人気芸能人といえば、否応にも一般人とは違う“オーラ”のようなものが出てしまうもの。とりわけジャニーズ所属のアイドルともなれば、ステージ上やスクリーンの中で、ケタ違いのキラキラとした輝きを放っています。しかしそんなジャニーズの中で、アイドルとはかけ離れた特別な魅力を持っているのが、関ジャニ∞の錦戸亮です。主演映画『羊の木』(2月3日公開)では、その魅力が存分に発揮されています。

DV男、侍、ダメ社員etc… 錦戸亮が演じてきた“クセがすごい”役柄

端正なルックスでジャニーズJr.時代から注目を集め、関ジャニ∞とNEWSを掛け持ちするなど早くから注目を集めていた錦戸。俳優としても多数のドラマ、映画に出演しています。

そんな錦戸が俳優として一躍脚光を浴びたのが、2008年のドラマ「ラスト・フレンズ」で演じたDV男・及川です。頭脳明晰で心優しい性格の一方で、恋人への強い執着心と独占欲を持つ二面性のある及川の行動がエスカレートしていく様をリアルに演じた錦戸。優しい笑顔を見せていたと思えば、次の瞬間には、刺すような冷たい視線を浴びせる姿には、戦慄が走りました。

初主演映画『ちょんまげぷりん』(2010年)では、江戸時代から現代にタイムスリップし、ひょんなことから人気パティシエになってしまう侍という“クセがすごい”キャラクターに。さらに2017年に放映されたドラマ「ウチの夫は仕事ができない」では、“粘菌”というマニアックな趣味を持つ気弱なダメ社員を熱演。シリアスな役からユーモラスな役までその演技の幅を見せつけています。

クセの強い役柄から一転、主演最新作で演じるのは“普通の人”

錦戸4年ぶりの映画出演となる『羊の木』は、寂れた港町を舞台に、町で身元を引き受けた6人の元殺人犯と、彼らの受け入れ担当となった市職員、そして町の住人たちの運命が交錯していく姿が緊張感たっぷりに描かれるヒューマンミステリーです。

錦戸は元殺人犯の受け入れ担当となる市役所職員の月末(つきすえ)を演じています。彼は市役所で真面目に働きながら、プライベートでは病気療養中の父親を介護し、同級生とのバンド活動にも勤しむ、どこにでもいそうな好青年。港で起きた事件を、やじ馬たちとともに遠巻きに見つめる姿は、まるでエキストラのようなオーラの無さ。

月末は町で受け入れる男女が殺人犯であることを知らされずに、笑顔を浮かべて親切に対応するのですが、彼らがどういった経緯で殺人を犯したのかが明らかになるにつれ、次第に彼の中にも“戸惑い”の感情が芽生え、遠慮がちになっていきます。アクの強い登場人物の中で、市井の人の心の機微を、錦戸は丁寧に芝居ですくい取るのです。

“普通の人”をやらせたら天才!? 監督も大絶賛の演技力

メガホンを取ったのは、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)などで知られる吉田大八監督です。これまでも吉田監督は、『クヒオ大佐』(2008年)の堺雅人の軽薄な姿や、『紙の月』(2014年)での宮沢りえの悪女としての一面など、人気俳優たちの新たな魅力を引き出してきました。

そんな吉田監督によって新たな一面を引き出された錦戸ですが、監督も演技を大絶賛。昨年秋に韓国で開催された釜山国際映画祭で、「良い意味で普通の人」と錦戸の印象を語り、続けて「普通の人を演じる天才的な能力がある」と手放しに評価しています。

元殺人犯という個性的なキャラクターがひしめく本作で、個性を殺すことで逆に存在感を発揮している錦戸。アイドルのオーラを封印し、あえて普通の人を演じることで、物語にリアリティと深みと与えたその確かな演技力には脱帽です。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)