「プロゲーマー」という職業をご存知でしょうか。

プロゲーマーとは、その名の通り、人前でゲームする姿を見せることを生業とする人々のこと。日本では2010年に初めてプロ契約を交わすゲーマーが誕生したばかりのまだマイナーなものですが、加速し続けるゲーム人気の後押しもあり、熱い注目を集めているのです。

そんな彼らの実像に追ったドキュメンタリー映画『リビング ザ ゲーム』が、3月3日(土)より公開されます。ここでは、ゲーム好きはもちろん、ゲームに疎い筆者も胸を打たれた本作の魅力をご紹介します。

ゲーム・エイジが生み出した新しい職業「プロゲーマー」

(c) WOWOW/Tokyo Video Center/CNEX Studio

まずは、プロゲーマーについて改めて説明しましょう。そのはじまりは1990年代、カプコンから「ストリートファイターⅡ」が登場し、対戦型格闘ゲームが爆発的なブームを起こしたことにあります。日本が発信したゲーム・カルチャーはやがて世界中の若者を虜にし、2000年代には各地でゲーム大会が開かれるように。その流れの中で誕生したのが、プロゲーマーです。

プロゲーマーの主な仕事は、ゲーム関連会社をスポンサーにつけ、各国で開催されるゲーム大会を転戦して賞金を獲得すること。彼らが戦う姿は海を越えてネット中継され、賞金額が1,000万円を超える大会も出てくるなど、勢いはとどまることを知りません。

ついて回るのは社会のしがらみ。プロゲーマーが抱える苦悩とは

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『リビング ザ ゲーム』に登場するのは、世界でしのぎを削る一流プロゲーマーたちです。広告代理店に勤めるかたわらでゲーマーをしている者や、安定した生活を捨てゲーマー一本で生きることを決めた者、ゲームの腕で貧しさから這い上がった者など、国や背景はさまざま。ところが、観ているうちに彼らがみな同じ悩みを抱えていることに気づかされます。

それは、社会の目。プロゲーマーは気鋭の職業とはいえ、賞金が獲得できなければ暮らせなくなる不安定なものであり、どんなにゲームが強かったとしても一部の大人から歓迎されない現状もあります。結婚を予定しているゲーマーがふと見せる不安を宿した横顔や、広告会社との両立を選んだゲーマーの「親は子どもが何をしているか訊かれたとき、ゲーマーより広告会社に勤めていると答えたいものなんだ」という発言からは、画面の中での勝敗のようには割り切れない生身の人間の葛藤が見て取れます。

果たしてプロゲーマーは時代の寵児か、それとも社会のはみ出し者なのか。その問いに、観客も一緒に向き合うことになるのです。

日本を代表するプロゲーマーに見る「遊び」と「仕事」のボーダーライン

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そんな中、日本からは相反する2名のプロゲーマーが登場します。

1人は、2014年の世界大会を制した若きプロゲーマー、ももち。時に「地味」と評されることもある堅実なプレイスタイルで、着実に白星をあげてきた人物です。名だたる大会の覇者となり一躍スターダムにのし上がったももちですが、今度はそれを誰にも渡すまいと、焦りを打ち消すように練習に励みます。「プロゲーマーは勝ってこそ」と言い切り、勝利への強い執念を見せるももち。しかし、「ゲームは楽しむものなのでは?」と訊かれると一転、言葉に詰まってしまうのです。

また、ももちには女性ゲーマーのチョコブランカという恋人がいますが、2人にはプロゲーマーカップルであるがゆえの切実な悩みもあり……。女性ならきっと、健気なチョコブランカに肩入れせずにはいられないでしょう。

そしてもう1人は、日本で初めてプロ契約を交わしたゲーマーであり「The Beast(野獣)」の異名を持つ孤高のカリスマ、梅原大吾。若干17歳で世界一の座を手にし、その後も「伝説の一戦」と後に語り継がれるドラマチックな戦いを繰り広げるなど、一線で活躍し続けている絶対的な存在です。

大吾は、たとえ大会で思うような結果が残せなかったとしても飄々とした態度を崩すことはなく、高額な賞金を提示されても興味を示しません。そこには「(勝敗や賞金に揺らぐことなく)自分の価値観はこうなんだと示すプレイをしたい」と、一貫した強い信念があるから。そんな彼の奇想天外なプレイは、いつだって観る者を圧倒し、ゲームの世界に引き込んでしまいます。

「好き」を仕事にする道の険しさ

プロとは、強さとは、ゲームとは? 側から見ていると「好き」を仕事にできることはこの上ない幸せのように思えますが、彼らが選んだその道は、光と影に彩られた険しいものであることをありありと突きつけられます。

それでも一旦舞台に上がれば、頭をもたげる現実も葛藤も、すべてを背負って戦いに挑むプロゲーマーたち。彼らの姿は、緊張と熱量をもって私たちの胸に迫ります。巧妙な心理戦と一点を見つめる真剣なまなざし、そして“1/60秒”を見極めて繰り出される鋭いパンチは、不寛容な社会に、観客に、そしてプロゲーマー自らを奮い立たせるために放たれる一撃のように思えてならないのです。

『リビング ザ ゲーム』は、3月3日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー、ほか全国順次公開。

(鈴木春菜@YOSCA)