2月10日から公開となるスペイン映画『ロープ/戦場の生命線』は、ベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンスらハリウッドでも活躍する主役級のスターが共演している社会派ドラマです。その実力派俳優たちの競演もさることながら、ストーリーの秀逸さも見逃せません。たった1本のロープから、“紛争地のすべて”と言っても過言ではないほどの実情を見せ切ってしまうのです。

ロープをきっかけに、想像もできない物語が展開していく

本作の舞台は、1995年、停戦直後のバルカン半島の某国。とある山岳エリアの小さな村の井戸に死体が投げ込まれ、唯一の生活用水用の井戸が汚染の危機とあって地元住人は大弱り。どうやら、水の販売で一儲けしようと目論む悪徳商人の仕業らしい。

この現場に真っ先に到着したのは、国籍も性別も違う5人で編成された国際援助活動家“国境なき水と衛生管理団”のメンバー。死体の引き上げを試みる彼らだが、あと少しというところでロープは切れてしまいます。

そこから、たった1本のロープをめぐって想像もできない悪戦苦闘の日々がスタートします。

1本のロープ探しが、命がけの行為に

メンバーの手元には、死体を引き上げるために十分な長さのロープがありません。そうなると、ロープを探す必要があります。しかし、つい最近まで戦争状態だった現地には店舗がさほどなく、ようやく見つけた雑貨店では、外国人ということで店主に売ることを拒否されてしまいます。

ようやく国境の検問所でロープを発見した彼らですが、そのロープは停戦状態にあることを示す国旗を掲揚するもので、借りることはできません。それに加えて停戦したばかりで、情勢は不安でいつ武装集団に遭遇して襲われてもおかしくない。

さらに、道に埋められた無数の地雷は除去されておらず……ロープ探しは命がけとなります。ようやく解決の糸口が見えたかと思うと、今度は国連や政府の横やりが入ってきて身動きがとれなくなってしまいます。

不寛容な時代への痛烈な批判が込められている

このように、たった1本のロープの消失からストーリーが雪だるま式に転がり、予想もしない方向へと進んでいきます。

各エピソードから垣間見えてくるのは、紛争地の実態にほかなりません。戦地ではたった1本のロープでさえ入手することが困難を伴うことからはじまり、停戦状態であっても援助活動は常に死と危険が隣り合わせになります。また、時に国連や政府判断や規律が大きな障害となり現地の住人に不利益を与えること、援助活動家たちの厚意も踏みにじられることも多々あります。さらに、非常事態にあろうと私利私欲に走る人間もいるのです。本作ではこうした戦場の現実を、きわめてシビアな視点で映し出していきます。

また、ベニチオ・デル・トロ扮する活動家は現地でひとりの少年と出会うのですが、すばらしい友好関係を結んだと思った彼にちょっとした裏切りを受けて、やるせない気持ちになります。しかし、彼はやる気を失うのではなく、再び救助活動へと邁進していきます。彼が身をもって示してくれる、どんな状況だろうと存在する人間の良心と誠意は、なにかと対立構造が作られる風潮のある現代へのひとつのメッセージではないでしょうか。特にトランプ政権後に顕著となった、不寛容な時代への痛烈な社会批判が込められているようにも感じます。

ベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンス、オルガ・キュリレンコ、メラニー・ティエリーらハリウッドの第一線で活躍する彼らが出演を決めたのも、この脚本に惚れ込んだからでは? と思えるほど、緻密に練られたストーリー。たった1本のロープから語られる紛争エリアの実態を、ぜひ見届けてください。

(文/水上賢治@アドバンスワークス)