26年振りに新シーズンが放映され、大きな話題を呼んだ「ツイン・ピークス」。アメリカの小さな町で起きた1人の美女の殺人事件を発端とするこのシリーズの魅力といえば、説明のつかないような不可解な事象を描いた超現実的な世界観ではないでしょうか?

(C) Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

この唯一無二のワールドを築き上げたのが、デヴィッド・リンチ監督。“カルトの帝王”として知られる彼に迫るドキュメンタリー『デヴィッド・リンチ:アートライフ』が1月27日から公開されます。本作の冒頭、「新しいアイディアを追求する時に、それを彩るのは過去だ」と述べるリンチ。そう、彼の過去が反映された作品が独特であるように、彼自身がかなりの変わり者なんです!

親もドン引き!自宅の地下に腐った動物の死骸を収集…

(C) Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

農林省の研究員を父に持つリンチは、幼い頃から父とともに虫の標本を作ることが習慣で、よく虫を解剖し、羽や脚、体の中身の精巧さに感動を覚えていたそうです。青年期を過ぎると、この行為はさらにエスカレートし、家の地下室でネズミの死骸が腐っていく過程を観察し、コレクションしていきます。

標本づくりを教えてくれた父親に、この地下室を嬉々として見せたものの、異様すぎる光景には思わず父親もドン引き! そのためか「子どもは持つな」とリンチにアドバイスしたそうです。

親元を離れて早々、2週間、家に引きこもる

(C) Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

高校を卒業すると親元を離れ、画家を志してボストン美術館付属美術学校に通うことになるリンチ。しかし、引っ越しを手伝ってくれた父親が、故郷に帰るのを見届けると、そこから入学までの2週間、家に引きこもり続けます。その間はひたすらラジオに耳を澄ませ、食事とトイレ以外では椅子から立つこともしなかったそうです。電池が減り、ラジオが途切れ途切れになっていても、耳を近づけて聞いていたんだとか。その理由は「何もしたくなかった。そういう時期だったんだ」。

さらに、美術学校時代には、ルームメイトとボブ・ディランのライブに行き、ステージのあまりの遠さに萎えて、中座。そのことでルームメイトと大喧嘩になり、部屋から追い出すなど、変人ぶりを遺憾なく発揮します。結局、学校に通うのは意味がないと感じて、すぐにやめることになってしまいました。

中退後、オーストリアを代表する画家オスカー・ココシュカの下で3年間学ぶため、意を決し渡欧しますが、わずか15日(!)で帰国。なんだかやる気があるのだか、ないのだか……。ちなみに帰国理由は「街が綺麗すぎるから」「マクドナルドが少なすぎるから」などと、マニアの間では囁かれています。

財団まで設立!「超越瞑想」を40年以上実践

(C) Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

「やることをすぐに変えすぎだろ!」とつっこみたくなる一方で、リンチは、『イレイザーヘッド』の製作に5年もの月日を費やしたり、8年間ほぼ毎日、ロサンゼルスの同じレストランで食事をし続けたというエピソードも持つほど、変態的なまでに1つのことに固執する一面も持ち合わせています。

そんなリンチがライフワークとし、長年続けているのが「超越瞑想」です。心の中でマントラを唱え続けるこの瞑想法を、彼は40年以上に渡り1日も欠かすことなく実践。学生、退役軍人、受刑者、PTSDに苦しむ人など、超越瞑想を必要としている人々が瞑想を学ぶことができるように経済的支援をするデヴィッド・リンチ財団まで立ち上げているんです。

凡人からしたら信じられないようなリンチのエピソードの数々。しかし、これらの行動はアーティスト、デヴィッド・リンチの純粋すぎる性格ゆえではないでしょうか。彼の頭の中を覗くような『デヴィッド・リンチ:アートライフ』。本作を見れば、これらのエピソードや彼の純粋な思いが、作品にいかに影響を与えているのかが分かることでしょう。

(文/ケヴィン太郎・サンクレイオ翼)