文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪/Avanti Press

表の顔は英ロンドンの高級テイラー、裏の顔は世界最強のスパイ機関。そんな紳士スパイたちを描き、2015年に世界中で大ヒットを記録した英国発のスパイ・アクション映画『キングスマン』が帰ってきた! 続編タイトルは『キングスマン:ゴールデン・サークル』だが、裏タイトルはズバリ、“キングスマン(英国マン)VSステイツマン(米国マン)”。キングスマンが米国のスパイ機関、ステイツマンと協同し、壮大な陰謀に挑むというものだ。映画にかかわらず、さまざまな場面で比較されることが多い両国。そこで、本作に盛り込まれている米英の文化や仕草、ファッション、マナーなどの違いを、解説してみたい。

まずはストーリーを駆け足で。世界的麻薬組織、ゴールデン・サークルの攻撃により、壊滅状態となった、英国拠点のキングスマン。残された若きスパイのエグジー(タロン・エガートン)とメカ担当のマーリン(マーク・ストロング)は、広大な米国の地、ケンタッキー州でバーボン・ウイスキーの蒸留所を経営する米スパイ機関、ステイツマンと合流する。ステイツマンの顔ぶれは、適当なボスのシャンパン(ジェフ・ブリッジス)、問題児のテキーラ(チャニング・テイタム)、女性好きなウイスキー(ペドロ・パスカル)、天然女子のメカ担当、ジンジャー(ハル・ベリー)ら。そして、前作で敵の弾丸に倒れたはずのエグジーの恩師、ハリー(コリン・ファース)も復活。両機関は意地やプライドをぶつけ合いながら、上品でサイコなゴールデン・サークルの女性ボス、ポピー(ジュリアン・ムーア)の邪悪な陰謀に立ち向かう――。

「アメリカでは、何でも巨大なんだろう?」

キングスマンのエグジー(左)とステイツマンのテキーラ(右)
『キングスマン:ゴールデン・サークル』

それでは、米英の対決を見てみよう。まずは、ファッション。高級スーツを身にまとい、眼鏡やネクタイで決め、武器はライターや万年筆、傘という超紳士なキングスマンに対し、ステイツマンはファッションに無頓着で大雑把である。テキーラは、カウボーイハットにGパン&Gジャン&巨大バックル付きベルト。ジンジャーは、ダボダボの事務服にボサボサの短髪。シャンパンとウイスキーは、まあまあ、おしゃれだが、ジャケットの前ボタンはオープン、下半身はダボついた濃紺のGパン。ちなみにステイツマンの武器は、ショットガンと投げ縄である。

決まり文句も象徴的だ。ステイツマンのウイスキーが、キングスマンの決め台詞「マナーが紳士を作る」を真似るシーンがあるが、マナーよりも自由なスピリットが先行しがちなステイツマンとして、心のなかでは「マナーってなんだい?」と思っている模様。一方で、エグジーがステイツマンに投げかけるのは、「アメリカでは、何でも巨大なんだろう?」という言葉。土地も家も料理も態度も、風情や繊細さより、サイズと量が優先! という、一部で持たれている米国の概念が反映されているようだ。

マナーといえば、料理とテーブル作法の違いも描かれている。エグジーが、恋人であるスウェーデン王女とその両親とディナーをたしなむシーンでは、上品なコースメニューが振舞われ、テーブル作法にカメラがフォーカス。一方、ザ・アメリカンな麻薬組織の拠点は典型的なダイナーで、ポピーが作る世にも残酷なハンバーガーが振舞われる。客は、作法なんぞ気にせずに、バーガーにかぶりつくことを強制されるのだ。

情に脆く、陽気で憎めないアメリカンの魅力も満載

ステイツマンのジンジャー
『キングスマン:ゴールデン・サークル』
(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

喋り方の面でも、はきはきとした上品さを感じるキングスマンのイギリス英語と、ワラワラ~と流れるように話すステイツマンのアメリカ英語(両英語の詳しい発音やイントネーションの違いは、専門家にお任せ)の違いが顕著。アメリカ人の中には、イギリス英語に憧れる人も多いというが、会話の内容においても、キングスマンの皮肉をステイツマンが理解できずに、必死で弁解したり、憤ったりしているシーンがちょこちょこあり、微笑ましい。

と、今回は英国発の作品だけに、英国側から米国を皮肉り、英国に軍配が上がる仕立てになっているが、ハリウッドには逆方向の作品も多いため、そこは、おあいこ。軽くて鈍くて薄っぺらいステイツマンにも、情に脆く、陽気で憎めないアメリカンの魅力が含まれており、愛が感じられるからよいのだ。

そして、本作最大の目玉となっているのが、英歌手エルトン・ジョンの存在。サイコなポピーに誘拐され、毎日ピアノを弾かされているスーパースターの“エルトン・ジョン”役として、相当にファンキー&クレイジーな味を出している。エルトンのために本作を見る価値があるというぐらい、いい感じだ。