“恋愛映画の名手”とよばれる映画監督のひとり、行定勲の最新作『リバーズ・エッジ』が2月16日より公開されます。行定作品では初の漫画原作とあって、本作は公開前から注目を集めています。

行定作品の魅力は、どの作品も共通して女性が美しく撮られていること。悲劇的な物語であっても、その映像美に心奪われてしまう作家性が、多くの人を魅了しています。今回はそんな行定作品に登場した美女と、彼女たちを演じた女優の演技を紹介します。

長澤まさみの女優魂が光る…『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)

テレビCMで流れた「助けてください!」と叫ぶシーンがあまりにも有名な『世界の中心で、愛をさけぶ』。主人公の朔太郎が婚約を機に地元に帰り、十数年前に白血病に侵されて失った初恋の人・亜紀の思い出と向き合い、婚約者との一歩を踏み出すという物語です。朔太郎と亜紀の純愛は涙なくしては観られません。

朔太郎の初恋の人・亜紀を演じた長澤まさみは、当時まだ高校生。美人で運動神経も良く、明るいクラスのマドンナという彼女のイメージそのままの役柄です。しかし、病魔に負けてだんだんと弱っていくその姿は、女優・長澤まさみの演技力を世間に示し、その年の日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得しました。この役のために自らスキンへッドにしたという女優魂、誰もが青春時代に憧れたような透明感と観客を引き込んでいく表現力は、行定作品ならではの映像美によって一層魅力を増しています。

竹内結子の時代を超えた文学的な美…『春の雪』(2005年)

『春の雪』は三島由紀夫の小説を映画化した作品です。作中では明治から大正時代にかけての、華族の悲恋が描かれています。

高貴な家に生まれ育った松枝清顕と、その幼なじみで2歳年上の華族の令嬢・綾倉聡子は、いつしかお互いを恋しく思うようになります。しかし、清顕の幼さ故に心はすれ違い、聡子は皇族と婚約してしまうのです。聡子をあきらめきれない清顕は許されぬ恋へと踏み出し、彼を愛している聡子もそれを受け入れました。

竹内結子が演じる聡子は、文学の世界から抜け出してきたかのような優美さ! 大正ロマンを感じさせる華やかな雰囲気と、正反対の許されぬ恋の陰鬱な雰囲気。それが行定勲によって繊細な映像として引き立てられています。

竹内結子の演技は、序盤の小悪魔的なかわいらしさから一転して、許されぬ恋へと堕ちてゆく妖艶な姿、そして最後の覚悟を決めたシーンでの鬼気迫る表情と、次々と変化していき、つい引き込まれてしまいます。

いくつになって薬師丸ひろ子はかわいい!…『今度は愛妻家』(2010年)

あれこれと夫のために世話を焼く妻・さくらを、薬師丸ひろ子が演じた『今度は愛妻家』。くるくると動き回り、ちょっと天然でとぼけた感じが、とてもかわいらしい妻っぷりでした。

さくらの夫は過去の栄光をひきずり、今ではニート同然。彼女があれこれと世話を焼くのに、感謝することもなく、ついには浮気までする始末です。夫の愛情が微妙な中、さくらは子作りのために彼を旅行へ連れ出します。それでも、邪険な夫に彼女は離婚を切り出すのですが、そこからのどんでん返しが見物です。

小柄で丸顔の薬師丸ひろ子は、女優としてデビューしてからすでに30年以上経っていますが、今作では“かわいい”という言葉がぴったりとくる演技でした。登場人物を少なくして、それぞれの演技を際立たせる演出。そして、明と暗のコントラストが美しい映像の中で、薬師丸ひろ子の愛くるしさが光り、思わずキュンときてしまいます。

大物から若手まで、さまざまな年代の女優が登場……『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(2013年)

小泉今日子、野波麻帆、風吹ジュン、真木よう子、忽那汐里、大竹しのぶなど……。『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』ではさまざまな年代の女優が、それぞれに訳ありの女たちを演じています。

主人公は艶という女性との恋愛に溺れ、妻子を捨てて駆け落ちをした松生春二(阿部寛)。そんな艶と関係を持った男たちと、彼らを愛する女性たちの姿が描かれています。愛する男に別の女の影が見えたとき、心をかき乱される女たちの悲喜こもごもが、次々と展開していくのは圧巻です。

作中では男に振り回される悲しい女たちの、それぞれの物語が展開していきますが、誰ひとりとして印象が薄くならない演出は見物です! 中でも目を引くのは、1人の男性を奪い合い、取っ組み合いのケンカまで始める小泉今日子。1人の男性をまっすぐに愛してしまう姿……、みっともないようでも、どこかその強さに魅了されてしまうのは、人の心を巧みに映像化する行定作品ならではです。

有村架純の新境地を切り開いた……『ナラタージュ』(2017年)

『ナラタージュ』は嵐の松本潤が演じる高校教師と、有村架純が演じる生徒との切ない純愛物語です。

かつて“教師と生徒”という立場から、お互いの思いを必死に閉じ込めていた2人。やがて教え子だった泉が大学2年生になったとき、再会を果たすことになります。2人は愛情を募らせていきますが、どうしようもない現実がその関係を引き裂いていくのです。

清純派のイメージが強い有村架純が、狂おしいほどの恋愛に身を焦がすヒロインを熱演。松本潤との濃密なラブシーンも体当たりで演じています。彼女の純粋無垢なイメージが、まっすぐに1人の男性を愛するヒロインのイメージに重なることで、スクリーンからは必死の愛情が伝わってきて、胸がギュっと締めつけられます。恋愛映画の名手・行定勲ならではの心揺さぶる演出が、有村架純の新たな魅力を開花させました。

(C)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社

多彩な原作を美しい映像作品として世に送り出し続けている行定勲の最新作が、2月16日公開の『リバーズ・エッジ』です。1980年代後半~1990年代前半にかけて活躍し、今もカリスマ的人気を誇る漫画家・岡崎京子の作品が原作。その時代を象徴するアーティストである小沢健二が主題歌を手がけていることもあり、当時、青春時代を過ごした人を中心に話題となっています。

その内容は河原で発見した死体の秘密を共有することになった高校生たちが、それぞれの孤独や欲望、生きることへのぼんやりとした不安を抱えながらも生きていくという青春群像劇。二階堂ふみ、吉沢亮、森川葵、SUMIREら若手の俳優が、時に過激で鮮烈な演技を見せています。俳優たちが行定勲の演出によってどう輝くのかにも注目です!

(文/サワユカ@H14)