満足感を、観る者に与えてくれる。

(C)2017 映画「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」製作委員会 (C)2014 田中経一/幻冬舎

西島と宮﨑の演技は、料理とワインのマリアージュのような深い余韻をもたらす

そして、山形直太朗に扮するのは西島秀俊だ。孤高の料理人であり、レシピ作りにのめり込むあまり、ときに周囲への思いやりにも欠けてしまう人物を、西島はクールにではなく、どこかチャーミングに表現している。どんなときも、料理に対する好奇心だけは失わず、それが自然と情熱にもつながっているような男。言ってみれば、火を止めずにずっとコトコトと煮込み料理を作っているようなものだ。だから、鍋のそばから離れられないし、心がどこか厨房の中にいる。家庭人としても、社会人としても、不完全。だが、何かが「欠けている」からこそ、ひとは魅力的なのだ。

そんな西島の芝居を、より一層鮮やかに引き立てているのが、宮﨑あおいだ。彼女は直太朗の妻・千鶴を演じているが、一歩下がって夫を見守るばかりでなく、直太朗が逸脱しかけたときは、正しく指摘して、気丈な態度で夫を導く。まさに理想的な妻だが、宮﨑の表現は「絵に描いた餅」ではなく、リアルで説得力がある。叱るのではなく、問いかける。責めるのではなく、振り返ってもらう。そんな、相手に対する敬意を忍ばせたまま、潔く向き合っていることが感じられるから、観客もまた直太朗と一緒に頷くことができるのだ。

西島と宮﨑はドラマや映画で共演を重ねている。夫婦役は初めてだというが、阿吽の呼吸が観客の肌にも心地よい。心和むその光景は、料理とワインとが結びつき、一期一会のマリアージュに辿り着いたような余韻を感じさせる。

俳優と俳優の共演は、映画という形式の「饗宴」でもある。他キャストの演技も含め、映画『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』で、この秋の「フルコース」を存分に味わっていただきたい。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

記事制作 : アドバンスワークス

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