1月20日公開の映画『星くず兄弟の新たな伝説』は、手塚眞監督の商業デビュー作となった『星くず兄弟の伝説』(1985年)について、楽しい音楽と奇抜で自由なストーリーをよりパワーアップさせた作品。かつて大スターとして一世を風靡したシンゴが美容整形によって若返り、月での再ブレイクを目指して“ロックの魂”を探し求めるという物語です。

この作品でロックを描くために、手塚監督は1950年代からロックを歌っている内田裕也、1960年代からグループサウンズの先駆けだった井上順、そして1970年代に登場する夏木マリに出演を依頼しています。これによって1950年代から続く、ロックを代表する流れを表現できたとか。さらに渋谷系からは、野宮真貴も出演しています。

こうして名だたるミュージシャンたちが出演する『星くず兄弟の新たな伝説』ですが、本作のように豪華な共演が実現する映画は、音楽ファンにとって垂涎ものです。そこで今回は、過去に公開された“意外なミュージシャン”たちが出演した映画を厳選して3作品紹介したいと思います。

マイケル・ジャクソンのカカシが歌って踊る…『ウィズ』(1978年)

「オズの魔法使い」を原作にしたミュージカル映画『ウィズ』は、1974年にブロードウェイで上演された舞台を原作に、映画化したもの。本作では、ルーサー・ヴァンドロスら豪華ミュージシャンたちが作った楽曲を、クインシー・ジョーンズが音楽監督としてまとめています。

この映画でカカシを演じたのが、大スターになる直前のマイケル・ジャクソンです。歌も披露していますが、何よりもカカシとして踊るダンスに目を奪われます。カカシは藁でできているため、ときどき足首が重さに耐えきれず、クシャッと曲がってしまうなど、高度な技術を求められる動きも取り入れられています。若きマイケルが演じることでカカシのもつ純粋さが際立ち、まさにハマり役といえます。

一方でドロシーはダイアナ・ロスが演じていて、彼女とマイケルが一緒に踊り、歌うシーンは圧巻です。エメラルド・シティの一幕では、全長15メートルのグランドピアノをクインシー・ジョーンズがカメオ出演で弾いており、彼のファッションショーのような衣装からも目が離せません。

この映画でマイケルはクインシー・ジョーンズと出会い、彼のプロデュースによって「オフ・ザ・ウォール」、「スリラー」、「バッド」などが生まれていきます。この映画があったからマイケルはスターになったともいえる、いろいろな意味で貴重な作品です。

まさかのビヨンセ食いが話題に!…『ドリーム・ガールズ』(2006年)

2006年に公開された映画『ドリーム・ガールズ』は、女性グループ・シュープリームスの実話をモデルに、トム・アインが作ったブロードウェイ・ミュージカルが原作。デスティニーズ・チャイルド解散後のビヨンセが、ミュージカル映画で主演することが大きな話題となりました。

しかし、映画が公開されると一躍注目を集めることになったのが、物語の中心となるグループ・ドリーメッツのメンバーであるエフィでした。彼女を演じるジェニファー・ハドソンの歌声に映画の冒頭から引き込まれ、その自由奔放な言動など、一挙手一投足から目が離せなくなってしまいます。

いかにもミュージカル映画らしい重唱による“歌を使った喧嘩”でも、ビヨンセやジェイミー・フォックスを向こうに回して圧倒していました。特にどん底を経験した後のエフィの歌声は聴き応えがあります。

公開オーディション番組「アメリカン・アイドル」では7位に終わったものの、この映画のオーディションでは満場一致で選ばれたジェニファー・ハドソン。2006年度アカデミー賞助演女優賞を受賞するなど、名だたる映画賞で助演女優賞を総なめにしました。一躍スターの仲間入りを果たした、まさにその瞬間の彼女の姿を見ることができる映画です。

浜崎あゆみを取り巻く三角関係の行方は?…『渚のシンドバッド』(1995年)

歌手としてデビューする前の浜崎あゆみが出演した『渚のシンドバッド』は、高校の吹奏楽部が舞台。主人公の修司はゲイで、親友の浩之に恋をしていますが、そのことで周囲にからからかわれていました。そして、浜崎あゆみが演じる果沙音も、自己中心的な性格のためクラスで浮いた存在。そんな2人が、ある出来事がきっかけで、次第に交流するようになっていきます。

演出でもあるかと思いますが、果沙音のぶっきらぼうな口調、有無を言わさぬ響きのある声が彼女の性格をとてもよく表しています。この映画で浜崎あゆみという女優に注目した人もいたと思いますが、まさかその2年後に歌手としてデビューするとは、誰も思っていなかったことでしょう。改めてこの映画を観れば、浜崎あゆみに「女優としても活躍してほしい」と願う映画ファンは、少なくないのではないでしょうか。

『星くず兄弟の新たな伝説』/2018年1月20日(土)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー/(C)2016 星くず兄弟プロジェクト/公式サイト:stardustbros.com/出演:三浦涼介、武田航平/配給・宣伝:マジックアワー

『星くず兄弟の新たな伝説』では“ロックの魂”を探し求めるシンゴに対して、月の芸能界を支配する組織「フラッシュバブル」の女ボス・ベタール卑美子が刺客を送り込みます。ベタール卑美子を演じる夏木マリの衣装は、なんと自動車のタイヤから作られたもの。パンクで格好良いドレスですが、やはりかなり重たかったとか。その重さを感じさせない夏木マリの演技もすごいですが、彼女が自ら施したという印象に残るメイクも必見です。

手塚眞監督によると前作『星くず兄弟の伝説』は、元々ミュージシャンの近田春夫が発表した架空の映画サントラというコンセプトのアルバムから、実際に物語を作った作品だったとのこと。その制作では音楽やファッション、カルチャーの要素が取り入れられましたが、今回はさらに演劇としてのライブの要素を加えているそうです。

日本の音楽シーンをロックの視点から1950年代~現代まで網羅している、唯一無二の日本ならではの音楽映画。思わず口ずさんでしまうテーマ曲「星くず兄弟の伝説」も最高に格好良いですよ。

(文/デッキー@H14)