3月30日に公開されるリュック・ベッソン監督の新作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は、フランスの伝説的SFコミックの映画化作品です。西暦2740年の未来を舞台に、銀河をパトロールする連邦捜査官のヴァレリアン(デイン・デハーン)と、パートナーのローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)のコンビによる冒険を描いています。

今回の映画では“千の惑星都市”とよばれる、巨大なアルファ宇宙ステーションを舞台に、全宇宙の存亡をも揺るがす陰謀に2人が立ち向かいます。美女をパートナーにして戦う美男ヒーローという図式は、さながら宇宙版007といったところです。

以前にベッソンにインタビューした際に聞いた話によると、SFコミック『ヴァレリアンとローレリーヌ』シリーズの映画化は、長年に渡ってベッソンが思い描いてきた夢の一つだったとのこと。本作のように、ベッソンはこれまでも、彼が“少年の日に見た夢”を、映画の中で叶えています。

“空から落ちてきた美女と恋に落ちる”という夢をかなえたベッソン

10歳の頃、偶然に原作コミック『ヴァレリアンとローレリーヌ』に出会い、たちまちローレリーヌに恋して、ヴァレリアンになりたいと思うようになったとベッソンは語っていました。そうして彼は、空想世界の中で自分なりの物語を作り上げていったのです。

やがて大人になり、映像作家になったベッソンは、低予算映画で監督としてのキャリアをスタート。少年時代に海洋学者になりたかった夢と趣味のダイビングを活かして、フリーダイビングの世界を描いた『グラン・ブルー』(1988年)で一躍注目を集めます。その後、『ニキータ』(1990年)、『レオン』(1994年)と2本のアクション映画をヒットさせ、人気監督となった彼は、念願の企画に取り掛かります。それがSF作品『フィフス・エレメント』(1997年)です。

未来の地球を舞台に、しがないタクシー運転手(ブルース・ウィリス)が“空から落ちてきた異星人の美女”リー・ルー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)を拾い、彼女と愛し合い、愛の力で世界の危機を救うという物語。それは、ベッソンが16歳の時に小説として考えたものでした。

ベッソンはこの映画のデザインを、『ヴァレリアンとローレリーヌ』で作画を担当したジャン=クロード・メジエールに依頼します。こうして、限りなく『ヴァレリアン』に近い世界を作り出すという、彼の夢は現実のものになりました。しかも、映画の完成後に主演女優のミラと結婚するというオマケ付き。ちなみに前の妻は、『ニキータ』の主演女優アンヌ・パリローでした。ローレリーヌのような“美人ヒロインと結婚する”という夢も、彼は映画を通して叶えてしまったわけですね。

監督として夢を追う一方で、プロデューサーとして現実的な成功も積み上げる

その後のベッソンは、やはり少年時代に思いついたストーリーを発展させた『アーサーとミニモイたち』を、2002年に児童文学として発表。シリーズ化された小説は、自身が監督を手掛けて『アーサーとミニモイの不思議な国』(2006年)として映画化し、最終的には全3作品が作られました。ベッソンはこれをもって映画監督を引退すると宣言しましたが、数年で撤回して復帰しています。

近作『LUCY/ルーシー』(2014年)も、“もしも人間の脳が100%覚醒したら、何が起きる?”というSF少年が抱いた空想を映画化したもの。ただ、ベッソン曰く「そのきっかけをどうするか?」という部分の脚本に難航したため、映画化までに時間がかかったそうです。

とはいえ、彼だって夢ばかり追っているわけではありせん。プロデューサーとして、『TAXi』、『トランスポーター』、『96時間』というヒットシリーズを次々に放ち、経済的な実績を着実に積み上げています。ただの夢追い人ではなく、しっかりと現実と両立させていることこそが、彼の偉大なところかもしれません。

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』/2018年3月全国ロードショー/配給:キノフィルムズ/(c) 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION

今回、ついに念願だった『ヴァレリアンとローレリーヌ』の映画化が実現しました。

最先端のVFX技術をこれでもかと投入し、銀河の多種多様で奇想天外な生命体の姿を映像化。いきなり惑星崩壊シーンの大スペクタクルで始まり、モンスターの襲撃、宇宙船チェイス、アンドロイドとの銃撃戦など……。SFアクション・アドベンチャーの要素がすべて入った、老若男女の誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっています。

ベッソンの夢の集大成は、どのようなカタチになったのか? ぜひ映画館で確かめてみてください。

(文/紀平照幸@H14)