2月17日公開の『サニー/32』では、『凶悪』(2013年)で極悪犯罪者コンビを組んだリリー・フランキーとピエール瀧が、誘拐犯として再びタッグを組みます。

コンビが活躍する作品を“バディムービー”とよびますが、その多くでは寡黙と饒舌、豪快と繊細、頭脳派と肉体派というように、真逆な人間同士がチームを組んでいます。価値観の違いによって争いや笑い、そして友情が生まれるのが面白いところです。

バディムービーといえば、例えば『あぶない刑事』シリーズのように、正義のコンビを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、中には『凶悪』のように悪人側がコンビを組み、悪巧みをする映画も存在します。今回は、そんな2人の悪党が互いの魅力を引き立てる、名悪役バディムービーを紹介したいと思います。

息が決して合わない凸凹殺人犯コンビ…『ファーゴ』(1996年)

『ファーゴ』に登場するカールとゲアのコンビは、偽装誘拐の実行犯です。カールはとにかくお喋りですが、実は内心は臆病者。一方のゲアは無口で何を考えているのか一切わからず、私利私欲の為なら殺人でも平気で犯すという、いわゆるサイコキラーです。こんな2人だからコミュニケーションもロクにとることができません。

2人の誘拐計画は行き当たりばったり。職質に来た警官をゲアは平気で殺し、さらにその目撃者2人も殺してしまいます。そのときのカールはというと、その光景に怯えているだけでした。明らかに自分の器に合わない大きな罪を犯しているカールと、自分の器に収まりきらない小さな犯行を繰り返すゲア。主人公サイドでは絶対に描けない、互いに認め合うことも、協力もなく、最後まで形の合わない凸凹コンビが、次々と雪原を血に染めていきます。

彼らが偽装誘拐を行った町は、他人に対し思いやりがあり、お互いに助け合う人が多く住むことから“ミネソタ・ナイス”とよばれる場所。女性警察署長のマージは凶悪事件の捜査にも関わらず、事件現場に向かう前に夫と仲良く食事をしたり、たまにぼんやりとテレビを見ていたりと、どこかのんびりしています。自分で自分の首を絞めて、ひたすら破滅の道へと進んでいるカールとゲアのコンビとは対照的です。

カールとゲアの2人のギャップが互いの個性を際立たせ、さらに町の様子とのギャップが彼らの暴走の凄絶さを引き立てています。

凸凹コンビだからこそ飽きさせない笑いの連打!…『ホーム・アローン』(1990年)

『ホーム・アローン』に登場する泥棒のハリーとマーヴといえば、世界を笑いで包んだリアクションコンビ。158cmのハリーと193cmのマーヴという、その見た目からすでに2人の凸凹具合が伝わってきます。

物語は家族旅行から取り残された8歳のケビンが、家に忍び込もうとした2人を退治するというもの。ケビンが泥棒を撃退していく爽快なアクションは、本作の最大の魅力といえるでしょう。一方で、それに敵対するハリーとマーヴのリアクションは、いわば裏の魅力といえます。

転ぶ、燃える、落ちるなど……身体を張った2人の演技が笑いを誘うのは、2人の身体からにじみ出る絶妙な緩さにあります。性格もシルエットも異なる2人のやられっぷりは、それぞれ違った笑いをもたらし、ワンパターンに陥ることがありません。2人が同時にやられる時もまた別の笑いが出て、ナイスな“やられコンビ”として観客を魅了します。

Blu-rayの特典映像によると、彼らを演じたスタントマンにはその後、さまざまなオファーが殺到したとか。そのリアクション芸は言語の壁を突破し、世界中に笑いをもたらし、メインキャストはそのままで続編も作られました。

悪役バディの皮をかぶった2人の成長物語…『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(2010年)

映画の中には、極悪犯罪者コンビ……に間違えられてしまったキャラクターも存在します。『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』のタッカーとデイルもその一組です。

物語ではキャンプをしていた大学生グループの一人が、見た目の悪い中年男2人組にさらわれてしまいます。意を決して助けに行く学生達。しかし、彼らの手により次から次へと犠牲者が……というのは、実は大学生側の一方的な勘違いだったのです。

中年男のタッカーとデイルは気の優しい大の友達同士。その日もコツコツ貯めたお金で買った別荘に遊びに来ており、最初にさらわれたと思われていた大学生は、川に溺れていたのを助けて介抱していただけでした。

さらわれた(と思いこんでいる)仲間を助けようと、2人を襲撃した学生はつまずいて勝手に木材粉砕器に突っ込んだり、枯れ木にぶつかって事故死するなど、まさに“史上最悪にツイてない”ことが次々と起こります。2人の側に立つと、ただただ迷惑極まりないことが起きているだけなんですけどね。

この作品は学生たちが次から次へと勝手に事故死していくさまを描いたスプラッター・コメディです。それと同時に、見た目で勘違いされる2人の成長物語でもあります。勘違いされることがわからなくもない彼らの見た目ですが、その間に流れる固い友情は本物。さまざまな困難を協力して乗り越えてゆく姿は、まさに王道のバディムービーといえ、物語の大きな魅力となっています。まさに“見た目では判断できない”作品といえるでしょう。

『サニー/32』/2018年2月9日(金)新潟・長岡先行公開、2018年2月17日(土)全国公開/(c)2018『サニー/32』製作委員会 PG12

『凶悪』では緻密で姑息な犯罪計画を華奢なリリー・フランキーが考え、それを実行する暴力的な男を身体の大きいピエール瀧が演じていました。犯罪を繰り広げる2人の様子は、非人道的なことをしているのに、思わずひきこまれます。危なくも魅力的な香りのするコンビの姿には、決して正義の側では描けない、抜群の存在感がありました。

2人は昔から交流があり、『凶悪』の音声解説でも仲良く撮影時の裏話を披露していました。『サニー/32』では、どんな悪役バディとして映画を彩ってくれるのか楽しみですね。

(文/塩谷友幸@H14)