1月27日から公開となる『殺人者の記憶法』は、韓国の人気作家、キム・ヨンハの同名小説の映画化作品です。『力道山』(2004年)などで日本でも知られる俳優ソル・ギョングが、本作では演技派の面目躍如の演技を披露! カメレオン俳優と称されるにふさわしく、特殊メイクなしで老人にみえるよう10キロ以上痩せたその姿にも驚かされる1作です。そして、もうひとつ驚きなのが本作のストーリー。元殺人鬼と現役殺人鬼が対決するという構図の、異色なクライム・サスペンスなのです。

犯罪映画でも珍しい“犯罪者vs犯罪者”

主人公のビョンスは、獣医として動物たちを救う一方で、たとえばDV男など、社会のクズと自らが判断した人間を次々と殺害していきました。しかし、彼はアルツハイマーを発症し、その記憶もどこか欠けていきます。

ところが、偶然にも警察官ながら殺人犯という裏の顔を持つテジュと遭遇し、忘れていたはずの殺人の記憶が甦ります。こともあろうか、テジュはビョンスの正体に気づき、彼の愛娘に接近。こうした形で元殺人鬼のビョンスと現役殺人鬼のテジュという“殺人犯同士の対決”という構図が作られていきます。

クライム・サスペンスや刑事ドラマでは、“犯人vs警察もしくは探偵”というのが定番の構図です。それに比べ、ヤクザ映画やギャング映画を除くと、意外と“犯罪者vs犯罪者”は少ないのです。ここでは、『殺人者の記憶法』とともに押さえておきたい、掘り出し物的な作品を紹介します。

『マッドボンバー』では、爆弾魔と強姦魔が対決!

日本の北村龍平監督がアメリカで制作した『NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ』(2012年)は、ある町にやってきたカップルが強盗団の襲撃に遭い、女性の方が死亡。残された男性が、実は連続殺人犯だったことから、殺人鬼vs強盗団という犯罪者同士の対決が展開していきます。

さらに、2009年のB級ホラー映画『ワナオトコ』は、金庫破りの男がある邸宅に侵入。しかし、邸宅には先に侵入者がおり、彼が家に数々の残虐な罠を仕掛け、痛めつけた上で人間をコレクションする狂気の人物であったことから、予想もしない犯罪者同士の死闘が描かれます。

また、1973年製作のアメリカ映画『マッドボンバー』は、ロサンゼルスの公共施設を次々と爆破していく爆弾魔と、女性を犯すことでしか性的カタルシスを得られない強姦魔が対峙。もう映画でしかありえない、同じ犯罪者でもまったく異なる思考をした狂人同士の死闘が描かれています。

これらを並べて思うのは、犯罪者vs犯罪者の構図はいわば黒と黒の対決。敵と味方に簡単に区別できない分、勧善懲悪には絶対にならない。どちらが制裁を受けるのか最後まで予測できないおもしろさが、物語に生じる傾向があるのかもしれません。そして、犯罪者同士が対峙すると血も涙もなく、温情も一切なし。容赦のない闘いが繰り広げられます。そんな悪と正義の対決にはない面白さを持つ“犯罪者vs犯罪者”映画を、この機会にチェックしてみてはいかがでしょうか?

(文/水上賢治@アドバンスワークス)