文=新田理恵/Avanti Press

怒濤のアクションでたたみかけるサスペンス・アクション『マンハント』(2月9日公開)。殺人の濡れ衣を着せられ、冤罪を晴らすために逃亡者となる中国人弁護士・杜丘(ドゥ・チウ)を、福山雅治さん演じる刑事・矢村が追う。

この男臭い作品の中で、一服の清涼剤になっているのが、矢村の部下・百田を演じる桜庭ななみさんの存在だ。昨年11月に一足早く公開された中国では、桜庭さんのフレッシュな魅力とともに、通訳なしで会見やインタビューに応じる高い中国語力も注目されている。

中国語だけでなく、韓国語も勉強しているという彼女。多国籍のスタッフ・キャストとともに過ごした撮影現場の裏側や、多忙の中で語学力を磨いた勉強法を聞いた。

アジアの名匠の作品に出演! 面接で役を勝ち取る

『マンハント』の原作は、高倉健さん主演で1976年に映画化され、その後中国で公開されるや中国全土で熱狂的な人気を博したサスペンス小説『君よ憤怒の河を渉れ』。40年の時を経て、香港が生んだアクション映画界のレジェンド、ジョン・ウー監督が再映画化した。

Q:今回『マンハント』で演じた百田里香という女性刑事は、旧作にはなかったキャラクターですね。出演はオーディションで決まったのですか?

桜庭ななみ(以下、桜庭):大々的なオーディションというより、ジョン・ウー監督に面接をしていただいたという感じでした。日本にいらっしゃってキャスティングをしているという話を聞いて、「私も監督の作品に出たい!」と思って、会いに行きました。

『マンハント』2月9日(金)日本公開
刑事・矢村(福山雅治)と中国人弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)
(C) 2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

Q:ジョン・ウー監督の映画は以前から好きだったのですか?

桜庭:はい、『男たちの挽歌』や『レッドクリフ』などを見ていて好きでした。アクションもすごいし、男性がメインのストーリーではあるんですけど、作品の中に立つ女性たちがとてもステキだなと思っていました。出演が決まったときは、すっごく嬉しかったです!  中国の作品に出たいというのは夢のひとつでもありましたし、まわりの人もとても喜んでくれました。

Q:撮影に入るにあたり、何か準備したことはありますか?

桜庭:銃の持ち方や、車の運転です。運転するシーンがあったので、免許をとりに行きました。ギリギリだったので、1回でもテストに落ちたら撮影に間に合わないので(笑)、集中して2、3週間でとったと思います。

Q:監督の演出はいかがでしたか?

桜庭:役者ひとりひとりをすごく尊重してくださる方で、ひとりひとりの意見を聞いてくださいました。あと、お芝居を指導するときは、自分で実際にやってくださったり。クランクインのときはすごく緊張してたんですけど、毎回シーンが終わるたびに褒めてくださるので、「すごい、ジョン・ウー監督に褒められるなんて!」と感激していました。全然怒ったりしない、とても穏やかで優しい方でした。

物怖じしない受け答えで中国の映画ファンを魅了

Q:昨年11月に北京で行われたプレミア上映の会見で、とても上手に中国語で受け答えしている映像を見て驚きました。途中で感極まって涙される一幕もありましたね。

桜庭:映画のプレミア上映会などの舞台で中国語の挨拶をするのは初めてだったので緊張もしていましたし、私の前にお話しされた(真由美役の中国の女優)チー・ウェイさんの言葉を聞いてぐっとくるものがあって……(チー・ウェイは、映画に情熱を捧げる監督への尊敬の気持ちを語り、涙していた)。

『マンハント』2月9日(金)日本公開
ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)と真由美(チー・ウェイ)、刑事・矢村(福山雅治)
(C) 2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

Q:チー・ウェイさんや、ドゥ・チウ役の中国のスター、チャン・ハンユーさんとは、撮影を通して仲良くなれましたか?

桜庭:チー・ウェイさんとは同じシーンがあまりなかったんですけど、1シーンだけ一緒のシーンがあって、そのときにいろいろお話しました。私は中国の微博(ウェイボー)というSNSをやってるんですけど、そこでやり取りしたり、メールもしています。「火鍋が食べたいな」って書き込んだら、「中国に来たときは一緒に行こうよ」って誘ってくださったり、チャンさんはお芝居を誉めてくださったりと、すごく優しかったです。

Q:和気藹々という感じだったんですね。韓国からは謎の女殺し屋役でハ・ジウォンさんも出演されていますし、多国籍な現場ですよね。

桜庭:福山雅治さんをはじめ、日本のキャストの皆さんもいい方ばかりですし、ハ・ジウォンさん、チー・ウェイさん、監督、(監督の娘で本作にも出演している)アンジェルス・ウーさんと美味しい日本料理を食べに行ったりもしました。

感情移入しやすいアジアの作品にひかれ、台湾留学を決意

Q:韓国語も勉強されているそうですが、中国語や韓国語を学ぼうと思ったきっかけは?

