自分が死んだらどうなるのか? 天国と地獄のどちらに行くのか? 一度は妄想したことがあるかと思います。誰もが「地獄に落ちたくない」と思うのは当然のことですが、そもそも地獄とはどのような世界なのでしょう? 今回は映画の中に描かれてきた地獄の中から、詳細な描写が行われていたものを紹介したいと思います。

2度も地獄に落ちたキアヌ・リーブス…『コンスタンティン』(2005年)/『ビルとテッドの地獄旅行』(1991年)

キアヌ・リーブスはこれまでに少なくとも2回、映画の中で地獄に落ちています。その出演作が『コンスタンティン』と『ビルとテッドの地獄旅行』です。

2つの映画では地獄への行き方も、その光景も大きく異なります。『ビルとテッドの地獄旅行』では死んで幽霊になった後で、降霊会で呪文を唱えられたことで地獄行きに。そこは、ロックバンドを結成しているビルとテッドに引っかけたのか、メタル(鋼)を多用した世界でした。地獄の入り口はメタル製のデビルマスクになっていて、口の部分と死者が乗っている岩=ロックが鎖で繋がれています。コメディ映画として、遊び心が随所に散りばめられた地獄の姿です。

一方、『コンスタンティン』はアメコミが原作です。主人公のコンスタンティンは水に体の一部を浸すことで地獄へ行きますが、そこは強風が吹き、埃っぽく、高温の灼熱地帯。キリスト教の世界における、多くの人が想像するような地獄といえるでしょう。面白いのはこの地獄が現実世界と表裏一体の場所にあるということで、作中では地獄のロサンゼルスが描かれています。

さらに、両作品で地獄に住むキャラクターもそれぞれ個性的です。『ビルとテッドの地獄旅行』に登場する死神はゲームが大好きで、死者が勝ったら生き返らせてくれます。とはいえ、この死神がとにかく負けず嫌いで、自分が勝つまでゲームをやりたがる自己中な性格。主人公コンビと行動を共にすることで、そのキュートなキャラクターが明らかになっていきます。

また、『コンスタンティン』にはスーツ姿のダンディなルシファーが登場しますが、彼とコンスタンティンは愛憎の関係。『エイリアン3』でのリプリーとエイリアンの関係を思い出させます。どちらも負けず嫌いというのが面白いですね。

『コンスタンティン』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
TM&cDC Comics. Constantine c2005 Lonely Film Productions GmbH&Co.KG 3. Supplementary Material Compilation c2006, Package Design c2008 Warner Bros.Entertainment Inc. Passive Music Video c2005 Virgin Records America, Inc. Distributed Warner Home Video. All Rights Reserved.

人の罪の数だけオーダーメイドされる責め苦…『地獄』(1960年)

親に先立って死んだ子供がいく賽の河原、六道に続く迷い道など、日本人のイメージそのままの地獄が展開されるのが『地獄』です。三途の川を通り過ぎ、閻魔大王の前で首を刀で貫かれ逆さ吊りにされる主人公の四郎。照魔鏡には生前の悪事が映し出され、閻魔大王は彼に八大地獄の責め苦を言い渡します。

水責めにあい、血の池地獄に落ち、等活地獄で何度も蘇り果てしなく地獄の責め苦を受け……。個人の生前の罪に合わせて、ノコギリで轢かれる刑、皮を剥がれる刑なども用意されています。人の罪の数だけオーダーメイドで作られる地獄には、人間の想像を遥かに超えた責め苦が待ち構えているのです。

この映画の面白い部分が、物語の前半で現実社会における地獄のような人間関係が描かれていること。実は生きている時から現世そのものが地獄のような場所であり、そこには地獄の住人も驚くような悪質な人間がいるということを示唆しています。そんな現世からさらに過酷な本物の地獄へ落とされる様子を描くことで、思わず「罪を犯さないようにしよう」と考えてしまうような作品でした。

血の池のような温泉で一息…『大木家のたのしい旅行/新婚地獄篇』(2011年)

なぜか生きたまま行くことができ、1泊2日で帰ってくることもできるのが『大木家のたのしい旅行/新婚地獄篇』の地獄。「地獄ツアー」のチラシに惹かれた夫婦が、新婚旅行に行くというお話です。

この映画における地獄への行き方は、スーパーの屋上にある古びたバスタブに入ること。『コンスタンティン』にも似た描写がありましたが、地獄へ行くのに水を用いるというのは、世界共通なのかもしれませんね。

観光ガイドから「地獄に付いたら、道をまっすぐに歩き、後ろで何があっても振り返ってはいけない」と注意されるのは、黄泉の国に死んだ妻を取り戻しに行ったオルフェウスのギリシア神話を彷彿させます。ただ、後ろから聞こえてくるのが陽気なサンバの音楽というのが、地獄のイメージを完全に覆していますが……。

その後は、「地獄ツアー」ということで、地獄にあるホテルに一泊。レストランの食事の名物が地獄甘エビだったり、血の池地獄が温泉になっていたりと、地獄で観光業が営まれている様子が見られます。地獄の名所(?)を観光スポットにしてしまった、前田司郎の脚本には脱帽です!

地獄学校でロックバトルロイヤル!…『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)

地獄に落ちたら、再び人間に輪廻転生できるのか? そんな疑問の先をコミカルに描いたのが『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』です。

深紅に染まった空と炎、どくろが転がり、人々が責め苦を受けている姿……。そんな入り口を抜けた先にあったのは、『ビルとテッドの地獄旅行』の進化形といえる、ロックが支配する地獄でした。そこでは地獄ロックバトルロイヤル、通称ジゴロックが開催され、優勝すれば絶対に人間に転生できるのです。

作中では主人公の大助が地獄農業学校で鬼たちが食べる地獄米を作りながら、軽音学部に入部してジゴロック優勝を目指します。地獄に学校があり、その担任を鬼がしているというのは、なかなかシュールな光景です。

鬼といえばモジャモジャ頭がトレードマーク。ジゴロックで人間に転生したのは、オジー・オズボーンにジーン・シモンズとロック界のレジェンドといえる存在たちですが、そこに並んで葉加瀬太郎(??)や篠山紀信(!?)といった面々も……。その頭を見れば思わず納得してしまいますが、さすが目の付け所が宮藤官九郎監督といったところですね。

同作で脚本も手掛けた宮藤監督は、子供の頃に地獄が恐かったとか。多くの文献では地獄については詳しく書いてあっても、天国の描写がほとんどないことから、「本当は地獄の方が面白いんじゃないか?」という話を書いてみたかったと話しています。何よりも死ぬのが恐くなくなるような映画にしたいと思ったそうです。

映画の中に登場する地獄を5つめぐってみました。『地獄』では地獄のことを、“法の目を潜り抜けても、代わって刑罰を与える世界を、宗教の世界において夢想されたもの”としていましたが、空想の世界だけあってその姿はさまざまです。いずれにしても、こんな地獄が待っているなら死にたくないと思えるかもしれませんね。

(文/デッキー@H14)