文=平辻哲也/Avanti Press

公開30周年を迎えた主演映画『私をスキーに連れてって』が、同じく創設30周年のJR東日本のCM「JR SKISKI」にコラボ起用され、大きな話題を集めた三上博史。80年代にトレンディドラマで一世を風靡し、その後は作品を選びながら、主役にこだわってきた三上が、『南極料理人』(2009年)や『横道世之介』(2013年)などで知られる沖田修一監督の新作『モリのいる場所』(2018年公開)に出演を決めた。劇映画の出演は、2004年公開の主演映画『予言』以来14年ぶり。三上が出演を決めた理由とは? 彼の色褪せない魅力とは?

本当は性別だって明かしたくない? 三上が演じるのは“謎の人物”!

三上は高校在学中にオーディションで劇作家・故寺山修司さんに見いだされ、寺山が監督、脚本を手がけた映画『草迷宮』(1979年)の主演俳優としてデビュー。1987年、映画『私をスキーに連れてって』(馬場康夫監督)で脚光を浴び、その後、フジテレビ系「君の瞳をタイホする!」(1988年)など数々のトレンディドラマに出演し、一世を風靡。映画では『スワロウテイル』(1996年、岩井俊二監督)、カンヌ映画祭コンペティション部門に出品された『月の砂漠』(2001年、青山真治監督)などに主演してきた。

『モリのいる場所』は、30年間ほとんど家の外へ出ることなく庭の生命を見つめ描き続けた伝説の画家、熊谷守一の逸話をモチーフにした沖田監督のオリジナルストーリー。山﨑努が「僕のアイドル」と敬愛する熊谷を演じ、樹木希林がその妻、秀子を演じ、晩年のある1日を描き出す。既に、加瀬亮、吉村界人、光石研、青木崇高、吹越満、池谷のぶえ、きたろうの出演が発表されているが、三上の役は“謎の人物”。いかにも彼らしい役どころだ。

というのも、三上はプライベートを極力出さない“秘密主義”。公式プロフィールでも、生年を明かしていない。以前、インタビューした折には「年齢は書いてほしくないんです。年齢を書かれると、それに縛られてしまう。性別だって、書いてほしくないくらい。女の人だって、演じたいから」と笑っていた。その後、映画でも大ヒットした舞台「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(2004年、2005年、PARCO劇場)で、性転換したロックシンガー役を演じ、「なるほど」と思った。

『モリのいる場所』に出演を決めたわけとは?

『モリのいる場所』の撮影風景より
2018年5月 シネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマ他全国ロードショー
(c)2017「モリのいる場所」製作委員会

三上は、本作の出演の理由について、こんなコメントを寄せている。

「俳優はひとりではできない仕事です。いつも仲間たちと一緒に作品を作っています。監督、プロデューサー、スタッフのみなさん。そして、直接やりとりをする共演者たち。ですが、これらは一期一会なんです。『また、一緒に作品作りがしたいなぁ』と思っても、いつのことになるか誰にもわかりません。なので、そんな機会があれば逃すことはできません。今回は特に、山﨑努さんや樹木希林さんに、以前たいへんお世話になったので、もう一度ご一緒したかった」

山﨑とは、寺山監督の映画『さらば箱舟』(1984年)をはじめ、ドラマでも共演多数。樹木とは中原中也役で主演したドラマ「汚れっちまった悲しみに」(1990年)で共演。日本を代表する二人の名優との共演が大きな動機になったようだ。

「台本にはわずかな出番しかありませんでしたが、自分次第で、しっかりとお二人に撮影現場で、なにかを共有できるのではないかと思ったからです。それに、会いたかった沖田監督とのはじめての出会いも、重要なことのひとつでした。そんな個人的な想いから参加することになった今作ですが、さいごに作品を完成させるのは観てくださるみなさんです。みなさんとの出会いに感謝します」と続けている。

大切な1本『私をスキーに連れてって』

JR SKISKIキャンペーンと『私をスキーに連れてって』のコラボ・ポスター http://jr-skiski.com/

いまも根強い人気の『私をスキーに連れてって』だが、寺山作品でデビューした三上には当初、違和感もあったと聞く。しかし、その後トレンディドラマに出演することになったのは、この映画のヒットがきっかけ。三上自身の大切な1本となった。華麗なスキーシーンも見どころになっているが、ちなみに本人が好きなスポーツはテニスと聞いている。

近年は、寡作になっているが、それも作品選びのこだわりゆえ。芦田愛菜が単独初主演した日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」(2014年)で一見冷酷な施設長のオファーを受けた際には、「挑戦的な作品には、役の大きさにこだわらず出演していきたい」とも語っていた。NHK大河ドラマ「平清盛」(2012年)の鳥羽上皇役やWOWOWの主演ドラマ「社長室の冬 ~巨大新聞社を獲る男~」(2017年)が印象的だが、三上にとって、映画はホームグラウンド。ほかにも待機作があるようで、スクリーンでその姿を見られるのは楽しみだ。