桜庭:アジアの映画やドラマが好きで、勉強を始めました。アジアの作品って、見ていて感情移入がしやすいんです。人の見た目や文化など似ている部分が多いです。でも、日本、中国、韓国と、それぞれ違った魅力もいっぱいあるところがいいですね。

桜庭ななみさん 撮影=伊藤さゆ
衣装クレジット:スカート BLENHEIM/イヤリング DRESS UP EVERYDAY/ネックレス・リング 共にlittle emblem

Q:2015年からは複数回、台湾に短期留学もされたそうですね。「いつかアジアの作品に出たい」という目標を前提とした留学だったのでしょうか?

桜庭:もともとは、アジアの作品が好きだったから始めたという感じです。勉強していくうちに自分もいつか出られたらいいなとは思っていましたが、まさか今回の『マンハント』のような大きなチャンスが来るとは思わなかったので、出演が決まったときは本当に嬉しかったです。

Q:どんな留学生活を?

桜庭:朝9時から午後3時までマンツーマンの授業を受けて、それから現地の友だちとカフェに行ったり、夜市に行ったり。台湾でしかできないことをしたり、九份みたいな観光地に行ったりもしました。ホームステイ先の人と一緒に出かけることが多かったです。

Q:短期留学を始めた翌年には、台湾在住の監督・北村豊晴さんがメガホンをとった現地のテレビドラマ「恋愛沙塵暴」にもゲスト出演されています。どういう経緯で出演が決まったのですか?

桜庭:留学中に、北村監督とお会いする機会があり、そこで「機会があったらお仕事ご一緒しましょうね」って言ってくださって。それからまさかなのですが、すぐにお話をいただいて(笑)、半年後には実現しました。

語学上達の秘訣は、日本語が使えない環境に身を置くこと

Q:ドラマでは日台ハーフの女性の役でしたが、上達が早い! と驚きました。留学中の勉強法に何か秘訣は?

桜庭:日本語のできる人がまったくまわりにいなくて、自分で中国語の単語をひとつひとつ覚えて話さなければいけない状態だったので、とにかく勉強しました。あ、でも勉強自体はあんまり好きじゃないので(笑)、集中してやるというよりも、一緒にいる人と会話をしたり、わからないところは聞いたりしながら覚えていきました。

『マンハント』2月9日(金)日本公開
刑事・矢村(福山雅治)と部下の里香(桜庭ななみ)
(C) 2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

Q:敢えて、中国語を使わなければいけない環境に身を置いたということですね。

桜庭:そうですね。それが一番大きかったと思います。上海にも3週間ぐらい留学したことがあるんですけど、できた友だちがほとんど日本人で……。中国語を話さなくても生活ができる状態だったので、「これはマズイ!」と思って、台湾に環境を変えました。

夢はトニー・レオンとの共演!
「語学を身につけ、視野が広がった」

Q:今でも語学の勉強は毎日続けているのでしょうか?

桜庭:はい、毎日勉強しています。日本にも先生がいますし、一緒に現場に行ってくれるマネージャーさんも中国の方についてもらって、現場でも中国語で話したりしています。話さないと単語も忘れてしまうので。

桜庭ななみさん 撮影=伊藤さゆ
衣装クレジット:スカート BLENHEIM/チョーカー・リング 共に e. m./イヤリング DRESS UP EVERYDAY

Q:外国語を学んで海外作品への出演を経験したことで、女優としての変化や成長を感じる部分はありますか?

桜庭:視野が広がりましたね。もっともっと海外の作品にも目を向けたいと思ったり、海外の俳優さんのお芝居を見るようになったり。心も成長したというか、穏やかになった気がします。それは語学という自分の強みを増やせたというのもあるかもしれません。女優って、人と比べたりもされる仕事だと思うんです。何もしなければ変わらないけど、何か自分にしかできないものを持つことができたら、ちょっと変わるんじゃないかなという思いもありました。まだまだこれからですが、語学を身につけられたことで、女優としても、一人の人間としても視野が広がったと思います。

Q:今後共演してみたいアジアの俳優さんや監督さんはいらっしゃいます?

桜庭:トニー・レオンさんと共演してみたいです! 『インファナル・アフェア』が好きです。夢です!