2017年、ハリウッドではセクハラ暴露騒動が巻き起こり、ディズニーがフォックスを買収するという衝撃的なニュースが飛び込んできた。一方日本では2017年度多くの映画賞を受賞した『あゝ、荒野』が従来の映画興行とは異なる展開を試みた。そんな激動の一年を振り返り、気になるトピックスから“今”を読み取る。

変化する映画の形 ~『あゝ、荒野』の場合~

2017年度の多くの映画賞を受賞した『あゝ、荒野』。前後篇公開のムーブメントが一段落した2017年、近年のベストセラーが原作でもないうえに前後篇で5時間超えという長尺であることも目を引いた同作は、前篇公開日以前から動画配信サービスU-NEXTで劇場版より12分長いドラマ版を順次独占配信(全6話)。通常は公開日から半年後を目途に発売されるブルーレイ、DVDが後篇公開日から約10 日後に発売、レンタル開始。さらに配信中のドラマ版の一部を日本映画放送チャンネルが放映するなど、従来の映画興行とは異なる展開を試みた。

日本映画製作者連盟は規定で、動画配信と同時公開の作品を“劇場公開映画”と認めてお らず、製作委員会はこの『あゝ、荒野』特別編集の劇場版をODS作品の枠で劇場映画として興行するに至った。ODSとは、映画館で上映する非映画コンテンツのことで、代表的なジャンルとして「音楽」(ドキュメンタリーやライブ中継)、「演劇」(舞台中継や映像化)、「アニメ」がある。特にアニメは2〜3部作や複数話の連続上映を2〜3週間の期間限定でイベント的に行うことが多く、テレビ放送、配信、DVDも同時に展開した『機動戦士ガンダム』、『宇宙戦艦ヤマト』など成功例は多い。『あゝ、荒野』は今回、アニメのパターンに倣った形だ。
(「キネマ旬報」3月下旬号の“ワイド特集 映画界事件簿”より一部抜粋/文:編集部)

ハリウッドに吹き荒れるセクハラ・スキャンダル ~沈黙を破ったエンタテインメント業界の女性たち~

ニューヨーク・タイムズ紙がH・ワインスタインを告発

2017年10月5日、ニューヨーク・タイムズ紙が、『恋におちたシェイクスピア』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』など多くのヒット作や名作を製作してきた大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的不品行を報じる記事を掲載した。

ワインスタインを糾弾する女性たちの声は止むどころか、どんどん大きくなり、グウィネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリー、ケイト・ベッキンセール、エヴァ・グリーン、サルマ・ハエック、ユマ・サーマン、ローズ・マッゴーワン、アシュレイ・ジャッド、アナベラ・シオラなど80人以上の女優やモデル、ワインスタインの会社の社員などがワインスタインからレイプやセクハラの被害を受けたことを次々と証言。ワインスタインは自分の会社から解雇されると共に、アカデミー賞を認定する映画芸術科学協会や英国映画テレビ芸術アカデミーからは除名。現在、レイプ容疑でロサンゼルス市警察とロンドン警察の捜査の対象となっている。

ツイッターを介した運動「#MeToo」で世界的に発展

#MeToo は、もともと2006年に社会活動家のタラナ・バークが性的虐待を受けた有色人種の女性たちに共感を持つ姿勢で救済していきたいという願いを込めたソーシャル・ネットワークのためのフレーズだった。それを知った女優のアリッサ・ミラノが、ワインスタインのセクハラ・スキャンダルが露見した際、「セクハラを受けたり性的虐待を受けた経験を持つ女性すべてが『私もよ』と書けたら、この問題の重大さを示すことができるのではないか」とツイート。たちまち100万人以上の女性たちが#MeToo を拡散させ、運動は海外にも広がっていった。
(「キネマ旬報」3月下旬号の“ワイド特集 映画界事件簿”より一部抜粋/文:荻原順子)

ディズニー、フォックス買収へ ~正式合意を発表、懸念されるその影響は?~

ウォルト・ディズニーによる米メディア大手、21世紀フォックスの買収はまだ成立していない。2社の間で話がまとまったにすぎず、実現するのかどうかがわかるのはこれからだ。独占禁止法に触れないかどうかの判断が出るのは、早くても今年の末、もしかしたらあと1年かかるかもしれないという。それまで買収に向けて動くことはできず、現状のまま、別会社としてビジネスを続けていくことになる。

だがそれ以前に、フォックスならではの文化、映画の路線が、ディズニーに飲み込まれて消えてしまうのではないかと恐れる声も強い。今年のオスカーが、フォックス・サーチライトの『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』同士の闘いとなっただけに、なおさら無念な雰囲気が流れているのは、否定できない。

買収後もサーチライトは残す方針ということだが、テーマパークの乗り物やキャラクターグッズにつながらない部門に、ディズニーがどこまで力を入れてくれるのかは不明である。過去にディズニーはミラマックスを買収したものの、年を追うごとに力を入れなくなり、最終的に売ってしまったのは、誰もが知るところだ。
(「キネマ旬報」3月下旬号の“ワイド特集 映画界事件簿”より一部抜粋/文:猿渡由紀)

制作:キネマ旬報社