2月10日公開の『悪女/AKUJO』は、犯罪組織の殺し屋として育てられた少女スクヒの物語。彼女は育ての親に恋心を抱くものの、愛と裏切りに翻弄されて、やがて最強の殺し屋へと成長していきます。

映画には時に凶悪すぎる女殺し屋が登場しますが、そんな彼女たちも日常では恋人や子供に穏やかな表情を見せ、それが彼女たちの魅力をたまらなく引き立てています。今回は中でもオン・オフのギャップが激しい女殺し屋を紹介したいと思います。

ときには恋人のシャツを抱きしめて安らぎを得る、冷酷な復讐者…『コロンビアーナ』(2011年)

幼い頃にマフィアに両親を殺され、復讐を遂げることを誓った少女カトレア。それから15年後、殺し屋として美しく成長した彼女の姿を描いたのが『コロンビアーナ』です。

復讐への想いに突き動かされるカトレアは、ターゲットを淡々と始末していきます。その殺しの手口は冷酷で、ときに大胆です。拘置所にいるターゲットを殺すために、わざと警察に逮捕され、殺害後に何食わぬ顔で自分の牢屋に戻る。その姿はまさに“プロの殺し屋”そのものでした。その一方で、番犬に仇敵を食い殺させるなど、時には復讐にかける怨念めいた想いをのぞかせることもあります。

そんな彼女も画家の恋人と過ごす時はロマンチック。部屋を無数のキャンドルでデコレーションし、情熱的にベッドで愛し合います。しかし、正体を明かすことができないため、いつも恋人が目覚める前に彼女は姿を消すのでした。部屋から去ろうとする時に見せる表情はとても悲しげで、復讐を忘れられない彼女の業の深さを感じさせます。

恋人がいないあいだに部屋に上がり込んだときには、彼の着ていたシャツを抱きしめ、匂いを嗅ぎ、安らぎの表情を見せるのも印象的です。気の休まることのない殺し屋としての生き方と、年相応の女性としての生き方のギャップに苦しむカトレアの哀愁が見て取れます。

はじめての友達と過ごす時間に夢中になる、16歳の女殺し屋…『ハンナ』(2011年)

『ハンナ』に登場する少女ハンナは16歳の美少女。人里離れた山奥で育ち、物心つく前から父親に格闘やサバイバル術、複数の言語を仕込まれ、一流の殺し屋や工作員としてのスキルを身に着けています。

一見すると年相応にかわいらしいだけに、敵に捕らえられると泣きマネをしながら抱き着いた瞬間、首をひねって殺害するなど、その殺しのシーンでは凶暴性が際立ちます。最大の敵であるマリッサとのシーンでも、まるで山奥での狩りを彷彿とさせるような残忍さを見せ、淡々とした口調、人ではなく獲物を見るような表情が、彼女の恐ろしさを伝えています。

そんなハンナも同世代の女の子ソフィーと出会うと、年相応の姿を見せるようになります。音楽を聴き、化粧をして、ベッドでおしゃべりをするなど、ごく普通の女の子としての生活に夢中です。

ソフィーにおやすみのキスをする姿からは、同世代の友人がいることに対する安堵感が見て取れます。冷酷な殺人マシーンである彼女が、10代の少女である自分に気づく。そんな彼女のギャップと成長が見ていて楽しい作品です。

得意料理はレモンパイ、そして人を…『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)

『ロング・キス・グッドナイト』では、過去に殺し屋だったサマンサが記憶を失い、身元不明の状態で発見されます。時は流れて、彼女は学校の教師として、家族と幸せな第二の人生を過ごしていました。得意な料理はレモンパイ。しかし、次第に過去の記憶が戻ると、包丁さばきがうまくなったり、急に言葉使いが悪くなったりするように。「昔は料理人だったのかな?」と悩む彼女の姿はどこかコミカルです。

やがて、彼女の過去が敵を呼び込みますが、かつて身に着けていた殺しのスキルは失われることなく、首を折るなどして残虐に相手を撃退します。血にまみれたレモンパイのクリームをなめ、「プロの味」とつぶやく姿には、平凡な主婦と残虐な殺し屋が同居していました。

その後、サマンサは殺し屋チャーリーとしての記憶が復活。髪を短く、ブロンドに染め、スタイリッシュな殺し屋然とした姿に変貌します。残虐性にも磨きが掛かり、容赦なく敵を殺すように。しかし、ひとたび娘が人質に取られると、腹部をナイフで刺されながらも娘を助けようと傷つき、血まみれになりながらも奮闘します。その姿からは歴戦の殺し屋としての強さではなく、子供を深く愛する母親の強さが感じられました。

『悪女/AKUJO』/2018年2/10(土)、角川シネマ新宿ほかロードショー!/(c) 2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & APEITDA. All Rights Reserved.

2017年に日本でリメイクされて大ヒットした『22年目の告白 -私が殺人犯です-』。その原作となる『殺人の告白』を手掛けたチョン・ビョンギル監督の最新作が、『悪女/AKUJO』です。

ヒロインのスクヒを演じるのは、“美しき破滅型ファム・ファタール女優”と称されるキム・オクビン。『渇き』では女ヴァンパイアを、『高地戦』では凄腕スナイパーを演じて、鮮烈な印象を残しています。本作では戦闘シーンのほぼ全てをノースタントで熱演し、そのアクションでも魅せる女殺し屋を演じました。

スクヒは育ての親を失い、政府直属の殺し屋として第二の人生を歩みはじめます。そこで彼女は運命の男性と出会うことになるのです。殺し屋としての人生の中で、彼女がオン・オフでどのような姿を見せるのか? それを演じるキム・オクビンの演技にも注目です!

(文/Jun Fukunaga@H14)