11月4日公開予定の『おじいちゃん、死んじゃったって。』は、祖父の死をきっかけに一家に起きる出来事を描いたヒューマンドラマです。

人が亡くなった時、そこには悲喜こもごもの人間ドラマが生まれます。やがて来る、自分や身内の死に対して、どのような備えをすべきなのか? “お葬式”をテーマにした映画の中に、そのヒントを探ってみます。

お葬式あるある!ありがちなトラブルとは…『お葬式』(1984年)

古いしきたりや金銭感覚など、日本社会に広がる価値観に対する問題意識を、ユーモアをもって世間に問い続けた、故・伊丹十三監督。彼らしい作風で葬式の様子を描き、第8回日本アカデミー賞で作品賞を受賞するなど、伊丹の名前を一躍世間に知らしめた作品です。

本作はある家族が葬儀社の指導をあおぎつつ、お通夜からお葬式までの怒濤の3日間を迎えていく姿を描いた、どたばたヒューマンコメディです。ご近所さんの助けを借りながら、自宅で式を行うという、少し前のお葬式の姿が映し出されており、今でもお葬式映画の定番といわれています。

山崎努が演じる井上侘助と、宮本信子が演じる雨宮千鶴子は俳優の夫婦。CM撮影中に千鶴子の父が急死したことを知り、急いで病院に向かいます。やがて、父のお葬式をあげることになるのですが、2人は何をすればよいか全くわからないのです。これといった大きな事件は起きませんが、細かい描写の中で次から次へと現れるトラブルは、まさに“お葬式あるある”! 誰もが大真面目なのですが、その様子がかえって笑いを誘います。

棺桶や戒名の相場がわからなくて家族と揉めたり、香典の扱い方や喪主挨拶に悩んだり、葬式で騒ぐ子どもに手を焼いたり……。人が亡くなったあとには、遺族にさまざまなやるべきことが待っています。本作を見ておくと、いざ突然お葬式となったとき、トラブルにも少しだけ気持ちの余裕をもって対処できるかもしれません。

お葬式の裏側に携わる人たちの仕事を知る…『おくりびと』(2008年)

『おくりびと』はチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷に帰ってきた主人公・大悟が、遺体を棺に納める納棺師の仕事につくという物語です。初めは戸惑い、妻(広末涼子)にも仕事のことを話せなかった彼が、さまざまな境遇の“死”と向き合うなかで、徐々に仕事に誇りを見いだしていきます。

米国アカデミー賞外国語映画賞をはじめとする数々の賞を受賞し、、世界に納棺師という日本のお葬式独特の仕事の存在を知らしめたこの映画。主演の本木雅弘さんは納棺師の指導のもとで練習を重ね、技術を習得したそうです。エンドロールではその所作の全てが、通しで映し出され、あまりの美しさに圧倒されます。

お葬式は滅多にないことだけに、プロに任せてしまいがちです。しかし、時には気が動転した遺族から、納棺師の方などが理不尽なクレームを受けることもあるとか。この作品を見ると、故人を送る大切な行事だからこそ、その裏方を務める人々にも感謝し、落ち着いた気持ちでお葬式に臨みたいと思わされます。

お通夜は最期のエンタテインメント!?…『寝ずの番』(2007年)

俳優・津川雅彦がマキノ雅彦として、初メガホンをとった『寝ずの番』。中島らもの『寝ずの番』を原作に、お葬式ではなく、その前日のお通夜の様子が描いた作品です。

話は稀代の噺家・笑満亭橋鶴が亡くなる間際にしたとんでもない願いを、弟子が叶えようとするところから始まります。作中では師匠のお通夜だけでなく、間もなく亡くなった弟子のお通夜、さらにはおかみさんのお通夜が行われます。

ご遺体を棺桶から出して踊らせたり、死に際の恥ずかしい話を暴露されたりと、いずれも不謹慎ギリギリの、大人のユーモアがあふれるシーンが続き、笑って楽しめるエンタテインメント作品となっています。

人が死んだ時には、悲しいムードに支配されてしまいます。けれども懐かしい顔ぶれが集まり、故人を偲んで座をつくり、生前の面白いエピソードで大笑いすることも少なくありません。それを思うと自分が死んだ後のことも、少し安心できるかもしれませんね。

(C) 2017『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会/11月4日、 テアトル新宿[東京]、テアトル梅田[大阪]、Denkikan[熊本]ほか全国公開ロードショー/公式サイト:http://ojiichan-movie.com

『おじいちゃん、死んじゃったって。』では祖父の死をきっかけに、バラバラになっていた家族が久しぶりに集まります。それぞれが抱える事情が表面化し、家族ゆえのもどかしさと安心感の間で揺れる主人公。その中で “生”と“死”への思いが交錯します。初めて身近に起こった死をきっかけにさまざまな問題を抱えた一家の再生へと主人公が一歩を踏み出すという、愛おしい家族の物語です。

資生堂のCMなどを手掛けた森ガキ侑大監督が、初めての長編映画に挑んだ話題作。大河ドラマ「真田丸」で真田信繁の側室たか役を演じ、話題となった岸井ゆきのの初主演映画です。今はまだ実感がなくても、いずれは訪れるお葬式。映画を見ながら、たまには終活について考えてみてはいかがでしょうか。

(文/サワユカ@H14)