2016年のカンヌ国際映画祭批評家週間でワールドプレミア上映された『RAW〜少女のめざめ〜』 。たちまち評判を呼び、エドガー・ライト監督が2017年のベスト映画10本に選んだほか、M・ナイト・シャマラン監督がTwitterで“Freaked me out.(とても驚かされた)”と大絶賛。 日本では、昨年のフランス映画祭にて初上映されたが、早い段階でチケットが完売してしまったため、劇場公開を心待ちにしていた映画ファンも多いはずだ。

(C)2016 Petit Film, Rouge International, FraKas Productions. ALL RIGHT RESERVED.

本作の主人公は、ベジタリアンの美少女ジュスティーヌ。食事にわずかな肉が混ざっていただけで、戸惑ってしまうほどの繊細な味覚の持ち主だ。そんな彼女が初めて親元を離れ、姉と同じ獣医科大学に入学することに。ある日、上級生による陰惨な新入生しごきの過程でウサギの肝臓を口にしたジュスティーヌは、このことをきっかけとして豹変。カニバリストという隠された本性に目覚めていく。

人間が人間の肉を食べる行動・習慣は「カニバリズム」と呼ばれ、人類のタブーとされてきた。ホラー映画では定番のジャンルとして存在し、ルッジェロ・デオダート監督の『食人族』(1980年)からイーライ・ロス監督『グリーン・インフェルノ』(2013年 )まで、人間の後ろ暗い好奇心を刺激し続けてきた。

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『RAW〜少女のめざめ〜』も当初は、女性監督がカニバリズム・ホラーを手掛けた物珍しさと、上映中に観客が嘔吐したり失神したりしたことがクローズアップされて注目を浴びた。しかし、本作はセンセーショナルな話題だけで語り尽くせる映画ではない。『RAW〜少女のめざめ〜』が斬新なのは、カニバリズム・ホラーに青春ドラマと姉妹愛の要素をブレンドしているところなのだ。

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ジュスティーヌのルームメイトは、ゲイだがイケメンで長身の男性アドリアン。叶わぬ恋と知りながら次第に彼へ惹かれていく彼女に、奔放な姉アレックスはセクシーな服を貸し、ブラジリアン・ワックス(アンダーヘアを脱毛すること)を指南。ジュスティーヌの初体験から人肉への欲求まで、献身的にサポートしていくが……。

監督と脚本を手掛けたのは、これが長編デビュー作となるジュリア・デュクルノー。パトリス・ルコントやフランソワ・オゾンも輩出したフランスの名門映画スクール「ラ・フェミス」出身で、スタイリッシュな映像美と繊細なドラマは、非凡な才能を感じさせるに十分だ。

ジュスティーヌの目覚めを全身全霊で表現したギャランス・マリリエは、ジュリア・デュクルノー監督の短編『Junior(原題)』(2011年)で女優デビューした、監督の秘蔵っ子。好きな監督はデヴィッド・リンチとデヴィッド・クローネンバーグと語る、早熟な美少女だ。現時点で『RAW〜少女のめざめ〜』以降の映画出演予定はないが、まだ19歳だけに今後の飛躍に期待したい。

なお、ジュスティーヌの姉アレックスが、どうして過剰なまでにジュスティーヌを気遣ってサポートするのか、両親が熱心にベジタリアン食を推奨していたのはなぜか、すべての謎はショッキングな結末で明らかになる。性とカニバリズムに目覚めたジュスティーヌの行きつく先は、ぜひあなたの目で確かめて見届けて欲しい。

映画『RAW〜少女のめざめ〜』
2月2日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開
配給:パルコ
公式サイト:http://raw-movie.jp/
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文/田嶋真理