高倉健が1976年に主演した日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』が、『男たちの挽歌』や『レッドクリフ』のジョン・ウー監督によって再映画化されました。それが、2月9日公開の『マンハント』。本作では、大阪を中心に3か月にも及ぶ日本ロケを敢行しています。

ジョン・ウー監督といえば、その独特のアクションスタイルに定評があります。しばらくガンアクション映画から遠ざかっていましたが、今作ではチャン・ハンユーと福山雅治、2人の演技がファンの渇きを癒やしてくれました。

『君よ憤怒の河を渉れ』ファンも楽しめる新ストーリー

『君よ憤怒の河を渉れ』も、『マンハント』も、基本的なストーリーは何者かの罠にハメられ、無実の罪を着せられた男が真相を突き止めようとするというもの。彼を追う刑事との間には、やがて奇妙な友情が芽生えていきます。

無実の罪を着せられたのは、旧作では検事の杜丘(もりおか)という男で、高倉健が演じました。今作では検事から国際弁護士に変わり、彼を『戦場のレクイエム』のチャン・ハンユーが演じています。一方の彼を追う敏腕刑事・矢村は旧作では原田芳雄が、新作では福山雅治が演じました。そのほか、ストーリーにも、キャラクターにも大きな変更が加えられており、見せ場の種類も違うので、旧作を知っている人も新鮮に楽しめる作品です。

二丁拳銃、鳩、スローモーション…“ジョン・ウー的”演出に注目!

今作では“ジョン・ウー的”なアクションスタイルがたっぷりと込められています。その一つ目が“二丁拳銃”。まるで西部劇のように両手に銃器を持って華麗に立ち回るアクションで、本作では新キャラとして登場する女性殺し屋コンビが、冒頭からすさまじい殺陣を見せてくれます。

ドゥ・チウと矢村も、手錠で繋がれながら自由になる手にそれぞれ銃を握った“変則二丁拳銃”を披露。ただ銃をぶっ放すだけでなく、回転したり跳んだり滑ったりしながら発砲するトリッキーな動きもジョン・ウー流。彼の趣味でもあるダンスから影響を受けたもので、実戦向けでなくても映画的に美しくあればそれでいいという、彼の哲学を反映しています。

続いてのジョン・ウー的演出はシンボルとしての鳩の登場。敬虔なクリスチャンであるウー監督にとって、愛と平和の象徴である鳩が別々の方向に羽ばたく中で対峙する男たちの姿は、本作の中でも印象的に描かれています。

そして、最後がスローモーションの多用。『マンハント』は旧作に比べてアクション要素が増えていますが、中でも中盤の見せ場となっているのが、大阪の堂島川で展開するジェットスキー・チェイス。この場面では通常速度やアップ、ロングショットとカットがめまぐるしく変わり、ここぞというシーンでスローモーションが効果的に使われます。

スローモーションは登場人物たちの感情が噴出するシーンでも用いられ、観客の心を画面の中に引きずり込むのです。

実は中国で8億人以上を集客していた『君よ憤怒の河を渉れ』

『君よ憤怒の河を渉れ』は、なぜ中国でリメイクされることになったのか? その理由は1979年に『追補』というタイトルで中国公開されたとき、文化大革命後に公開された初の外国映画ということもあって、8億人以上の観客を動員する大ヒットとなったことにあります。健さんやヒロインの中野良子は中国で国民的なスターになり、登場人物のファッションやセリフを真似る人が続出。“追補現象”とよばれるブームを巻き起こしたのです。

当時、若き映画人だったウー監督も、この映画や健さんの大ファンとなりました。『男たちの挽歌』でチョウ・ユンファが演じたマークは、健さんの影響を受けてできたキャラなのだとか。

『マンハント』でも旧作にオマージュが捧げられています。主人公の名前“ドゥ・チウ”を漢字で書くと“杜丘”になりますし、旧作のセリフや主題曲が意外な形で引用されるなど、ファンがニヤリとするお遊びも散りばめられています。ドゥ・チウは女に手が早い上に口数も多く、健さんが演じた杜丘とはかなり違いますが、「同じタイプの役は高倉健にしかできないので、あえて違うキャラにした」とのこと。これも健さんに対するリスペクトなのでした。

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前述のキャスト以外にも、日本からは國村隼、竹中直人、倉田保昭、斎藤工、桜庭ななみ、池内博之、TAO、田中圭らが出演。中国のチー・ウェイ、韓国のハ・ジウォンも共演した豪華キャストとなっています。日本を舞台にしながらも、日本映画では実現不可能なスケールのアクションをぜひ堪能してください。

(文/紀平照幸@H14)