2018年1月5日公開の映画『嘘八百』は、偽物の茶碗をつかまされた古物商の小池則夫が、彼をだました陶芸家の野田佐輔と出会って意気投合。共に恨みを持つ骨董店や大御所鑑定士に、一泡吹かせようと計画を企てる物語です。

作中で小池たちは千利休のことを知ろうと研究を重ね、「さかい利晶の杜」など由縁のある地を巡って彼の人生をたどり、その考え方を調べようとします。では、千利休とは果たしてどのような人物だったのでしょうか? これまでに公開された映画の中に描かれてきた、千利休の姿をたどってみたいと思います。

大阪生まれの快活な千利休…『花戦さ』(2017年)

2017年公開の『花戦さ』では、佐藤浩市が千利休を演じました。千利休というと“わび・さび”の印象が強く、落ち着いたイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、この映画で佐藤浩市が見せたのは、大阪の生まれを感じさせる快活でおおらかな人物像でした。

豊臣秀吉が催した北野天満宮での大茶会で見せた、誰にでも開かれた茶の湯の温かさ。華道の家元となった池坊専好との交流では、無二の親友としてお互いが見せる道を認め合う芸術家同士の交わりが描かれています。ときには気持ちの昂ぶった相手を、一服の茶で鎮めさせるなど、“茶でもてなす”という意味がよく分かります。

作中では織田信長や豊臣秀吉との関係もきちんと描かれています。豊臣秀吉との“対決”ともいえる対話では、横暴な秀吉が利休を足で踏みつけますが、そこでの彼の対応にスケールの大きさを感じさせます。

花街にも入り浸たる若き千利休…『利休にたずねよ』(2013年)

2013年公開の『利休にたずねよ』は、利休の青年時代を描いた作品です。歌舞伎俳優の市川海老蔵が若き千利休を演じました。

市川海老蔵が演じる千利休は若々しく、青春を謳歌する姿が新鮮です。千利休の秘められた恋も描かれており、茶道に関すること以外の利休の人柄を垣間見ることができます。作中では10代から70代までの千利休の人生をたどることになりますが、花街に入り浸っていた頃の姿は、今まであまり描かれることがなかっただけに新鮮です。一方で、信長に対して「美は私が決めること」と豪語する絶対的な美意識も、作中で表現されています。

この映画に登場するのは、歌舞伎俳優である市川海老蔵ならではのスケールの大きさ、凜々しさ、端正な身のこなしなどが美しい千利休です。市川海老蔵は小さい頃から茶道を習っていたそうですが、この映画のためにさらに猛特訓をしたそうです。

凛とした佇まいの穏やかな千利休…『利休』(1989年)

三國連太郎が主演の『利休』は、まさに“誰もが想像する利休”といえる、彼の重厚な存在感が魅力です。穏やかで、周りから慕われる千利休を体現しています。

作中では自ら茶器を作る姿が描かれており、千利休が芸術家であることを強く感じます。しかし、生きている時代は戦国時代の真っ只中。豊臣秀吉に重臣として重用されたため、政治にも否応なく関わっていかざるをえません。千利休の茶は伊達政宗や徳川家康などを懐柔するための道具として使われていきます。

秀吉に切腹を命じられた千利休が、腹を切る場所まで駕籠から降りて歩いていく一幕は、利休に対する秀吉流のもてなしだったのかもしれません。映画の冒頭で、秀吉が利休の茶室に行く道との対比のように見えます。

『花戦さ』で千利休を演じた佐藤浩市は、三國連太郎の息子です。その後ろ姿などに、瓜二つといえる面影を感じます。しかし、佐藤浩市演じる千利休は、大阪弁のくだけた口調だったせいか、どこか町人としての雰囲気が強いです。一方で、三國連太郎が演じる千利休は、まさに戦国大名からも一目置かれる人物としての、重々しい存在感を体現していました。目は口ほどに物をいうという言葉どおりの、微細な表現が見どころです。

『嘘八百』/2018年1月5日(金)全国ロードショー/(c) 2018「嘘八百」製作委員会/配給:ギャガ

『嘘八百』では中井貴一が演じる古物商の小池が、佐々木蔵之介が演じる陶芸家の野田とともに、千利休が使ったと誰もが納得するような茶碗を作りあげようとします。ちなみに、茶碗にまつわる話はオリジナルのもので、武正晴監督によると「なにか本物に近い嘘の話をでっち上げて貰った」のだとか。 映画の舞台となった堺市出身の脚本家、今井雅子が学芸員などに取材し、作り上げたものだそうです。一方、千利休に関する説明は嘘と事実を混ぜ合わせていて、監督も今ではどれが事実だったか良く分からないというくらいに、リアルに作られているようです。

オークション会場の撮影は実際に使われている場所で行われており、映っている参加者も本物。登場する赤茶碗や黒楽茶碗なども、数百万円する本物ということなので、千利休と骨董品の世界を楽しく垣間見ることができそうです。

(文/デッキー@H14)