今年開催されたフランス映画祭で団長として来日し、北野武監督との豪華なツーショットが話題になった、大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。過去に出演した数々の名作の中から、12月9日に公開が控える最新作『ルージュの手紙』に合わせ、ちょっぴり意外とも思えるコメディエンヌとしてのセンスを堪能できる作品をピックアップしてご紹介します!

あのドヌーヴがまさかの赤ジャージ姿を披露!『しあわせの雨傘』

まず1本目は、フランソワ・オゾン監督作品『しあわせの雨傘』(2010年)です。言わずと知れた、ドヌ―ヴの代表作『シェルブールの雨傘』(1964年)の清楚で可憐な姿は、未だにファッション誌でも特集されるほど。そんなイメージを覆すかのように、貫禄たっぷりのドヌ―ヴがダサい赤ジャージ姿で森の中をランニングする!という衝撃シーンで往年のファンの度肝を抜いたのが、この『しあわせの雨傘』なんです。ポエム作りとジョギングを日課とする雨傘工場のお飾り社長夫人が、夫の入院で社長代理に就任。お嬢様育ちの専業主婦が意外な才覚を発揮して、従業員たちの心もガッチリ掴み、ついには国会議員を目指すというハートフルなヒューマンドラマです。ドヌ―ヴがダンスや歌声を披露するなど、『シェルブールの雨傘』へのオマージュも満載。自分の魅力を知り尽くしている名女優ならではの遊び心が感じられる1本です。

あのドヌーヴがイケメンゴリラとベッドイン!? 『神様メール』

続く2本目は、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『神様メール』(2015年)です。パソコンを駆使して世界を翻弄する神(父親)に反発した娘が、全人類に余命をメールで送信し、地上に降りてきて騒動を巻き起こす物語です。ドヌ―ヴ演じる裕福で孤独な主婦マルティーヌが、ある日サーカスのゴリラと恋に落ち、夫の留守中に自宅でゴリラとベッドを共にするという、驚きの展開が繰り広げられます。ドヌ―ヴがまじめに演じれば演じるほど、切なさと可笑しみが同時にこみ上げてくる、なんとも不思議なこの作品。どんなにシュールな設定であっても、ベテラン女優のドヌ―ヴにかかれば、ラブストーリーとして見事に成立させられることを目の当たりにできる1本です。

(C) CURIOSA FILMS – VERSUS PRODUCTION – France 3 CINEMA

あのドヌ―ヴが咥えたばこでギャンブルに興じる『ルージュの手紙』

そして3本目は12月9日より公開となる、マルタン・プロヴォ監督の『ルージュの手紙』です。パリ郊外を舞台に、血のつながらない対照的な性格の母と娘が30年ぶりに再会。衝突を繰り返しながらも互いに影響を与え合い、失われた時間を取り戻していく様を描いた本作。ドヌ―ヴはお酒とギャンブルが大好きで、自由奔放に生きる母ベアトリスを演じています。大阪のオバちゃんさながら、ヒョウ柄のブラウスやスカーフを身に付け、昼間からカフェで酒をあおり、咥えたばこでカード賭博に興じるドヌ―ヴの迫力たるや、思わず「あっぱれ!」と声を上げたくなるほど。どれほどやさぐれようともエレガントさがにじみ出る、ドヌ―ヴの人間味溢れる一面が垣間見える1本です。

映画史に名を刻む大女優でありながら、コメディエンヌとしてのセンスも抜群なカトリーヌ・ドヌ―ヴ。74歳という大ベテランにして、役者としての新鮮さを失わないでいられるのは、常に新しいことに挑戦しつづけることを信条にしているドヌ―ヴならでは。ぜひこの機会に、その見事な芸の神髄に触れてみてください。

(文/渡部喜巴@アドバンスワークス)