凍えるような寒さが続くこの時期、ふと暖かいラーメンが食べたくなり、気が付くとお店の暖簾をくぐっている……。こんな経験を誰もが一度はしたことがあるかもしれません。

中国を起源としながらも、独自の進化を遂げ、日本の国民食となったラーメン。もはや食事という枠組みを超えたカルチャーとして世界の注目を集めていますが、そんな日本特有の文化に迫ったドキュメンタリー映画『ラーメンヘッズ』が1月27日より公開されます。

キング・オブ・ラーメンの真髄に迫るドキュメンタリー『ラーメンヘッズ』

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作り手や客に1年以上に渡り密着し、ラーメンへの深い愛情に迫っていく本作、タイトルの「ヘッズ」とは、英語のスラングで「マニアを超えた」という意味を持ちます。カメラは、そんなヘッズたちを熱狂させ、業界最高権威といわれるTRY(Tokyo Ramen of the Year)の大賞を4年連続で獲得した名店「中華蕎麦 とみ田」の代表・富田治を中心に追っていきます。

映画で、なんと富田はラーメンのスープの材料をすべて明かし、惜しげもなく日本一のラーメンの秘密を暴露してしまいます。「え!? そこまで教えちゃっていいの?」と観ているこちらが心配になってしまいますが、彼は言い放ちます。

「“企業秘密”なんていうのは、たいしたことをやってないから見せられないだけ。うちに隠すものなんてありません」。確固たる自信がにじみでた表情の富田ですが、まるで修行僧のようなラーメン漬けの生活を知ればその自信にも納得がいきます。

人生のすべてをラーメンに捧げるストイックすぎる男の姿

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自家製麺の出来を己の手で確かめたり、茹で時間を秒単位で調整したりと、長年の経験と並々ならぬ情熱でラーメンと向き合う富田。時には弟子へ厳しい叱咤をし、接客へのきめ細やかな心配りを見せ、ラーメン自体だけでなく、ラーメン店としての在り方にも強いこだわりを見せます。

彼のストイックぶりは、店の外でも止まりません。たまの休日だというのにやることは、リサーチのための他店巡り。さらに妻、3人の子どもとの外食する時も足を運ぶのは、なんとラーメン屋! プライベートの時間を割いてまでラーメン漬けの生活を送るその徹底ぶりには、開いた口が塞がらないことでしょう。

どうしてそこまでするのか? 劇中、富田はこう言い放ちます。「ラーメンほど熱狂的な信者のいる食べものはない。そのラーメンバカたちを魅了するには、作り手もそれ以上のラーメンバカじゃないといけない」。その言葉通り、映画内で描かれるどんなヘッズよりも、富田は狂っていたかのように思われます。

売り切れを告げられグッタリ…至高の一杯を求める熱狂的すぎる客たち

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そんな富田が作る究極の味を求めようとするヘッズたちの姿も映画では描かれます。富田を含む3人の巨匠たちが一日限定200食のコラボラーメンを開発すると、この至高の一杯を求めてヘッズたちが大集合。整理券が配られるのは朝7時からなのに、なんと前夜10時の時点で軽く200人を超えてしまいます。

勇んで店に駆けつけたある男性は、従業員から限定ラーメンの“売り切れ”を告げられると膝から崩れ落ちます。「嘘だろぉ~」と消え入るような声をあげながら、本気で悔しがる男性……。作り手と同じように客もラーメンに全てを懸けているのです。

「新しい宇宙体験だ!」日本のラーメンが海外の美食家をも魅了!

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『ラーメンヘッズ』は、カナダ・トロントで開催された北米最大のドキュメンタリー映画祭「HOT DOCSカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭」をはじめ、オランダ、ノルウェー、アメリカと、世界の映画祭で上映され、各地で高い評価を獲得しました。

9月にスペインで行われたサン・セバスチャン映画祭では、監督と共に現地に招待された富田自身が、上映後、観客にラーメンを振る舞う一幕も。少しでも日本で作るラーメンに近いものにしようと試行錯誤を重ねた富田のラーメンは、スペインの美食家をも唸らせ、「新しい宇宙体験だ!」と感激の声が寄せられたといいます。

理想の一杯を追い求め、妥協せず極限まで突き詰めていく人たちの生き様が描かれる『ラーメンヘッズ』。ラーメンが国民食と呼ばれ、世界的な人気を獲得した理由がこの映画に隠されているのです。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)