『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)で、暗黒卿ダース・ベイダーの孫でベイダー卿を崇拝するカイロ・レンを好演し、世界的に注目を集める存在となったアダム・ドライバー。前作で父ハン・ソロを手にかけてもなおライトサイドの誘惑を断ち切れずにいるカイロ・レンは、光と闇の間で揺れ動き、衝撃の運命が待ち受けます。

カイロ・レンがあまりにもインパクトの濃いハマり役であるために、一部では「無慈悲のエゴイスト」というイメージが定着しつつあるドライバーですが、実はNPOの運営に熱心だったり、風変りなルーティンを持っていたりと、漆黒のマスクの下は意外な魅力でいっぱいです。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の公開に先駆け、カイロ・レンを演じるアダム・ドライバーの知られざる素顔をチェックしてみましょう。知れば知るほどドライバーに親しみを感じ、カイロ・レンのこともさらに好きになることでしょう。

911で愛国心にめざめ、軍人となるも…

カイロ・レン役を演じたアダム・ドライバーですが、決して邪悪なキャラクターばかりを演じてきたわけではありません。慈愛に満ちた神父役や、変わった性癖をもつ役者志望の青年役など、多様な役どころに果敢に挑戦し、そのたびに高い評価を得てきました。彼の「カメレオン俳優」としての才能は、豊かな人生経験によって培われたものではないかと考えられます。

ドライバーが俳優のキャリアをスタートさせたのは意外にも遅く、20代半ばの頃。それまでは、「掃除機のセールスマン」や「芝刈りの専門業者」などバラエティに富んだ仕事に就きながら、地道に生計を立てていました。

なかでも注目すべきは、国防に従事していた経歴です。2001年9月11日当時17歳だったドライバー少年は、アメリカ同時多発テロ事件を目の当たりにし、強い愛国心から運命に導かれるまま海兵隊に入隊しました。しかしマウンテンバイクで走行中に転倒。胸骨を骨折する大けがを負ってしまったことをきっかけに、やむなく退役しました。

のちにラジオ・インタビュー番組「フレッシュ・エアー」に出演したドライバーは、入隊を決意した際の心境について、「男気を試したかった。母国アメリカのために働きたかった。海外に派遣されてもよいと考えていた」と話しました。カイロ・レンの粗暴な姿からは想像もつかないような、正義感にあふれた発言です。

名門校への入学、NPOの創設

海兵隊を退役した後、ドライバーはインディアナポリス大学で学生生活を経験します。その日々の中で、一から徹底的に演劇を学びたいという意思が沸き起こり、芸術の名門校「ジュリアード音楽院」の扉を叩きました。

もともとドライバーは海兵隊への入隊前に同校を受験していたのですが、そのときはふるいにかけられ、入学が叶いませんでした。しかし海兵隊や大学で様々な社会的視野を広げたことが功を奏したのか、数年越しの再チャレンジでは見事合格。晴れて「ジュリアード音楽院」の学び舎で、本格的に演劇を学ぶ生活がスタートしたのです。後に妻となるジョアン・タッカーとも同校で知り合いました。

軍人と俳優では、一見かけ離れた職業のように思われますが、ドライバーが「ニューヨーク・タイムズ」紙に語ったところによると、海兵隊で学んだある3つのことが俳優業にも大いに活かされているとのこと。それは「自ら率先して指揮を執ること、集団行動においては同じ方向を目指すこと、チーム内での自分の役割を認識すること」だそうです。

こういった理念の実践として、ドライバーは、軍人たちに上質な演劇を楽しんでもらうことを目的とした非営利団体「アーツ・イン・ザ・アームド・フォーシズ(AITAF)」を創設しました。あまり多くは報じられませんが、実は彼、軍人と俳優という2つの特殊な経歴を存分に活かし、妻や仲間たちと一丸となって社会貢献に励んでいるのです。

役に対する姿勢はとにかくストイック

愛国心を沸騰させて海兵隊に入隊したり、経歴を活かしてNPOを創設したり、といったエピソードからもドライバーの真面目な性格はよくうかがわれますが、それだけではなく、与えられた役柄との向き合い方も、これでもか! というほどにストイックで真面目。マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』(2016年)で熱血漢のスペイン人宣教師ガルペ役にキャスティングされた際は、23kgもの減量に耐えて撮影に挑んだといいます。

キャラクターに対する洞察も鋭く、的確なカイロ・レン分析はスター・ウォーズファンを唸らせました。ドライバーがレンについてインタビューで語ったところによると、「レンは自分を正当化し、正義だと信じて疑わない。だから、危なっかしくて何をしでかすか分からない」とのこと。また、「ダース・ベイダーやスノーク、そして自分自身が悪だということを分からずに行動しているのだから、決して根っからの悪いヤツじゃないと思う」との見方を示しています。

でも意外と「不思議ちゃん」な一面も?

正義感や責任感に篤く、行動力があり、肉体と知能のバランスが見事にとれた男のなかの男、といったドライバーですが、ときどき凡人には容易に理解できない「不思議ちゃん」な一面ものぞかせます。たとえば、彼の食習慣はちょっと風変り。

彼は現在、「1日に卵を6個食べる」という生活を欠かさずに続けているのですが、6個のうち4個は「卵黄なし」というこだわりを持っているのです。しかもこの習慣を始める前は、「1日にチキンを1羽食べる」というルーティンを自らに課し、毎日鶏を丸ごと平らげていたというから驚き。海兵隊在籍時代の特殊な食生活などが何か影響しているのでしょうか。

しかし来る日も来る日も鶏を買いに行かなければならないことが面倒になり、卵6個の生活に移行したのだとか……。ルーティンを中止した理由が「面倒になって」というところに人間らしさを感じますし、「鶏1羽」の代わりに食べ始めたものが「卵6個(うち4個は卵黄なし)」という点にも「なぜ?」とツッコミを入れたくなってしまいます。

役者は様々な人物の様々な人生を再現してみせる職人です。人生経験の豊富さや見識の深さがスキルに直結することは言うまでもありません。アダム・ドライバーがすぐれた役者であるのは、若くして既に、一言では語りつくせない濃密な人生を歩んできたことに理由があるのではないでしょうか。

最高指導者スノークの下でダークサイドに落ち、父親ハン・ソロをも殺害してしまったカイロ・レンですが、実はこんなに誠実で心根の優しい俳優が演じていた、というところにギャップの面白さがあります。
サムライを彷彿とさせる質実剛健な雰囲気とはうらはらに、お茶目でかわいらしい面も持ち合わせたドライバー。今後の活躍から一層目が離せない注目の俳優です。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、12月15日(金)全国公開。

(桃源ももこ@YOSCA)