カズオイシグロ原作のドラマ「わたしを離さないで」で演じた過酷な運命の主人公役や、日本アカデミー賞(優秀主演女優賞)に輝いた映画『海街diary』(2015年)での複雑な事情を抱える三姉妹の長女役など、従来のコメディエンヌぶりに加え、近年はさまざまな新しい顔を見せている女優・綾瀬はるか。

昨年のドラマ「奥様は、取り扱い注意」では、彼女のおっとりとしたイメージとは真逆の華麗なアクションでお茶の間を驚かせましたが、2月10日から公開予定の『今夜、ロマンス劇場で』で、これまた新境地となる“上から目線でツンデレなお姫様”をキュートに演じています。

映画の中から出てきたお姫様と映画青年が恋に落ちる!?

(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

『今夜、ロマンス劇場で』は、モノクロ映画のヒロイン・美雪(綾瀬)と映画監督を目指す青年・健司(坂口)が、一生に一度の恋をする切ないラブ・ファンタジーです。映画館の片隅で眠っていた古いモノクロ映画の魅力的なヒロイン・美雪に恋をした健司。1人で映画を見ていると、突然、激しい雷鳴が……。すると目のまえに、現実世界へと舞い降りた美雪が現れます。

色彩豊かな現実世界で、映画から出てきたままの全身モノクロの美雪はかなり異質ですが、そんな違和感も吹き飛ばすほど、綾瀬扮する美雪は美しくてエレガント。その佇まいからは、どんなに清純で、可愛らしいお姫様なのかと思いきや……。

坂口をしばきたおす!? お転婆で世間知らずな“お姫さま”で新境地を開拓!

突然憧れの女性が目の前に現れた健司は、動揺しつつも美雪に近づいていきます。すると我に返った美雪は、健司の頭をスパーンと引っ叩き、「無礼者!」と一喝するのです。彼女は冒険活劇の世界に生きるお転婆な“お姫さま”。失礼なことをする不届き者には、容赦なく制裁を加えてしまうのも無理はありません。

また、その後も美雪は自宅に匿ってくれる健司に対して、「今日からお前は私のしもべだ」と家臣になることを決定事項として宣言したり、橋の欄干を歩く健司を押して川に突き落としたり、ペンキを健司にぶちまけたりと、Sな行動を連発。上から目線で健司を翻弄していきます。口調も優雅さを帯びており、綾瀬がこれまでに演じることの多かった、どこか抜けたところのある役柄とは正反対で、新鮮味を感じさせます。

ファンタジーの世界から来たSキャラ・ヒロインは、綾瀬はるかのハマり役!?

(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

本作の前半は、映画愛を軸に、ファンタジーの世界から来たヒロイン美雪と健司のドタバタや淡い恋がユーモア満載でつづられます。しかし後半で美雪が重大な秘密を告白すると、物語は急転直下。身分違い×次元違いの2人の恋は、胸が張り裂けるような切ない展開へ……。綾瀬は、そんなコメディから切ないラブロマンスへの転調を難なく飛び越え、毅然としたお姫様としてスクリーンに居続けます。

実は本作、『ハッピー・フライト』(2008年)で綾瀬のコメディエンヌぶりに魅せられたプロデューサーが、「彼女の魅力をフル活用できるような映画を作りたい」と考えた企画。綾瀬にはお姫さま役が最適と直感し、9年越しで完成させたオリジナルストーリーなのです。その予想通り、ファンタジックなお姫さま役は、独特の世界を持つ彼女にぴったりのこれ以上ないハマり役と言えるでしょう。

芸能界デビューから17年。これまでに綾瀬は、お馴染みのラブコメ以外にもサイボーグ役や、故・勝新太郎や北野武も演じた座頭市に扮したことも。またNHK大河ドラマの主役や、紅白歌合戦で紅組の司会にまで抜擢されるなど、着実に進化をし続けています。アクション、ロマンス、ファンタジーが盛り込まれた最新作『今夜、ロマンス劇場で』には、そんな進化を続ける国民的女優の魅力が、ギュギュギュっと詰まっています。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)