2016年、末次由紀のコミックを2部作で映画化し、大ヒットを記録した『ちはやふる -上の句-』『ちはやふる -下の句-』。あれから2年。いよいよ最終章『ちはやふる -結び-』が3月17日より公開される。高校3年生になったヒロイン・千早(広瀬すず)の最後の闘いが、フィナーレにふさわしい充実度で描かれている。本作で、ぜひとも心に留めておきたい登場人物がいる。それは、女優・松岡茉優が演じた史上最年少の無敵クイーン、若宮詩暢だ。

(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

磨きのかかった“嫌味”の清々しさ

『ちはやふる -下の句-』で初めて姿を現し、千早と同い年ながら、圧倒的な強さで千早の前に立ちはだかったクイーン、若宮。『ちはやふる -結び-』では、意外な役回りで映画のクライマックスを彩ることになる。 冒頭、相変わらずのクールさで、憎たらしいほど突き放した言葉を千早に対して吐く若宮。眼中にないと言わんばかりの態度は、松岡茉優の磨きのかかった芝居で鮮烈な印象を残す。 ひょんなことから、千早たちが出場する大会を中継する動画サイトのために、解説者を引き受けることになった若宮。彼女による解説は予想通り、辛辣極まりないコメントの数々。キレッキレの語彙力とユーモアで、次々に「爆弾」を投下していく様は、もはやヒールの枠を越えて、あっぱれと思わされるほど。 まるで歌うように嫌味を繰り広げる佇まいは、松岡茉優の“優雅”と言っても過言ではないセリフの言い回しによって、わたしたちに清々しさを与えることになる。だが、クイーン若宮の作品への貢献はそれだけでは終わらない。

(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

瞳の表情だけですべてを伝えきる

対戦が盛り上がるにつれ、毒舌は減っていき、終盤では、ただじっと見つめる表情が映し出される。 そのまなざしのありようが、なんと豊かなことか! そこには、競技かるたの奥義を知り尽くしているからこその驚きがあり、喜びがあり、情緒があり、感動がある。 みるみるうちに変幻していく若宮の瞳に魅入られていると、あることに気づかされる。これは、この映画を、このシリーズを観続けてきた観客の顔そのものではないか?  わたしたちは、若宮の視線を通して「見届けること」、そして「見送ること」の大切さを、現在進行形で学んでいく。 それにしても、言葉の節回しで演技の力量を披露しながら、一転「見る」ことだけで人間の多彩な感情も伝えてみせる松岡茉優は、いよいよ演じ手としての真髄を極めつつあると、ため息をつかずにはいられない。

昨年末、初主演作『勝手にふるえてろ』が公開されたばかりだが、“女優・松岡茉優”がこれからどんなキャリアを歩んでいくのか、楽しみでならない。『ちはやふる -結び-』は、そんな期待が膨らむ作品に仕上がっている。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)