大ヒットを記録した映画『シン・ゴジラ』、3DCGで描かれた迫力満点の映像が話題となりました。そのVFXを担当した大屋哲男(おおや てつお)さんに、現在の映画界でVFX(視覚効果)やCGはどのように使われているのか、またクリエイターに必要なスキルとは? フィルムの光学合成時代からさまざまな映画に携わってきた彼が語る、VFXの魅力について語っていただきました。

VFXやCGは特撮やSF作品だけのものではない! 何気なく見ている映画にも使われている技術

株式会社ピクチャーエレメント 代表取締役 テクニカルプロデューサー 大屋哲男(Tetsuo Ohya)氏

Q:VFXやCGは映画のどのような部分に使われているのでしょうか?

A:『シン・ゴジラ』に代表されるような特撮やSF作品など、現実では表現できないものを描くときに使われるイメージですが、意外と普通の作品にも使われています。

例えば、ラブストーリーなどで夕日をバックに恋人たちが語らっているシーンがありますが、実はここにもVFXの技術が使われていることがあるんです。普通に撮影すると、途中で夕日が沈んでしまったり、思っているようなロマンチックな画を撮ることが難しいのです。そこでVFXの技術を使って、ゆっくりと沈んでいく夕日を作り出してロマンチックなシーンを演出することもあります。

また、顔のアップのシーンでは、目の中のコンタクトレンズの輪郭を消すのもVFXの仕事です。アップにすることによって心情的な何かを伝えたいカットでコンタクトに気を取られてしまう観客がいるかもしれない。何かを訴えるときに邪魔になるものを消すことも仕事のひとつです。同じような理由で時代劇でもよく使います。日本はどこに行っても電信柱が立っていて山には高圧線があるのでそれらを消したり、お侍さんの耳のピアスの穴を消した事もあります。VFXが目立っていい作品もありますが、基本は観客が見ているときに違和感を感じさせないようお手伝いする技術です。なので、意外と多くの作品に隠れて使われているんです。

Q:台本にVFXの指示が出ていたりするのでしょうか?

シャワーやサーフボードなどの小物が配置されたオフィスは映画のセットのデザイナーによるもの

A:ト書きにはそのようなものはないですね。そのため、「崖から飛び降りる」という一文があったとしたら、前後のストーリーを読んで、人が助かる高さなのか、俳優なのかスタントマンが演じるべきなのか、VFXが必要なのか?と考えることが大事です。何事も想像することですね。

監督によっては、「25階の会議室で話し合う2人」と台本に書いてあっても、窓の外が映るように窓際に2人を立たせて25階にいることを表現する人もいれば、25階の窓の外から2人がいる会議室を映してそのまま部屋の中にカメラがくるなんて演出をする人もいます。これは監督によって違いますが、後者の場合は間違いなくVFXが必要となります。最近の漫画原作の作品は、漫画本来の自由な表現力を活かした演出にするために、VFXを使うことも多いです。ただ、どのような作品の台本も最初は文字しかなく、それを読んでイメージをすることが大事。派手なシーンも、しっとりとみせるシーンも、スタートラインは基本、文字なんですよ。

Q:監督の頭の中にあることを映像にするのが仕事だと思いますが、どのようにして形にするのですか?

A:「こういう背景が欲しい」と言われた時、まずはどういう感じなのかをきちんと聞いて、それに近い写真を探したり絵を描いたりして近づけますね。監督によって異なりますが、自分の頭の中でしっかりとした形を想像している人もいます。そのときは、監督が伝えたいことを汲み取ってどんなものを想像しているのか理解したうえで形にする必要があります。そしてもうひと案、「こういう方法はいかがですか?」という提案ができるようにしておくことも大事です。監督にも色んな方がいて、助監督を経験されている方だと自分が撮影小道具を用意してきた経験があるので、何となくのイメージを掴めている人が多く、他のジャンルから監督になる方はそれぞれの専門家に自由にやらせて最終的にそれらを使って演出していく人が多いように思います。まぁ、どう映像にするかは話し合って決めていくので、その時にそれらを表現する方法を持っていることが大事になってきます。

取材日:2017年10月18日 ライター:玉置晴子

プロフィール:大屋哲男(株式会社ピクチャーエレメント 代表取締役 / テクニカルプロデューサー)

1957年生まれ、埼玉県出身。1980年に海外CMのポストプロコーディネーターとして映像業界に入る。その後、『ゴジラvsビオランテ』などゴジラシリーズなどの映画やTVのVFXを手掛ける。2011年に株式会社ピクチャーエレメントを設立。『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』などのテクニカルプロデューサーを務める。『シン・ゴジラ』でアジアフィルムアワード最優秀視覚効果賞を受賞。

(取材・文/玉置晴子)