アメリカでは現在、有名無名に関わらず、自分の訃報記事を自ら書きたがる人が増えています。自作自演のお悔やみ文は「究極のセルフィ―」とも呼ばれているそう。今後は「インスタ映え」ならぬ「お悔やみ映え」を重視する現象が、出てこないとも限りません。そんな時代に備えて、シャーリー・マクレーン主演の『あなたの旅立ち、綴ります』(2月24日より公開)で予習するのはいかがでしょう?

主人公は、自分の「お悔やみ記事」に興味を持ったキャリアウーマン

シャーリー・マクレーンといえば、1950年代からヒッチコックやワイルダーをはじめとする巨匠監督の作品に出演し、アカデミー賞においては6回目のノミネートとなった『愛と追憶の日々』(1983年)で主演女優賞に輝いた、ハリウッドを代表するベテラン女優です。

その一方、幽体離脱や神秘体験を綴った書籍『アウト・オン・リム』が世界的ベストセラーになるなど、1980年代に一世を風靡したニュー・エイジブームの立役者の一人としても知られています。

そんなシャーリー・マクレーンが『あなたの旅立ち、綴ります』で演じているのは、かつて広告業界で成功を収めた広告代理店の元社長、ハリエット。

豪邸で何不自由なく自分の思い通りに暮らしている彼女は、もたついている人を見ると「貸して!私がやるわ」と、横から取り上げてしまうようなタイプの人物。正直いけすかない嫌な役柄なんですが、ストーリーが進んでいくにしたがって、どんどんハリエットのことが好きになってしまうという、なんとも魅力溢れる作品なんです。とはいえ、ハリエットが改心して「いい人」になったから、という単純なお話でもないのが、この映画の面白いところ。

ある日、さも「素晴らしい人」であったかのように仕立てられた知人の訃報記事を読み、自分の「お悔やみ記事」はどう書かれるのか興味を持ったハリエットは、「充実した人生を送った‟ように”私の訃報を書いて」と、アマンダ・セイフライド扮する訃報記事専門の若手記者アンに依頼します。

アンは渋々ながら、ハリエットから受け取ったリストにある人物たちに取材を開始するのですが、彼らが口にするハリエットの人物評は「強欲」「憎たらしい」という悪口ばかり。

結局、数少ない「使えそうな」証言をもとに、アンは当たり障りのない訃報記事を仕上げますが、納得がいかないハリエットは、ありとあらゆる訃報記事に目を通し、「最高の訃報記事」を構成する‟4つの条件”を発見。その条件を満たして、「最高の訃報記事」に‟自分を寄せていく”ことを決意するのです。

誰もが感動する「最高の訃報記事」を構成する‟4つの条件”とは?

ハリエットの調べによると、下記4つが「最高の訃報記事」を構成する条件とのこと。

①家族や友人に愛されること
②同僚から尊敬されること
③誰かの人生に影響を与えるような人物であること
④記事の見出しになるような、人々の記憶に残る特別な何かをやり遂げること

たしかに、この条件さえ満たせば、どんな人でも立派な訃報記事に仕上げてもらえそうですが、バツイチで、娘とは長らく絶縁状態にあり、仕事で実績を上げたとはいえ、会社の辞め方も何やらワケありの様子のハリエットにとって、この4つをクリアするのは、なかなかハード。しかし、彼女はそれに挑みます。

まずは、③と④から着手するべく、コミュニティセンターを訪ね、9歳のやんちゃな少女ブレンダをスカウトすることに。

条件をクリアするための手段として、若い頃は筋金入りの「ラジオっ子」だったハリエットが、アンのお気に入りのラジオ局に「DJとして私を採用しなさい」と売り込みに行くのですが、その鮮やかな交渉術は、ぜひとも注目して欲しいポイントです。決して誰もが真似できる方法ではないですが、ハリエット流の「夢の叶え方」が学べる、とっても興味深いシーンになっています。

ハリエットがラジオで伝える「いい一日ではなく、本当の一日を送って」というメッセージは、誰にも媚びることなく自分に正直に生きた、彼女の人生訓そのもの。長年染み付いた性格はそんなに簡単には変えられないし、周囲の評価も変えられない。それでも“新たなファン”は、自分次第でいつからだって開拓できる。そんなことを、ハリウッドを代表するベテラン女優が身をもって教えてくれる、人生の指針となる1本です。

(文/渡部喜巴@アドバンスワークス)