12月23日公開の『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』は、靴デザイナーのマノロ・ブラニクと、彼のブランドの魅力に迫るドキュメンタリー映画です。

マノロ・ブラニクといえば、ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」で、主人公キャリーが愛用している靴として、一躍世界中に名が知られたブランドです。『マリー・アントワネット』(2006年)ではソフィア・コッポラ監督が「きっとマリー・アントワネットも、マノロに頼むと思ったから」と考え、23足の靴をマノロ・ブラニクに依頼しています。この映画を観た方の中には、靴が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

ときに、映画には魅力的な靴が登場し、物語を盛り上げます。今回はそんな映画に登場した、ユニークな靴を紹介します。

バレリーナのためのハイヒール!…『ファイアbyルブタン』(2012年)

パリで人気のナイトクラブ「クレイジーホース」のダンサーが、クリスチャン・ルブタンのデザインした靴を履いて出演したショーを映画化したのが『ファイアbyルブタン』です。

ルブタンは、同クラブのダンサーに魅了されたことをきっかけに、靴デザイナーになったという経歴の持ち主です。そんな彼がダンサーのために作ったのが、ハイヒールで作られたトゥ・シューズでした。80日間の限定公演で行われたショーは“足”に視点を集める演出になっており、劇中では靴と足の美しさにまず魅了されますが、ハイヒールを履いて踊るダンサーの技量にもまた、目を奪われることでしょう。

ちなみに、このハイヒールで作られたトゥ・シューズは、東京・伊勢丹新宿本店の2階にある同ブランドのコスメ売り場にディスプレイされています。

男性用のハイヒールもある!?…『キンキーブーツ』(2005年)

『キンキーブーツ』に登場するのは、なんと男性用のハイヒール! それを履くのは、派手な衣装や化粧などで女装したドラァグ・クイーンです。

物語は彼女たちのために、倒産寸前の工場がハイヒールを作るというもの。男性の体重を支えられず、ヒールがすぐに壊れていたことを知り、工場の跡取りのチャーリーは、そこに新たな需要を見出します。

作中でも特に印象的なのが、真っ赤なエナメル製のニーハイブーツ。チャーリーが知り合ったドラァグ・クイーンのローラのトレードマークです。ローラがこれを履いて踊る姿はカッコいいの一言。「靴はセックス」と言い切る彼女の考え方も含めて、靴の奥深さを感じさせます。

なお、ショーで歌い踊るシーンは、ローラを演じる俳優キウェテル・イジョフォー本人が演じています。彼が履いているブーツは、すべて特注で作られているそうです。

ちなみに、映画に登場する工場は、靴ブランド「トリッカーズ」のもので、実際にトリッカーズの従業員もエキストラとして出演しています。靴が作られるまでの過程を見られるのも、作品の見どころの一つといえるでしょう。なお、映画のモデルになったブルックス社(W.J. Brookes Ltd)は、実際にドラァグ・クイーン用のハイヒールで成功し、工場を立ち直らせています。

世界で一番有名な靴といえば…『シンデレラ』(2015年)

世界で一番有名な靴といえば、おとぎ話「シンデレラ」に登場するガラスの靴かもしれません。これを現代の技術で再現したのが、実写映画版『シンデレラ』です。

今作でガラスの靴を作ったのはスワロフスキー。ガラスで作ると光らないため、素材にクリスタルを採用しています。衣装デザインを手掛けたサンディ・パウエルは、美術館で見た1950年代の靴から形のヒントを得たそうです。

完成した靴はクリスタルの塊から掘り出し、ヒールは15cmという優美なもの。ただ、実際には履くことができず、撮影では革靴を履き、あとでガラスの靴を合成したのだとか。今の技術をもってしても、履くことができるガラスの靴を作るのは難しいようです。

『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』/12月23日(土・祝)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!/(C)HEELS ON FIRE LTD 2017

映画『マノロ・ブラニク/トカゲに靴を作った少年』では、1942年に生まれたマノロ・ブラニクの半生を追っています。ファッションに興味があった少年が、アメリカ版『VOGUE』の伝説的な編集長ダイアナ・ヴリーランドにスケッチを見てもらい、「靴のデザインに専念した方が良い」とアドバイスされたという逸話からして、ファッション感度の高い方なら興味を惹かれるのではないでしょうか。

その後、マノロ・ブラニクは靴デザイナーとして身を立てていきますが、初めてのショーではヒールに銅板を入れるのを忘れ、モデル達が上手く歩けなかったとか。ところが、そんなモデル達のウォーキングが「新しい!」と絶賛されたそうで、ある意味で“持っている人”と言えるかもしれません。

ほかにも、作中には現・アメリカ版『VOGUE』編集長アナ・ウィンター、ジュエリー・デザイナーのパロマ・ピカソなどのインタビューも収録されています。また、マノロ・ブラニクが実際にデザインし、イタリア・ミラノにある工房で自ら靴を作る姿も見ることができます。

面白い靴が登場する作品から、靴をテーマにした物語まで、映画にはさまざまな靴が映されています。映画を観ていて何か印象に残った靴があったら、その由来を調べてみるのも面白いかもしれませんね。

(文/デッキー@H14)