文=紀平照幸/Avanti Press

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の世界的ヒットで再び注目される“モダンホラーの帝王”スティーヴン・キング。超能力や吸血鬼、モンスターやゴーストなどを題材にした作品を多数送り出してきましたが、それらの世界が裏で繋がっている、ということをご存知でしたか? その鍵になる作品が、1月27日から日本公開される『ダークタワー』なのです。

ニューヨークに住む少年ジェイク(トム・テイラー)は毎夜不思議な夢を見ていました。巨大なタワーを破壊しようとする黒衣の魔術師、囚われの子どもたち、皮膚に継ぎ目のある不気味な人々、拳銃使いの戦士……。周囲の人々はジェイクを問題児扱いしてクリニックに送り込もうとしますが、迎えに来たクリニックの職員の首に“継ぎ目”を発見したジェイクは脱走。逃げ込んだ廃屋にあった“ポータル”と呼ばれる異世界への入口から、夢にあった“中間世界”に転送されます。

そこには中間世界や現実世界を含む複数の世界を外宇宙の魔物から守るダークタワーがあり、黒衣の男=ウォルター(マシュー・マコノヒー)がそれを破壊することによって世界に破滅と混沌を引き起こそうとしていたのです。しかし、塔を守る使命を帯びた拳銃使いの戦士“ガンスリンガー”はローランド(イドリス・エルバ)ただ一人を残すのみ。しかも彼は父親をウォルターに殺されたことで戦意を喪失していました。ローランドは戦士の誇りを取り戻して世界の崩壊を防げるのか? そして、ジェイクが果たすべき役割とは?

舞台となる中間世界がキング作品を繋ぐ

キング作品には珍しい王道の異世界ファンタジーですが、舞台となる中間世界こそが、キングの各作品を繋ぐものなのです。“深紅の王”と呼ばれる外宇宙からの侵略者の先兵がウォルターで、彼は何度も名前を変え、“黒衣の男”として他のキングの小説にも登場。ダークタワーが攻撃を受けてその力を弱め、“世界のゆらぎ”が起きた時、現実世界(=キングの小説世界)では怪奇現象が起きるという設定になっています。

キング原作の映画でつながりを挙げると、『ミスト』で霧の中から出現した怪物たちもここから来たもの。ジェイクがウォルターに狙われるのは、彼が超能力の持主だからで、その力は“輝き”と呼ばれます。『シャイニング』でも不思議な力を“輝き”と説明していますね。『IT/イット~』で登場する不気味なピエロのペニーワイズも名前だけですが、この映画に出てきます(原作小説にはペニーワイズに酷似したピエロも登場します)。

もともと原作小説はキングが学生時代に構想したもので、第1巻の刊行から完結まで22年の歳月を費やした全7部の大作。書いているうちに「これは自分の全キャリアにまたがる作品なんだ」と思い至った彼は、他の作品のキャラクターを『ダークタワー』に登場させたり、自分自身をも登場人物にしたりして自作内クロスオーバーを展開したのです。

奥深く面白さに満ちているキングの世界

映画はこの長大な原作を、一部抜粋ではなく、全体からエッセンスを抜き出して再構築。原作の途中から物語を語りはじめ、その前後の部分も包括する形で95分の映画として仕上げています。ほとんど中間世界が舞台の原作と比べ、映画はニューヨークとの間を行ったり来たりして派手なバトルを展開。ウォルターの魔術(口に出したことをすべて現実化させるという、ほとんど最強レベルの力)とローランドのガン・アクションが激突するクライマックスの見せ場は、映画ならではの迫力に満ちています。

『IT/イット~』で初めてスティーヴン・キングと出会った人も多いかもしれませんが、彼の世界はさらに奥深くいろいろな面白さに満ちています。この『ダークタワー』を皮切りに、どんどんその中に踏み込んでいけば、新たな驚きと発見が待っているはずです。