2017年12月16日に、双子のように瓜二つの映画が揃って公開される。特にコラボなどはしていないようなので、おそらく偶然だ。だとしたら、驚くべきことである。その作品は、アメリカ映画『彼女が目覚めるその日まで』と日本映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』だ。

アメリカは家族を、日本は恋人を描く

両作の共通点は、共に“実話”の映画化であること。ヒロインが「抗NMDA受容体脳炎」という深刻な病に冒され、彼女を家族や恋人たち、周囲の人々が地道に辛抱強く見守り続けること。物語の骨組みはほぼ同じだ。

ただ、それぞれスポットを当てている部分が違う。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』はタイトルが示している通り、結婚を約束していたカップルが深刻な病に阻まれる物語で、佐藤健が演じる恋人の「待つ」姿が中心となる。

『彼女が目覚めるその日まで』にもヒロインの恋人は登場するし、彼も彼女の回復を待ち続けるのだが、こちらは家族のほうがフィーチャーされており、彼女の両親の葛藤が物語のメインとなる。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』にもヒロインの両親は姿をあらわすが(薬師丸ひろ子と杉本哲太が好演)、グッと控えめだ。一方、『彼女が目覚めるその日まで』の両親は、原因不明のこの深刻な病への対処法をどうにか解明してほしいと、掴みかからんばかりに医師に迫る。

子を想う親の気持ちは一緒でも、どういう態度、どういう行動に出るかはまったく異なっている。その点に注目して両作を見比べてみても、興味深い内容になっている。

(C) 2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

「抗NMDA受容体脳炎」とはどんな病なのか?

「抗NMDA受容体脳炎」は、日本でも年間1,000人ほどが発症していると推定される病気だ。症状はあまり知られていないが、ひとつは、自分の感情がコントロールできなくなる。超ハッピーになったり、突然どん底に堕ちたりするのだ。幻覚や幻聴によって、そばにいる人にとんでもない暴言を吐くようにもなる。やがて、昏睡状態に陥り、そのまま死にいたることもある恐ろしい病気だ。

人が変わったかのようなその様子は一見、精神病のようにも映るそうだ。『彼女が目覚めるその日まで』では職場の上司がドラッグを疑い、最初にかかった病院の医師もアルコール依存症と判断する。

この病気は2007年にようやく急性脳炎のひとつと位置づけられた「新しい病気」だ。それまでは原因も不明で、医師も手の施しようがなく、古くは患者が「悪魔憑き」と形容されてもいたという。

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』では土屋太鳳が鬼気迫る演技で、その症状を体現している。『彼女が目覚めるその日まで』では映画『キック・アス』(2010年)のクロエ・グレース・モレッツが全身全霊を傾けた芝居で、病によって崩壊していく自我を表現。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』が、時間をかけ、困難を乗り越えたふたりの美談だとすれば、『彼女が目覚めるその日まで』は、病に向き合った本人と家族と医師の「闘い」を描いたものだ。だが、両作とも、まだよく世に知られていない病を伝え、何らかのかたちでサポートになることを願っていることに変わりはない。

これだけ医学が進歩したいまも、謎の病気は存在し、それにかかる可能性は誰にでもある。もし、あなたの身近にいるひとがこのような病気にかかったら? このふたつの映画は、他人事ではない大きな問いかけをしている。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)