2月24日から公開となる『悪魔』は、日本を代表する文豪、谷崎潤一郎の原作を気鋭の監督が映画化する「谷崎潤一郎原案 / TANIZAKI TRIBUTE」のシリーズ第3弾。藤井道人監督が谷崎の同名小説を原案に、ひとりの女子高生に魅了された二人の男性の愛の果てを描いています。このヒロインを演じているのが、女優・大野いと。あまり“魔性”的なイメージのない彼女が、本作ではハッとするような魅力を放っています。

大野いとの新たなカラーになるかもしれない

女優やモデルとして活躍し、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年)をはじめ多数の作品に出演する大野いと。

しかし、彼女にはまだ、“◯◯役を多く演じている女優”のようなイメージは定着していません。まだ特定の色がついていない、“かわいく笑顔の明るい女の子”といった漠然とした印象が、彼女のパブリック・イメージではないでしょうか。

しかし、『悪魔』ではイメージ・チェンジとも言える、もしかしたら彼女の新たなカラーになるかもしれない役にトライし、新境地を見せつつあります。

それが“魔性の女”役。まだ22歳、制服姿でも違和感のないキュートな彼女が、男を虜にする女性役で新味を出しているのです。

実は、変化の兆しは2016年頃からあった

大野いとが変化の兆しを見せたのは、2016年公開の『雨にゆれる女』。ここで彼女は自分の素性を明かさない、ヒロインのわけあり女性を演じました。

このヒロインは、自身の美貌で男を虜にしていくというタイプではありません。多くを語らず、どこか哀しみを抱えている。そのどこか不幸をまとった佇まいが気になってしかたがない。最終的に青木崇高演じる主人公の中で、彼女は命をかけても守るべき存在となっていきます。

ふと気づけば心を鷲掴みにされている。「大野いとに、こんな影のある女性が似合うとは……」と、新鮮さも感じる演技でした。

(C)2018 Tanizaki Tribute製作委員会

『悪魔』では、小悪魔的な魔力で男たちを惑わす

大野いとは『悪魔』で、『雨にゆれる女』で見せた魔性を、より前面に押し出したヒロイン役に挑んでいます。

彼女が演じるのは、女子高生の照子。その照子と母が住む家に、上京した大学生の佐伯は下宿することになります。この家には親戚筋に当たる鈴木も同居しています。

鈴木は、照子に相手にされていないにも関わらず、結婚することを約束したと言い張るほど彼女にぞっこんです。一方の佐伯は、当初はまったく照子に興味を示さなかったのですが、なにかと理由をつけて部屋にやってきて思わせぶりな態度で接してくる彼女に心を乱されていきます。

ここで大野いとが漂わすのは、小悪魔的な魅力。正直なことを言うと、彼女が演じる照子は男性が身を滅ぼすような女性の危うさと妖しさがあるわけではありませんし、男の下心を刺激するフェロモンのように、セクシュアルな色気があふれているわけでもありません。

しかし、照子には、男心をくすぐる女性的なか弱さと、男が勝手に信じ込む女性の純真さ。穢れがなく、ついつい手を差しのべたくなる。そんな放っておけなさがあるのです。

それを的確に体現しているのは紛れもなく女優・大野いと。佐伯の部屋に足も露わな無防備な姿でふらりと現れたと思うと、異性を意識させる言葉を口にしたりと、つかめそうでつかめない素振りを見せます。

フェティシズムの世界で有名な谷崎文学の世界にも見事に溶け込み、確かな輝きを放っている大野いと。これは魔性のヒロイン役で大きく化けそうな予感がします。小悪魔ヒロイン役で意外なハマり具合をみせる大野いとに、本作でぜひ出会ってください。

(文/水上賢治@アドバンスワークス)