1月27日に公開される『祈りの幕が下りる時』は、東野圭吾の人気ミステリー「加賀恭一郎シリーズ」第10作の映画化作品。このミステリーは阿部寛の主演による「新参者」シリーズとして、これまでにドラマや映画『麒麟の翼 ~劇場版・新参者~』(2012年)として映像化されてきました。今回公開される新作は、その完結編にあたる作品となります。

本作でメガホンをとったのは、数多くのドラマをヒットに導いてきた福澤克雄監督。“視聴率請負人”や“もっとも視聴率のとれる監督”と囁かれているディレクターであり、ドラマ不況といわれる現在において、社会現象を巻き起こすほどのヒット作品を生み出し続けてきた実力の持ち主です。

今回は、そんな福澤監督が生み出してきた名シーンを紹介。このラインナップを見れば、その非凡な才能を垣間見ることができるでしょう。

ドラマ史に残る長回しの土下座シーン…「半沢直樹」

2013年に瞬間最高視聴率46.7%という数値を叩き出した、TBS系ドラマ「半沢直樹」。この作品で福澤監督は、序盤の第1話から4話、6話、そして大詰めの第9話と最終回の第10話の演出を担当しました。

中でも、その演出が印象的だったのが最終回。半沢直樹と大和田常務が直接対決した会議室でのシーンでしょう。半沢直樹を演じた堺雅人の長台詞と、大和田常務役の香川照之のなかなか意を決しない土下座。この緊張感たっぷりの一幕は、ハッキリいってとてつもなく長いです! しかし、それだけに香川が床に膝をついたところでの爽快感は素晴らしいものでした。このシーンのトータル時間は25分という、ドラマ史に残る長回しでした。

最後のどんでん返しをパワーアップさせた名演出…「華麗なる一族」

「華麗なる一族」は2007年にTBS系で放送された、山崎豊子の同名小説を原作としたドラマです。福澤監督は本作ではプロデューサーも兼任しています。

この小説はかつて何度も映像化されてきました。しかし、これまで原作も含めて阪神銀行頭取の万俵大介を主役としたストーリーだったところを、大介の長男である鉄平にフューチャーした点は、一種の改革といってよいでしょう。

木村拓哉が演じる鉄平は、北大路欣也演じる父親の大介に「本当は自分が実の息子ではないのでは?」と疑念を抱いていました。その想いは第8回で爆発。鉄平は大介に「お父さん、僕はあなたの子供ではなく、祖父と母との……」と詰め寄ってしまうのです。母である寧子が暗にその事実を認めてしまったことで、2人の絆は絶することになります。

“鉄平と大介に親子関係はない”と事前に思わせたことで、最後のどんでん返しの衝撃が際立ちました。だからこそ、鉄平の死があまりに痛ましい悲劇として感じられ、視聴後の余韻も強まったのです。

原作の語り口調を大切に、名セリフを盛り上げる…「陸王」

2017年にTBS系で放送された記憶も新しい「陸王」。池井戸潤原作の作品として放送前から話題をよび、最終回の視聴率は20%を超えました。近年のドラマ界においては大健闘といえるでしょう。福澤監督の“視聴率請負人”の伝説は、またしても更新されたようです。

福澤監督が担当した第2話に、印象的なシーンがありました。寺尾聰が演じる倒産した飯山産業の元社長が、マラソン足袋の開発に参加を決めたシーンです。「本当のプライドってのは、看板でも肩書きでもない。自分の仕事に対して抱くもんなんだ」という原作でも有名な名セリフ。これを熱く語らせるのではなく、敢えて不愛想に語らせることで、自分の商品への愛情を巧みに引き出しています。

実は本作では過去に福澤監督が演出をした池井戸潤作品とのコラボが、密かに行われています。例えば、第9話では茂木選手のゼッケンに、大会スポンサーとして「下町ロケット」に登場する帝国重工の名前が。最終回ではこはぜ屋のメインバンクが、「半沢直樹」に登場する東京中央銀行になっています。さらに、「ルーズヴェルト・ゲーム」に登場するジャパニクスに陸上部があることも判明しました。こうした遊び心も福澤演出の面白味といえるのではないでしょうか。

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会/2018年1月27日 全国東宝系にてロードショー

視聴者の心に残る、数々のドラマ名シーンを生み出してきた福澤監督。『祈りの幕が下りる時』では、主人公の刑事・加賀恭一郎の父との確執、母の失踪など、これまで語られることのなかった謎が明らかになります。一体どのような物語の展開の中で、この謎が解き明かされるのか? シリーズ完結編ならではの演出に期待したいですね。

(文/岸とも子@H14)