何が響くかを研究している

20代の俳優の層は厚い。そこから一歩抜きんでるためには、才能と努力だけでなく運まで味方にする必要がありそうだ。山田裕貴もそんな20代俳優のひとり。2017年、強力なターンキックで成長のスピードに加速をつけたのが見て取れる。だが、本人は肩に力を入れることなく、至って客観的に自身を見る。プロボクサーになった元チンピラを演じた「あゝ、荒野」では、菅田将暉と素晴らしい試合を“演じた”。現場では、前年の出演映画の本数がお互い9本だったことを確認し、「俺、売れてない方の菅田だね」と笑いあったという。この魂の強さに驚く。

「菅田君は、すごく意識しています。だから『あゝ、荒野』のオーディションにはバッチバチで行ったし、受かったと聞いて、次倒すのは新次……いや、菅田って思ったくらい(笑)。その感覚が(山田の演じた)裕二と新次にいい具合にシンクロして、このまま使える」と思ったそうだ。そう思っても驕おごらない。「一所懸命やればいいわけじゃない。映画を見て、知ってもらわなければ」と。2015年から出演している「HiGH&LOW」シリーズではアクションでも“魅せた”。だが、「“ハイロー”が好きな人はそれしか見ない。僕を追いかけて見てくれるわけじゃない。そういう点では苦しんだ一年でもありました。いろいろなことをやらせてもらって、年も重ねて、自分のスタンスも分かってきて、いい意味で許容範囲が広がり、見えてくるものもありました。でも満足はしてないですね、全然」。

 先日クランクアップした、大ヒット台湾青春映画のリメイク「あの頃、君を追いかけた」では主演を演じ、オールアップで男泣きをしたことが報じられた。脚本段階から関わり、納得いくまでやれた手応えに「泣けた」のだそう。

「誰々が出ているから見に来たというお客さんに、いい映画を見たと言わせたい」と。「デメキン」はそういった“思い”が色濃くにじみ出た作品だ。物語を引っ張るのは健太郎演じる佐田正樹だが、それが成立したのは山田演じるその相棒・合屋厚成が様々な角度から物語を補完してこそ。「そう思ってくれたとしたらすごく嬉しいです。まさにそうできればと思って演じたので。相棒として、コミカルな部分、シリアスな部分を、また一人だけ彼女がいる設定なので、友情だけじゃなく愛情の部分も僕がフォローできればと。原作には厚成のバカな部分まで描かれているので、そういう危なさとアホさも加味して、これまで演じた中で一番まっすぐ友だちを思う、熱い男にしたいと思いました山田はいう。「どの現場でも役を生きることを重要視している」と。

 役を生きる。その言葉通り、「デメキン」の現場の俳優陣は、映画の暴走族チーム・幻影そのものだったようだ。「一番仲良くなければいけない健太郎が人見知りだったので積極的に話しかけたら、すごく慕ってくれたり、福山翔大、三村和敬、岩永ジョーイと以前、共演した子も多くてやりやすかったんですが、仲間の物語を演じるなら絶対現場の雰囲気がいいとプラスだと思って、意識的に雰囲気づくりをしました。共演者の過ごした時間がお芝居としても、人生としても無駄にならないといいなと、どの現場でも思っています」まさにこれ、“座長”の発想。

「デメキン」

2017年・日本・カラー・115分 監山口義高 脚足立紳 出健太郎、山田裕貴、栁俊太郎、今田美桜、髙橋里恩 
配AMGエンタテインメント
◎シネマート新宿
ほか全国にて上映中
(C)よしもとクリエイティブ・エージェンシー/ワニブックス/秋田書店・ゆうはじめ
(C)2017映画『デメキン』製作委員会

取材・文=関口裕子

撮影=山本マオ ヘアメイク=唐澤知子