超モンスター級“痛男”をめぐる女たちの無様な恋愛と成長を描いた柚木麻子の小説を映画化した『伊藤くん A to E』。劇中、奔放に暴走し、5人の女たちを振り回す全女性の敵=伊藤を演じた岡田将生が、難役を演じるうえでの悦びと覚悟を語った。

確実に好意を持ってもらえないキャラ

Q:伊藤くんという特異なキャラクターの出演オファーを受けたとき、正直どのように思われましたか?

こういうキャラクターを僕にオファーしてくれたことがうれしかったです。自分もどこかで求めていた部分もあったので。今までは受け手側の役が多かったんですが、そうじゃないので自分でいろいろ試せるし、受け手のことも考えながらセリフも言えるし、絶対に楽しく演じられそうだと思いました。それにドラマの仕事が続いていたこともあり、映画の撮影現場に行けるのも楽しみでした。

Q:『雷桜』以来、7年ぶりの廣木隆一監督作に出演することに関しては?

こういう役ができるかもと考えてくださって、廣木さんが僕にお話をくれたのかな? と思ったら、なおさらうれしかったです。去年の舞台(「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」)を観に来てくださった監督が「お前、変わったなぁ」と言ってくださった後のタイミングでしたし、同じ監督にまた呼んでもらえるほど、役者としてうれしいことはないです。ただ『雷桜』とはまったく違うキャラクターを演じられる感謝と同時に、それなりの覚悟が必要でした。この映画を観たお客さんが「伊藤について好意を持ってくれるか?」というと、確実に持ってくれないキャラですからね(笑)。

Q:女性に対する酷い態度や裕福な家庭に育ったイケメンというと、『悪人』の大学生・増尾、『謝罪の王様』の軽薄なセクハラ男・沼田を思い起こしましたが、ご自身はどう思われましたか?

「攻めた役をやりたい!」と思っていたので、『伊藤くん A to E』のお話をいただけてありがたかったです。こういう役をやった後は周りからも「お前、楽しそうでいいな!」と言われているので(笑)。

すべてを見透かしている廣木監督

Q:10分間を1カットで、台本10ページ分の膨大な量のセリフをしゃべるという、クライマックスの独白シーンの撮影の感想は?

あのシーンは、前から廣木さんに「1カットで行くから、そのつもりで」と言われていたんですが、ほかのシーンも長回しが多かったので、当日まであまり意識はしていませんでした。当日は昼から段取りして、2時間ぐらい空いて、本番は一回勝負。その空き時間に、廣木さんから「ネチっこく淡々とやった方がいい」と言われましたが、どうしても感情が高まりがちになるので、それに逆らって抑えていくのが大変でした。一発撮りならではの、奇跡的な光の加減や空気感も出て、緊張感のあるいいシーンになったと思います。

Q:カットがかかった直後に、共演の女性キャストから「気持ち悪い」という言葉を浴びせられたこともあったようですが、そこまでドン引きさせるキャラクターを演じたことについては?

クライマックスは女性が観ると、相手の莉桜(木村文乃)目線になるので、ドン引きするとは思いますが、伊藤が言っていることも決して間違いではない。彼が何かにすがっている感じを一瞬でも汲み取ってもらえればいいと思います。伊藤は伊藤なんで(笑)。共演者の中でも、志田未来ちゃんは休憩中も僕を警戒しているような感じでしたが、僕は楽しかったし「気持ち悪い」は最高の誉め言葉だと思うんです。でも、いざ言われるとどこかで傷ついている自分もいました(笑)。

Q:そのほか、久々に廣木組に参加した感想を教えてください。

『雷桜』のときは、廣木監督になかなかOKを出してもらえなかったんです。でも、今回はあまりテイクを重ねることもなくて、僕の方から「なぜですか?」と聞きに行ったぐらい。当たり前ですがその分1テイク目に懸ける集中力がかなり必要でした。自分ではスキルアップしたと思いたいところですが、廣木さんに若い頃の自分を知られている分、すべてを見透かされている気がしてどこか怖かったです。

世代別による遊び方の違い

Q:ドラマ「ゆとりですがなにか」では、ゆとり世代を演じられましたが、伊藤は次の「さとり」「うつむき」と呼ばれる世代。岡田さんも先輩や後輩とのジェネレーションギャップを感じることはありますか?

二十代前半の下の世代の子たちはみんなスゴくしっかりしているんです。だから、自分ももっとしっかりすればよかったと反省しています。だから、後輩ではなくて、仕事仲間という感じ。そして、僕より上の三十代前半の先輩たちは、みんなすごくパワフルですね。

Q:よくお付き合いされている後輩はいますか?

神木隆之介くんはどこか遊び心を持っている子で、彼おススメのゲームセンターやボーリング場に連れて行ってもらって、ずっと2人で遊んだりもしています。「これはこうやるんだよ!」と僕に一生懸命教えてくれる姿はかわいいし、年下でありながら、同級生みたいな感じがします。

Q:ちなみに、「ゆとりですがなにか」で共演された松坂桃李さん、柳楽優弥さんとの交流は?

もちろん連絡を取り合っていますが、彼ら同世代と遊ぶときは、基本夜ご飯を食べながらなので、まずは神木くんのように真っ昼間に会うことはないです(笑)。でも、神木くんと会っているときも、「ゆとり」のメンバーとご飯を食べているときも、仕事の話はほとんどしないんです。たとえば、4時間一緒にいるうちで、「こんなことがあった」というそれぞれの報告を15分ぐらい。そのほかは、ホントにくだらない話ばかりしています(笑)。

取材・文:くれい響 写真:杉映貴子