昨年、大ヒットを記録した映画『君の名は。』(2016年)。作品の音楽を手がけたRADWIMPSの「前前前世」も話題となり、映画がヒットする一因となりました。このように有名アーティストが映画の楽曲を手掛けることは近年では珍しいことではありません。それだけにとどまらず、音楽を題材とした作品では、劇中に登場するバンドがアーティストの手掛けた楽曲で、実際にCDデビューをすることも。ここでは、スクリーンを飛び出した劇中バンドの代表例を挙げてみたいと思います。

正体不明の覆面バンド/「in NO hurry to shout;」…『覆面系ノイズ』(11月25日公開)

(C)2017映画「覆面系ノイズ」製作委員会

突然姿を消した幼なじみに想いを届けるために歌い続ける少女、彼女の歌声に惚れ込み曲を書き続ける青年、少女を拒絶してしまう幼なじみの青年。想いがすれ違う3人の若者の青春群像が描かれる『覆面系ノイズ』もそんな作品の1つ。劇中で中条あやみ演じる主人公・ニノがボーカルを務める覆面バンド「in NO hurry to shout;」(イノハリ)が11月15日にCDデビューを果たしました。

イノハリは、高校生である正体を隠すため、眼帯と包帯を利用した覆面姿で活動していますが、彼らが歌う映画主題歌「Close to me」の作詞作曲を手掛けたのは、彼らと同様に正体不明の覆面バンドとして人気ロックバンドのMAN WITH A MISSIONです。

同楽曲で、中条は伸びのある見事な美声で熱唱しています。ボイストレーニングに通ってトレーニングを積んだという彼女の歌声が響き渡るライブシーンは必見です。

野外フェスにも出演!超豪華メンバーが集結/「地獄図」…『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』(2016年)

修学旅行中の事故で亡くなった男子高校生・大助が現世へよみがえるために地獄で奮闘する姿をコミカルに描いた『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』。地獄に落ちた大助が出会うのが、ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」です。

このバンドは、長瀬智也演じる地獄農業高校軽音楽部顧問・赤鬼のキラーKがボーカル&ギターを務め、主人公・大助役の神木隆之介がギター、清野菜名扮する邪子がベース、桐谷健太が演じるCOZYがドラムという4人編成のグループ。

彼らは元THE MAD CAPSULE MARKETSのKYONOが提供したハードなロックナンバー「TOO YOUNG TO DIE!」を収録した映画のオリジナルサウンドトラックでCDデビューをしています。さらに「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)にも出演を果たしています。2016年に開催された野外フェス「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016」では、オープニングアクトとして4人でステージに登場し、熱い演奏で音楽好きたちを熱狂させました。

映画から2つのバンドがデビュー!/「CRUDE PLAY」「MUSH & Co.」…『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年)

音楽業界を舞台に、天才サウンドクリエイターの秋(佐藤健)と歌手としての才能を見出される女子高生・理子(大原櫻子)の恋愛模様を描いた映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』。この作品からは秋がかつて在籍していたバンド「CRUDE PLAY」と、ヒロインの理子が率いるバンド「MUSH & Co.」という2つのグループがCDデビューしました。

「CRUDE PLAY」は映画の中でバンドメンバーを演じた三浦翔平がボーカル&ギター、窪田正孝がベースを務め、劇中で披露される楽曲「サヨナラの準備は、もうできていた」をリリース。さらにオーディションで5000人の中からヒロイン役を勝ち取った大原は、バンド「MUSH & Co.」で歌手デビューを果たします。

映画の中から2つのバンドがデビューするという企画性や、2組の楽曲を、椎名林檎をはじめとして数々の人気アーティストをプロデュースしてきた亀田誠治が手掛けたことも話題になりました。

85万枚をセールスしたあのバンドは今なお現役!/YEN TOWN BAND…『スワロウテイル』(1996年)

架空の歴史をたどった日本の円都という都市を舞台に、違法労働者たちの姿を描いた映画『スワロウテイル』。劇中に登場するヒロイン・グリコがボーカルをつとめるバンドが「YEN TOWN BAND」です。既に人気歌手であったCharaがヒロインのグリコを演じ、映画の中でも個性的な歌声を披露しています。

映画の主題歌としてリリースされたシングル「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」はオリコン・チャートで1位を記録し、約85万枚を売り上げる大ヒットとなりました。映画の企画として96年に誕生した同バンドですが、2003年に結成7年目にして初めて観客の前でライブを行って以降、活動がありませんでした。ところが、2015年に12年ぶりの復活ライブを行い、同年、翌年と新曲をリリース。野外ライブフェスへの出演など、活動を継続しています。今も歌い継がれる楽曲を残した伝説のバンドが、現役として音を奏でているのです。

(C)2017映画「覆面系ノイズ」製作委員会

映画からデビューを飾ったバンドをご紹介しましたが、どのバンドも話題性だけでなく、有名アーティストが手掛けたという点でその楽曲のクオリティもお墨付き。せっかくなので映画公開時の一回きりの企画ではなく、「YEN TOWN BAND」のように長く活躍してほしいというのがファンの本音ではないでしょうか。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)