映画監督を夢見る健司が憧れるのは、モノクロ映画のヒロイン・美雪。スクリーンの中から飛び出した美雪は健司と恋に落ちるが、美雪には悲しい秘密があった。映画『今夜、ロマンス劇場で』で凛としたお姫様を演じた綾瀬はるかが、劇中の恋の行方になぞらえて自身の恋愛観を語った。

坂口さんは優しくていい人

Q:本作に出会ったときの印象は?

最初にお姫様役と聞いたのですが、お姫様? とピンとこなくて。それで台本をいただき、どんな映画だろう? と思いながら読んでいきました。前半で美雪は健司に「今日からお前は私のしもべだ」と強い命令口調の言葉を使うので、なんじゃこのお姫様は!? と思いました。やがて美雪には悲しい秘密のあることがわかり、後半に「ああ、こういう話なのね……」と。それで最後には、これ、いいお話なんじゃない? じんときっちゃった! と驚きました(笑)。想像していた物語とは全然違っていて、いい映画だなと感じました。

Q:美雪姫役を演じる上で、特に意識したことは?

特に前半、命令口調になるセリフの言い回しでしょうか。台本の文字で読むと印象が強くなり過ぎてしまい、なぜ健司はこんな人のためにがんばるの? と観客の方が思ってしまうかも。そうならないよう、この二人が愛おしいと思っていただけるようにしたいと思いながらも、姫らしい毅然としたところがなければいけなくて。その辺りはいつも考えていました。ときには監督と「いまの怖すぎました?」「少し怖すぎたかも」「じゃあ、もうちょっと抑えます」と話し合いながら調整していました。

Q:健司を演じた、坂口健太郎さんの印象は?

優しくて、いい人でした。撮影現場では、イジられキャラみたいになっていたんです。わりとそうなりやすいみたいで(笑)。例えば「いま、美雪姫に薔薇を差し出す自分って格好いい……と思いながら演じていただろ!」と言われると、それに乗って「バレちゃいました?」とすぐ返してくれる。それってたぶん、優しいからだろうなと。私自身は人へのツッコミに慣れていなくて、うまくイジれなかったかもしれません(笑)。

女優として、恋愛への憧れ

Q:出来た映画を観た感想は?

とにかく映像がキレイだと思いました。あの時代の衣裳、坂口君のキャスケットなどが本当にオシャレです。画だけでも見応えがありました。それでいてファンタジーなのに、物語に感情移入しやすい。悪い人が出てこなくて、登場人物の誰もが優しい人ばかりで、応援したくなりました。観た後、とても温かい気持ちになる映画だと思いました。

Q:美雪と健司が選ぶ結末について、どのように感じましたか?

私自身は、美雪目線で台本を読んでいたのですんなり寄り添えたのですが、たしかに二人の恋には大きな足かせがあり、その上で選んだ結末ですから、本当にすごいことだと思いました。健司は映画監督を志している青年で、映画が大好きで、その世界に浸りきっているからこその選択なのかもしれません。それも含めて、この映画はファンタジーと言えると思います。

Q:美雪の場合はより特殊ですが、女優であることが自身の恋愛に影響を与えたことはありますか?

「見られるお仕事」であるがゆえに普段自由に動けない、あまりオープンになれないことでしょうか? 私だけかもしれませんが、どこかで周りの目を気にしてしまうところがあります。恋愛にかかわらず、そうかもしれません。いつでもキチンとしていないと、あまり汚い格好では歩けないな、とか。映画やドラマを観て、私もクリスマスツリーの前で待ち合わせがしてみたい! と思ったりして。あれ? 普通のカップルもツリーの前で待ち合わせをしたりしないんですか? 夢を見すぎちゃいました(笑)!

仕事も結婚も自然な流れで

Q:まさにアラサー世代のいま、女優という仕事を一生やるという気持ちが揺らぐことはありませんか?

同業者の女優さんの中には「おばあちゃんになるまでやる」という強い意志を持つ方もいます。でも私はたぶん、人生設計がキチンと出来ていないタイプで、流されるように生きています(笑)。そんな風にしか決められないのかもしれません。自然となるようになるのかなと。女優というお仕事は役をいただいて初めて出来るわけで、自分が「いつまでやる」と決められる仕事でもない。儚い仕事ですから。

Q:結婚についても、自然な流れを大切に?

結婚もそうですね。相手のタイミングもあるだろうし、女優という仕事だと、自分勝手に結婚できるわけではないだろうし……もちろん子供だって、いつかは産みたい。でもまずは結婚しないと(笑)!

Q:いろいろな考えに揺れながらも続けているのは、お芝居そのものに魅力を感じているからですか?

そうですね。もう少しがんばろう、がんばりたい……もうちょっとだけね、みたいな。

Q:そうやってずっと続けていくという可能性もありそうですが?

ありえます。綾瀬さん、結婚しなかったね! みたいなパターンもありますよね。でもそれは……う~ん、イヤだな。出来ればいつかは結婚したいです(笑)。

取材・文:浅見祥子 写真:高野広美