2月10日公開の映画『今夜、ロマンス劇場で』は、1960年の映画会社を舞台とした作品。映画監督になることを夢見る助監督の青年・健司が、モノクロ映画の主人公・美雪に恋をします。

さすがに映画の主人公と……というのは無理ですが、役を演じたキャスト同士をはじめ、業界内でロマンスが繰り広げられるのも映画界。美男美女のカップルは見ていて絵になりますが、華やかすぎて少し遠い世界の話のようにも思えます。

過去には映画界で生まれた恋をテーマに、いくつかの作品が撮られてきました。中でも、今回は美雪が飛び出してきたのと同じモノクロ映画世代の傑作に、俳優や監督による恋愛の様子を垣間見てみたいと思います。

撮影用のセットを背景に愛の告白を…『雨に唄えば』(1952年)

往年の銀幕スターとして知られるジーン・ケリーが、雨の中で踊ったシーンが印象的な、ミュージカル映画の名作『雨に唄えば』。作中で彼が演じたのは、サイレント映画の大スター・ドンでした。

作中ではドンと同じくスターとして人気を集める女優のリナ、新人女優のキャシーとの間で三角関係が繰り広げられていきます。リナはドンと数々の映画でカップルを演じ、私生活でも結婚したいと思うようになりますが、彼にその気はありません。やがて、ドンはキャシーに恋をするのですが、それをリナは気に入りません。

冒頭で紹介した雨のシーンは初めてキャシーとキスをしたドンが、制作中の映画の成功が望めそうなこともあって、その喜びをタップダンスなどで表現したもの。ほかにも、撮影用のセットを背景にキャシーに愛の告白をするなど、2人が恋する姿は見ていて思わず楽しくなってしまいます。ミュージカル映画の中でのことではありますが、息の合ったダンスを見せる2人は、その相性がピッタリなことを感じさせます。

やがて、キャシーに嫉妬したリナは、彼女のことを首にしてしまいます。撮影中に愛を囁く演技をしながら、このことでドンとリナが口喧嘩をしているのが、サイレント映画ならではの面白いところ。その後にトーキー映画が撮られることになると、ひどい声の持ち主のリナに代わり、キャシーが恋人の窮地を救うために声の吹き替えをすることになるなど、当時の映画会社や俳優たちの苦悩も垣間見ることができます。

撮影現場の楽屋で繰り広げられるラブストーリー…『アーティスト』(2011年)

『雨に唄えば』と同じ1927年を舞台に、サイレント映画の大スター・ジョージと、女優志望のペピーとの恋を描いたのが『アーティスト』です。

作中ではジョージの新作映画にペピーがエキストラとして出演しますが、彼はペピーに気をとられてNGを連発してしまいます。そんな彼の楽屋を訪ねたペピーは、トルソーに掛けられていたジョージのコートを見つけ、ジョージとのラブシーンを演じ始めるのです。右腕をコートに通し、その右腕をジョージに見立てて自分を抱きしめるペピー。こんなラブシーンがもし現実でも楽屋で繰り広げられているとしたら? そんな想像に、思わずドキドキしてしまいます!

その後、ジョージは「女優になるには特徴がないといけない」と、ペピーに口元へほくろを書き足すアドバイスをします。これをきっかけにペピーはスターとして活躍するようになりますが、一方でサイレント映画にこだわるジョージは、やがて時代の流れに取り残されていくのでした。

俳優としての栄光とそこからの滑落、その中で2人の恋が翻弄されていくというのは、今も昔も変わらないのかもしれません。大スターになったペピーの一言で、ジョージの起用が決まるというのは、“映画界あるある”といえるでしょう。

映画監督は恋や撮影にお疲れ気味?…『8 1/2』(1963年)

この映画の主人公は映画監督のグイド。彼は疲労が溜まったせいで神経衰弱に陥り、医者の勧めで保養地でのバカンスの真っ最中でした。

作中では恋や仕事に忙しい、映画監督の日常が描かれています。休暇中にもかかわらず、新作映画の打合せが続く。不倫相手のカルラが押し掛けてくる。妻のルイザを呼び寄せれば、彼女への自分の愛が嘘だと言われる……。

やがて、グイドは過去に自分が関わってきた女性たちの幻を見るようになります。そして、幻覚の中の彼女たちは、グイドのことを「誰も愛せない」と糾弾するのです。もし、これが映画監督の日常だとしたら、そのストレスもあって、彼らが恋多き人生をおくっているのも仕方がないのかもしれませんね。

『今夜、ロマンス劇場で』/2月10日(土)、全国ロードショー!!/配給:ワーナー・ブラザース映画/(c)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

『今夜、ロマンス劇場で』では、健司が見ていた『お転婆姫と三獣士』のスクリーンから、主人公の美雪が飛び出してきます。映画のキャラクターそのままに自由奔放にふるまう美雪に、次第に心を奪われていく健司。一方で、映画会社の社長令嬢の塔子は、健司の夢を応援しようと脚本のコンテストを行います。

コンテスト向けの脚本を作るためとして、健司と美雪は逢瀬を繰り返します。初めて見る虹に感動し、色を使った連想ゲームに夢中になる美雪。そして、電話ボックス越しのキス……。しかし、美雪は健司に対して、塔子との恋を応援するような態度をとるのでした。果たして2人の恋はどのような結末を迎えるのでしょうか?

物語の舞台となった1960年は、テレビのカラー放送開始とともに観客を失っていく前の、映画の絶頂期といえる時代。活気ある撮影所の姿や、にぎやかな映画館の様子などを見ることができます。映画の主人公と恋をするというファンタジーとしてだけでなく、往年の映画界を舞台とした恋物語としても楽しめる作品です。

(文/デッキー@H14)