2018年1月6日公開の『愛の病』は、2002年に実際に起きた「和歌山出会い系サイト強盗殺傷殺人事件」に着想を得た作品です。瀬戸さおりが演じるエミコは、出会い系サイトで出会った男を、自分の私利私欲のために利用し、とんでもない犯罪を企てます。

クライム・サスペンス映画は数ありますが、女性犯罪者の実話を元にした映画では、ときに愛欲を求める登場人物たちによるドロドロの人間ドラマが繰り広げられます。そんな女性犯罪者を取り巻く人間関係を映画の中に見たいと思います。

少女を養うために人を殺し続けた娼婦…『モンスター』(2003年)

2002年に死刑執行された元娼婦の連続殺人犯アイリーン・ウォーノスの生涯から着想を得て作られたのが『モンスター』です。アイリーンは男に愛されることを願っていましたが、与えられるのは性欲の愛ばかりで、人間関係に疲れ果てていました。そんな彼女の前に現れたのが、同性愛者が集まるゲイバーで知り合った女性・セルビーです。男性不信になっていたアイリーンは、自分が求めていた愛が、彼女との間にあると感じます。

アイリーンは手っ取り早い売春で金を得ようとしますが、それはすでに“心から愛する相手”を見つけたアイリーンにはイヤな仕事でした。そのため、彼女は金で女を買う男達を悪だと思い、小児性愛者や妻子がいる男などを、理由を付けては殺すようになります。しかし、アイリーンが求めた愛は、セルビーのわがままによって崩壊していくのです。

セルビーがアイリーンに抱いていたのは、本当に愛だったのでしょうか? セルビーのモデルとなった人物は、アイリーンが逮捕されると警察に協力し、彼女とは一度も口を利くことは無かったそうです……。

2人はレズビアンのカップルでしたが、アイリーンが生活費を稼ぎ、セルビーを養うという構図は、彼女たちにとっては理想の夫婦像に通じるものがあったのかもしれません。社会から逸脱したカップルながらも、社会が作ったしがらみに捕らわれているようにも見えますね。

愛欲のままに生きようとする浮気男と住み込み女中…『愛のコリーダ』(1976年)

『愛のコリーダ』は1936年に日本で起きた「阿部定事件」を基に作られた作品です。料亭の主人吉蔵を虜にしたのは、女をも虜にするフェロモンをもった住み込み女中の定。「女郎上がり」とバカにした女中の頭に包丁を向けるなど、気性の荒い彼女に吉蔵は入れ込み、彼女のやりたいことは、なんでも叶えようとします。

女将がいる身でありながら、吉蔵は定とひそかに結婚式を挙げるなど、物語が進むにつれて2人の関係は一層深いものとなっていきます。しかし、最初こそ定をもてあそんでいた吉蔵は、次第に定に精気を吸い取られていきます。最後は狂気的な結末を迎えますが、相性ばっちりの2人が知り合った故の末路といえるかもしれませんね。

作中に出てくる人物は性におおらかで貪欲といえ、酒池肉林と表現するのがピッタリくる場面が展開されます。三味線に合わせて小唄を歌いながら定を責めるなど、粋な姿を体現する吉蔵を演じた、藤竜也のしたたる男っぷり。そして、定を演じる松田暎子のフェロモンあふれる演技は見ものです。特に、定が包丁を口に咥える姿は、思わず目を奪われてしまうような、壮絶な美しさがあります。

自転車の乗り方や泳ぎ方を教わる逃亡犯…『顔』(2000年)

『顔』の基になっているのは、1997年に逮捕された「松山ホステス殺人事件」の犯人。リアルでは時効ギリギリまで逃亡を続けた彼女の、ロードムービーといえる作品です。

主人公の正子は自室に引きこもりながら、実家のクリーニング店のかけはぎの仕事をする人物。母親が急死した際も、ショックで自室から出てこようとしません。そんな彼女に怒りをあらわにした姉を、正子は首を絞めて殺してしまいます。その後、正子はラブホテルに住み込みで働き、自殺しようとして失敗するなど、逃亡生活を続けていきます。やがてたどり着いた別府で、クラブを経営していた律子に雇われると、彼女はそれまでの人生で一番楽しい時間を過ごすのです。

この作品の興味深いところは、殺人犯であることを隠して逃亡する正子が、外の人間と触れ合ったことで、新たな自分と出会いたくましくなっていくことです。ラブホテルの経営者、花田に自転車の乗り方を教えてもらった正子は、彼が自殺した際には自転車に乗って警察から逃亡。やがて乗れなかった自転車に、乗れるようになっていきます。そしてクラブの客の健太に泳ぎ方を教わった正子は、今度は警察の追っ手から逃げるために、海を泳いで渡るのです。

外の世界を知るきっかけが違うものであったら、正子の人生は明るいものになっていたかもしれません。それを物語るように、家では厄介者扱いされていた彼女が、一歩外に出れば働き者として頼りにされる存在となっていたのです。

2018年1月6日(土)シネマート新宿ほか公開/(C)2017『愛の病』製作委員会

『愛の病』では、元夫エイジの身勝手さに嫌気がさしたエミコが、子供を連れ実家に戻ったことで物語が動きだします。やがて、エミコは出会い系サイトのサクラをはじめ、そこで知り合った真之助から金をゆすろうと画策します。さらには、彼女の前に姿を現したエイジを、真之助を使って脅迫しようとするのです。

吉田浩太監督は「事件自体はショッキングだけれど、それ以上に人間ドラマを観てもらいたい。答えが出ない物語なので、そこを観る人が考えながら観て欲しい」と話しています。果たしてエミコと真之助、エイジはどのような結末を迎えるのでしょうか?

(文/デッキー@H14)