昔よく通っていたお店に久しぶりに行こうとしたら、覚えていた場所と全然違っていたなんてことありますよね。行動のよりどころとなるものなのに、簡単に揺らいでしまう記憶。そんなスリリングな不確定さが、実は映画ととっても相性が良く、これまでにも数々の作品が作られてきました。

そこで今回は、1月27日から公開される『殺人者の記憶法』とともに、その設定を上手く生かし、予想外の結末にあっと驚かされる「記憶を題材にしたサスペンス映画」を3作品紹介します。

クリストファー・ノーラン監督による記憶映画の金字塔…『メメント』(2000年)

まず記憶にまつわる映画ではずせないのが、今年、戦争映画『ダンケルク』でアカデミー賞に期待がかかるクリストファー・ノーラン監督の出世作となった『メメント』です。妻を強姦・殺害した暴漢に襲われ、短期記憶障害になった男が、復讐のため犯人捜しに執念を燃やす本作。時系列を入れ替え、時間をさかのぼるという逆再生のような構成が、物語をより複雑でスリリングにしています。

復讐に燃える主人公レナードは、10分間しか保持できない記憶をつなぐため、ポラロイド写真をとり、重要なヒントを自らの体に入れ墨してメモに残していきますが、その刹那的な姿も作品の異質感を高めています。レナードの肌に残された、犯人とおぼしき“ジョン・G”とは果たして誰を指すのか……。写真や肌に遺されたレナードの“記憶”を軸に、登場人物たちの利害と復讐が渦巻く驚愕のストーリーは、サスペンス好きなら一見の価値ありです。

脳を移植された男をケビン・コスナーが怪演!…『クリミナル 2人の記憶を持つ男』(2016年)

もし他人の脳を移植したとしたら……?  そんな神の領域に踏み込み、世界を揺るがすテロの脅威を、緊迫感みなぎる迫力で描いたのが『クリミナル 2人の記憶を持つ男』です。

核兵器を含めた米軍の軍事兵器を遠隔操作できるという謎のハッカー・ダッチマン。彼と交渉を重ねていたCIAエージェントのビル・ポープは、ダッチマンを利用しようとするテロ犯に囚われ、非業の死を遂げてしまいます。もはや一刻の猶予も許されない状況で、CIA支局長クウェイガーは、脳外科手術でポープの脳を悪辣な死刑囚ジェリコ(ケビン・コスナー)に移植し、ダッチマンの居所を探ろうとするのですが……。

本作のキモとなるのは、“脳を移植したら、他人の記憶や人柄、さらには愛する人への想いも継承できるのか”ということ。正義と悪、相反する記憶を抱えながら、自己のアイデンティティを模索するジェリコの葛藤が物語に厚みを与えています。移植された脳の記憶が消滅するのは48時間。タイムリミットが迫る中、テロリストとの壮絶な戦いに身を投じるジェリコ、そして戦いを終えた彼の身に起きる予想外の結末は必見です!

元殺人者 vs 連続殺人鬼が激突するクライムスリラー…『殺人者の記憶法』

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そして最後に紹介するのが、アルツハイマーの元殺人犯と連続殺人鬼が激突する『殺人者の記憶法』です。

アルツハイマーのビョンスは、車で走行中、消えゆく記憶を音声レコーダーに録音しようとして追突事故を起こしてしまいます。相手の車の荷台から血がしたたるのを見て、その車の運転手テジュが世間を騒がせている連続殺人鬼だと直感で悟るビョンス。テジュと出会ったことで、大勢の命を奪った過去の習慣が呼び覚まされ……。

「頭は記憶を失っていくが、私の手は殺人を覚えている」というビョンスの不穏なセリフや、妄想と現実が目まぐるしく入れ替わるスピーディな展開。連続殺人鬼の正体すら確証がなくなるほどビョンスの記憶があやふやになっていく中、真実が見えないもどかしさでハラハラは最高潮に! 記憶が曖昧になるにつれて、顔を出すビョンスの殺人者としての危うさを見事に表現した“韓国のカメレオン俳優”ソル・ギョング。彼の演技が引き出す予測不能な結末には、誰もが騙されることでしょう。

儚いけれど尊い記憶。だからこそ、そこに幾多のドラマが生まれます。いつの間にやら“思い込み”や“ねつ造”が、事実とすり替わるスリルや、記憶の曖昧さが導く衝撃的な結末は、まさにサスペンス映画の醍醐味と言えるでしょう。記憶の不確定さという、誰もが経験したことのあるような題材だからこそ、観るものを惹きつけてやまないのかもしれません。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)