巨匠ティム・バートンが「ふしぎの国のアリス」を独自の解釈でアレンジし、日本でも話題となった冒険ファンタジー映画『アリス・イン・ワンダーランド』シリーズは、おそらく記憶に新しいところではないでしょうか。しかしこうした伝統的な物語の改編は、今に始まったことではありません。おとぎ話は古くから、口承で語り継がれるたび、本として出版されるたび、戯曲化などのさまざまな機会を迎えるたびに、原型を離れ、新しい作品として生まれ変わってきました。

それは映画化においても同じこと。今回はおとぎ話をベースとし、そこに思い切ったアレンジを加えて、原作とはまた異なる面白さを引き出した名作映画を4つご紹介します。

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野獣のような醜い姿に変えられたモテモテ男子高校生の反省劇…『ビーストリー』(2011年)

日本でもディズニーアニメをきっかけに広く知られるところとなった童話「美女と野獣」。魔女によって姿を野獣に変えられた横柄な王子が、自己改革を決意し、真実の愛を探す物語です。そんな珠玉のラブファンタジーを、「本当の美しさは内面にある」というテーマはそのままに現代のハイスクールに甦らせたのが『ビーストリー』です。

原作で小国の王子だった主人公は、わがままで自意識過剰だけど、ルックスの良さでつぎつぎと女性のハートを射止めるモテモテ高校生カイルとなって登場。ある日カイルは調子にのって、学内で“魔女"と噂されるケンドラに心ない仕打ちを与えたことをきっかけに、自慢の容姿をイケメンとは程遠い、ビーストリーな(獣のような)姿に変えられてしまいます。

1年以内に人格を愛してくれる人を見つけなければ永遠にビーストリーのまま、という過酷な運命を背負ってしまったカイルは、失意のうちに自身の内面と向き合い始めます。そんな日々の中で、彼の望みとなっていくのが、かつて目にも止まらなかった慎ましやかなリンディ。彼女がいわゆる「美女」の存在です。

特殊メイクではありますが、スキンヘッドにタトゥ&傷だらけという衝撃的な変貌を遂げるアレックス・ぺティファーの身体の張りっぷりは必見です。『ハリー・ポッター』シリーズ最大の難敵であるヴォルデモートや『オペラ座の怪人』の怪人エリックを彷彿とさせるおどろおどろしく奇怪な姿には、度肝を抜かれるはずです。

また、人気ドラマ「フルハウス」(1987〜1995年)のミシェル・タナー役で一躍名を馳せたオルセン姉妹の妹、メアリー=ケイト・オルセンが演じるケンドラ、そして美女の存在・リンディを「ハイスクール・ミュージカル」(2006年)で圧倒的な存在感を示したヴァネッサ・ハジェンズが演じるなど、華やかなキャストがそろったところも見どころです。

ハリウッドの豪華俳優陣が魅せる!白雪姫と継母の死闘…『スノーホワイト』(2012年)

ヨーロッパのプリンセス・ストーリーのなかでも最も知名度が高い物語のひとつである「白雪姫」。おそろしい継母の妬みから逃れて小人たちと森のなかで平穏に暮らしていた姫が、みすぼらしい物売りに化けた継母から毒りんごを食べさせられて仮死状態に至るも、王子様のキスでめでたく息を吹き返す……という筋をご存じの方も多いはず。

そんなロマンチックなおとぎ話の王道が大胆にブラッシュアップされ、白雪姫と女王が死闘を繰り広げるアドベンチャームービーに生まれ変わったのが『スノーホワイト』です。原作では武器を手にすることすらあり得ない白雪姫ですが、映画の中では高度な戦闘能力とサバイバル術を身に付けた女闘士へと進化を遂げ、果敢に悪と闘います。

『トワイライト』シリーズで世界中に多くのファンを獲得したクリステン・スチュワートが、本作では血気盛んな白雪姫ことスノーホワイト役を体当たりで熱演しています。さらに、シャーリーズ・セロンやクリス・ヘムズワースといった豪華俳優陣が脇を固め、ベースとなった「白雪姫」とは良い意味で生まれ変わった、見応え充分のアクション大作に仕上がっています。

赤ずきんちゃんのあの妙な不気味さを繊細に映し出す映像美…『狼の血族』(1984年)

数あるグリム童話の中でも定番の物語として、日本でもよく知られる「赤ずきん」。主人公の赤ずきんちゃんは、三つ編のおさげ髪に真っ赤な頭巾、愛らしさ満点のエプロンドレス、片腕に提げた籠といった愛らしい容姿をイメージすることでしょう。

しかし『狼の血族』では、その主人公の愛らしさとはうらはらに、ストーリーは始めからおわりまで延々と不気味。欝蒼とした森、その中を一人で歩く小さな女の子、あとをつけ狙う狼……そんな気味悪さを丁寧に抽出し、哲学的解釈を加え、新趣向のホラー作品として再構成しているのです。

監督は、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年)のニール・ジョーダン。思春期の少女が胸に秘める性への恐れと憧れを、少女の見る夢そのままのごとき幻想的な映像美の中で見事に描きました。アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞し、ジョーダン監督の名を世界に一躍高めた作品となりました。

ゴージャスでエキセントリック!人魚の姉妹の血みどろの恋模様に胸がドキドキ…『ゆれる人魚』

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アンデルセン童話の傑作の1つが「人魚姫」。悲恋の果てに海に身を投げ泡となって消滅する人魚の乙女のイメージは、きっと多くの人の知るところでしょう。そんな儚く切ない異類婚姻譚の代表作を、あっと驚くアレンジで書き換えたホラーミュージカル映画がポーランドにて誕生しました。それが2月10日(土)より日本公開される『ゆれる人魚』です。

人間界に興味を抱いて海から上がった肉食の人魚姉妹が、ナイトクラブで唄い踊り、不吉で血生臭い恋を経験しながら成長していく様子を描いた本作は、まさにダークでロマンチックな大人のおとぎ話。批評家たちにも高く評価され、サンダンス映画祭2016のワールドシネマコンペティションドラマ部門においては、審査員特別賞を受賞しました。

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ニューヨークタイムズ紙が「デヴィッド・リンチの初期映画か80年代ミュージックビデオのよう」と評した妖しくキテレツな世界観は、日本の多くの映画ファンにも是非体感してほしいもの。『ゆれる人魚』は、2月10日(土)より、新宿シネマカリテほかにて全国順次公開。

(桃源ももこ@YOSCA)