結婚目前に突然病に襲われ記憶をなくしてしまった女性と、そんな彼女を8年間待ち続けた男性の実話をモチーフにした『8年越しの花嫁 奇跡の実話』。You Tubeの動画をきっかけに、書籍化やテレビドキュメンタリーにもなった本作を、映画『64-ロクヨン-』で、人の心の機微をていねいに描いた瀬々敬久(ぜぜ たかひさ)監督が佐藤健と土屋太鳳主演で映画化。地方都市に生きる若いカップルの生き様をありのまま映し、生きる力や日常のありがたさがていねいに描かれた話題作です。今回は、瀬々監督に原作がある映画をつくるうえで大事にしていることや、ドキュメンタリーとフィクションの違いや共通点について語っていただきました。

原作がある作品を手掛ける際は、根底に原作を愛する気持ちを持たなければつくれないと思う

(C) 2017「8年越しの花嫁」製作委員会

Q:『8年越しの花嫁 奇跡の実話』はタイトル通り、実話がモチーフになった作品ですが、今回のような原作モノとオリジナル作品では制作過程が異なるのでしょうか?

原作がある作品に比べてオリジナルは物語をゼロからつくっているという違いはありますが、基本、制作過程は同じです。ただ、原作や実話がモチーフの作品をつくるときは、元となるものを僕たちが受け止め、解釈して、映画として形をつくっていく必要があります。そのときに大事なのは、“原作の精神”をどう活かしていくのか。映画には映画ならではの、文章には文章ならではの表現方法があると思います。その異なった表現方法で、自分たちが感じとった“原作の精神”をどのようにすくい取るのかが肝なんですよ。 “原作の精神”を間違って解釈していると、観ている方が「あれっ?」って感じてしまう。そうなるとダメ。原作の持つにおいや雰囲気を表現することが大切なんです。そのためにはやっぱり、つくり手は原作のファンでないといけないと思います。原作を愛して面白いと思う、そういう気持ちが根底にないと、つくってはいけない気がしますね。

(C) 2017「8年越しの花嫁」製作委員会

Q:本作は、結婚式の直前に深刻な病により意識不明になった中原麻衣さんと彼女を8年もの間、待ち続けた西澤尚志さんの実話がベースになっていますが、この話を聞いたとき、どのように感じましたか?

この物語は、大筋では、8年もの間、婚約者を愛し待ち続けたというすごい話なんですが、ひとつひとつのディテールは、実はみんなが生きている日常となんら変わらないんです。尚志さんと麻衣さんという普通の人に突然、人生の試練が訪れ、その人たちが、どうやってその試練を乗り越えたのか、これをきちんと描きたいと思いましたね。映画をつくるにあたり尚志さん、麻衣さんともお話しさせていただきましたが、2人は地方都市にいる普通のカップル。量販店の駐車場でデートの待ち合わせをしたり、国道沿いの式場で結婚式を挙げたりする……。これらは地方でよく見る風景のひとつです。そういう普通なことをしてきた人々に襲い掛かる出来事を描くためには、日常を大事に描く必要があると思いました。彼らをスーパーヒーローではなくリアルさを持って、ていねいに描きたかったんです。

取材・文 玉置晴子

(C) 2017「8年越しの花嫁」製作委員会

瀬々敬久(映画監督)

1960年生まれ、大分県出身。大学卒業後、助監督を経て、1989年に『課外授業 暴行』で監督デビュー。以降、『アントキノイノキ』(11)、『64-ロクヨン-』(16)などの劇場映画からテレビドキュメンタリーなど様々な作品を発表。『ヘヴンズ ストーリー』(10)が第61回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞とNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)の二冠を獲得。構想22年の女相撲と理想社会に青春をかけた若者を描く『菊とギロチン - 女相撲とアナキスト - 』と薬丸岳原作の『友罪』が来年公開予定。

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』

監督:瀬々敬久
キャスト:佐藤健、土屋太鳳
北村一輝、浜野謙太、中村ゆり、堀部圭亮、古舘寛治
杉本哲太、薬師丸ひろ子

配給:松竹
(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会
12月16日(土)全国ロードショー